第20話 私の名前は〇〇

「わ~い! 楽しいね! 真理亜ちゃん!」

「そうだね! 〇〇ちゃん!」

 姉の真理亜と、その友達の〇〇は駆けっこをして楽しく遊んでいる。ちなみに二人は高校一年生の純粋な女子高生である。

(○○ちゃんか・・・・・・私の名前は何?)

 おバカな姉と遊べる謎の女の子は只者ではない。

(私は誰? 私は何? 私は好きで私になったんじゃない。)

 思春期の女の子は心に悩み事を抱えていた。

(自分の名前も分からないのに、登場させんな!!!!!!!!!!!!!!!)

 ○○ちゃんは、ストーリーの展開上、名前も決まっていないのに登場させられた。ご立腹なのも納得である。

「どうしたの? 大隣ちゃん。」

 その時、姉が女の子のことを「大隣」と呼んだ。

「大隣!?」

(それが自分の苗字なの!?)と女の子は戦慄を覚えた。

「お隣さんだから、大隣でいいじゃない。」

 難しいことが考えられない姉の発想は単純である。

「ど、どうして!? どうして私が名前で悩んでいることを知っているの!? はあっ!? まさか!? あなた!? 私の心を読んだの!?」

「うん。アハッ!」

 知らぬ間に魔法で記憶を改ざんされた姉ではあるが、負け時とサイキック・インスピレーションで女の子の心の中に無邪気に土足で踏み込んでいたのだった。

「私が、あなたの名前を決めてあげましょう。」

 自信満々に名付け親を買って出る姉。

「わ、私も名前が持てるの!? ○○ちゃんだった、私に名前が!? わ~い! ワクワク! ワクワク!」

 名無しの権瓶の女の子は自分に名前がもらえるとワクワクして喜んでいた。

「あなたの名前は・・・・・・大隣パンダです!」

 その場の張りつめた空気が一瞬だけ動きをやめた。

「パンダ!?」

 期待していた女の子の目が点になる。

「どうして私の名前がパンダなのよ!?」

 裏切られた女の子が訴える。

「可愛いから。アハッ!」

 何事もなかったかのように笑う姉。

「笑って誤魔化すなー!? 私の大切な名前だぞ!? 誰がパンダだ!?」

 お隣さんの女の子は荒れ狂う波のようだった。

「パンダちゃん、カワイイ。」

 その様子を見ていた妹はパンダを可愛く思った純粋な小学生だった。

 つづく。

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