第17話 タイキック少女

「おいしい! マルゲリータ・ピザ!」

 今夜のおかずはエビフライではなく、焼き立ての自家製のピザだった。姉の真理亜は家族で楽しく夕食を食べている。

「そうか! おかしいと思ったのよね。どうして平凡で貧乏な一般家庭に、煉瓦でできたピザ釜があるのか。もちろんこれもサイコキネシスで作ったのよね?」

「大正解! おかげでおいしいピザが食べれます! アハッ!」

 超能力が使えると日々の生活水準が向上します。

「やった! タイキック家族! 最高!」

「サイキック家族でしょ!? お姉ちゃん!? 少しズレてるよ!?」

「アハハッ!」

 お約束の展開。

「はあ・・・・・・私、自身がないな。超能力者ってバレないで暮らしていくの。」

 超能力者だとバレると魔女狩りされ、SNS動画に見世物として投稿されることを知った姉に不安が出来た。

「でも、お父さんもお母さんも、よく超能力者ってバレないで日々の生活を送れるわね?」

「だって、私は専業主婦。滅多に超能力を使うことがないからね。そうね、私が超能力を使う時って、スーパーで勝手に半額の値引きシールを貼るぐらいよ。」

「お母さん!? それ犯罪よ!?」

「大丈夫よ。私がやったっていう証拠はないんだから。サイコキネシスだから指紋もつかないからね。アハッ!」

 この娘に、この母である。似た者親子であった。

「じゃあ、お父さんは?」

「私? 私の職業は世界的有名なマジシャンにしておこう。そうすれば超能力を普段から使っても、不思議はないからね。」

 こうして父はマジシャン。母は専業主婦に決まった。

「何よ!? その後付けな設定は!?」

「そうすると真理亜は世界的なマジシャンの娘になる。普段から超能力を使っても「お父さんに教えてもらったマジックです!」と言えるから、魔女狩りにあわないぞ。」

「乗ります! その設定!」

 変わり身の早い姉である。

「世界的マジシャンを父に持つ、世界最強のタイキック少女! それが私よ!」

「サイキック少女よ!? お姉ちゃん!? 少しズレてるよ!?」

「アハッ!」

 友達やライバル、敵を作る前に家族や本人の設定がやっとできつつある。

 つづく。

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