第二章
第18話
毎日のHRでは、芽内の容体には一切触れない。まるで、クラスから芽内という人物が居なかったようだ、と金沢は思う。
だが、確かに芽内は存在していた。芽内の席だけでなく、羽黒の席も空席なのがその証拠だ。
あの日から羽黒の姿を見た人はいない。クラスから一人や二人居なくなっても毎日は変わらない。役者が減っても、学校生活という劇は続く。
自席に座っていると、学校は小さな社会の縮図だと感じる。
絶対に必要な人などいない。いなければいないで回っていくのだ。
教室には、悪意や善意、好意に嫌悪、無関心、関心で溢れていて手探りで毎日をやり過ごさなければならない。
教室に入り席についた途端に駆け引きを含んだゲームが開始する。自分の手の内を見せても良し、ハッタリをかますも良し。
そう、誰もが孤独なファイターだ。向かってくる相手がどんな手を繰り出してくるかわかったもんじゃないのだから。
だが、と金沢は一旦思考を切り替える。
芽内は違う。
ここ数日、虐めの止んだ日々で考えていたことがある。
そして、彼女から感じた違和感の正体がわかりかけていた。
おそらく、俺の予想が正しければ…
そこまで考え、今日の帰りに芽内のマンションへ訪ねよう、そう決意していた。
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