別れ道。
大学の授業を終えての帰り道。男子高校生2人組が楽しそうに自転車を漕いで帰っていくのが目に入った。
何気ないいつもの風景に過ぎない。だけど俺はなぜか懐かしい気持ちに襲われた。
松本さんに言われたように、吉野さんとヨッシーをどうにか2人にしようと俺は動くけど、どうにも上手くいかなかった。
二人きりにしようとすると、必ずヨッシーがみんなで動こうと言い出してしまう。
そうこうしてるうちに、花火も終わり、祭りも終わってしまった。
帰り道に
「ごめん。上手くできなくて...。」
と松本さんに謝ると、
「大丈夫だよ!すごく楽しかったからきっといい思い出になったよ!じゃあまた二学期に会おうね。」
「うん。じゃあまた。」
と言って、松本さんと吉野さんとは別れた。
帰り道はヨッシーと二人で歩いて帰っていた。
「やっぱ田舎だなぁ。蛙の声がすごいや。」
と俺が話しかけると、
「うん。」
とだけ返ってきた。
「あー、今日楽しかったよな。ヨッシーめちゃくちゃみんなで移動したがってたな。緊張でもしてたのか?」
「うん。」
「うんって、そんな緊張することないだろ。
吉野さん、すごくいい人そうだったし、楽しそうだったじゃん。」
「うん。」
「連絡先とか交換したの?せっかくだから仲良くしとけよ?」
「うん。」
「…なぁさっきから、うんしか言ってないけど、どうかしたのかよ。何かあったのか。」
「あのさ、」
「なに。」
「俺今日すごい緊張してたんだよ。」
「は?…なんで?」
「俺、松本さんのこと、好きなんだよ。」
頭が真っ白になった。心臓を掴まれた気がした。
夏なのに寒気がする。
「あ、あぁ。いきなりなんだよ、それで?」
「リョウ、お前だから言うんだぜ?俺松本さんに告白しようと思うんだ。」
待ってくれ。ヨッシー、俺もなんだ。俺もなんだよ。俺も松本さんのことが好きなんだ。
どうしよう、なんて言うべきなんだ。
「リョウ?聞いてるか?」
「…聞いてるよ。すこし、びっくりしただけだよ。そっか、松本さんのこと好きなんだ、」
深呼吸して、一拍おいてから俺は言った。
「いいんじゃね?おれ、応援するよ。」
夜で良かった。街灯のない田舎でよかった。
蛙の声がしていてよかった。
作り笑いの汚い笑顔も、震える声も、全部、全部、隠してくれる。
きっと、
気づかれない。
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