前日。

綺麗な夕焼けが見える。今の時間、体育館にこの夕日が差し込むんだ。そして床を綺麗にオレンジ色に染めるんだよな。今日の夕日は俺だけの影を伸ばしてくれている。

懐かしいよ。本当に懐かしい。



次の日の朝、部活は午後からだから午前中にヨッシーと話すことにした。

食パンと牛乳を一気に口に詰め込み、俺は玄関に向かった。

スニーカーを履き、玄関の扉を押しあけると、ヨッシーが待ち伏せていた。

いやに真面目な顔をしている。ビビりながらも、

「おはよう、はやいな。結構待たせた?」

と言うと、

いつもの人懐こく、優しそうな笑顔で

「おはよう」

とだけ返された。


俺たちはその後、ずっと無言だ。アパートの目の前の公園にあるベンチまで二人で歩いた。

なんて言うべきだろう。どう切り出そう。俺から今日話そうと言ったんだから俺から何か言わないと。

「リョウ、話ってなんだ?」

はっとしてヨッシーの方を俺は見た。

.....ありがとう、ヨッシー。大丈夫だから。そんな心配そうな顔しないでくれ。不安そうな顔もしなくていいよ。

「ヨッシー、お前さ。」

覚悟はもう出来てる。

「この前の夏祭りのとき、すごい緊張してただろ?また変なこと考えてんのかと思ってさ、相談にのってやろうと思ったんだよ。明日だろ?告るの。いつ?どうやって言うんだ。」

はは.....。

なぁヨッシーお前、ほんと嘘つけないよな。さっきまでの不安そうな顔どこ行ったんだよ、嬉しそうに笑ってさ。

「そうだったのか、リョウ。ありがとな。俺、お前も松本さんのこと好きって言うんじゃないかとか、反対されるかと思って、すごい不安だったんだよ。」

知ってるよ。お前の顔見れば、不安なことも、喜んでることも、すぐ分かる。

「あのな、リョウ。俺は明日の部活終わりに直接伝えるよ。どうかな?」

「直接か、凄いな。いいんじゃね?かっこいいよ。」

「だろ!やっぱこういうのは直接言いたいと思ってさ!やっぱリョウなら理解してくれると思ったんだよ!!」

「まあな、親友だから、俺ら。」

「だな!サンキュー親友!部活行こうぜ、準備しよう!」

リョウは走って家に荷物を取りに行った。俺はあいつの3歩後ろを走って荷物を取りに行った。

部活までの道中、ヨッシーはまだ付き合ってもないのにずっと俺に言ってきた。


遊園地デートとか楽しそうじゃね?

土日はご飯食べに行ったりしたいな!


嬉しそうだ。

俺は、一言、聞こえてるか知らないけど

「気がはやいよ。」

とだけ言った。

一言だけ、言えたんだ。




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