引き際。
高校生2人組は同じ部活だろうか、2人ともが東高校と刺繍されたカバンを背負っていた。彼らはいつから仲が良くなったのだろう。
彼らはいつお互いを知ったのだろう。
家に帰ってから、風呂に入った。
一人自分の部屋にこもって電気もつけずに、ベッドの上に飛び込むように、横になり深呼吸すると、リビングからは家族の楽しそうな声がかすかに聞こえてくる。
俺は仰向けになって天井をにらみながら考え込んでいた。
俺は松本さんが好きだ。
ヨッシーも大切な親友だ。争いたくない。
俺が松本さんと付き合う?
ヨッシーはどうなる?
どちらかをとるなんて俺には出来ない。
いっそヨッシーと松本さんが付き合えば...。
「くそっ...」
わけも分からず、目が潤んでくる、視界が滲む。
ピロンッ
通知音がしてぼやける視界の中、携帯の画面を見た。ヨッシーからだった。今一番関わりたくない相手だったが、返信せずにはいられなかった。無視なんて出来なかった。
明後日、告白するよ。
その1行は、送られてきた少しの言葉は、
俺の心を断ち切るには充分すぎるほどの鋭利さを持っていた。
涙が溢れてきた。
話してるだけで満足する自分に、
仲のいい友達の場所で安心してる愚かさに、
俺もなんだよ、と言えない意気地無しに、
ライバルが現れただけで身を引く臆病者に、
嫌気がさした。
俺は泣きながら返信した。
明日少し話そうぜ。
目を閉じ、眠る前に俺は一つだけ決心をした。
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