第13話

「おはよう、金沢くん。付き合って」

「…おはよう、芽内。付き合わない。というか、朝から何それ?」

金沢が呆れ気味に言うと、芽内は悪びれもせず、にこにこと

「いや、不意打ちならオッケーするかなと思って、挨拶にねじ込んでみた」

「…そんな、ドッキリじゃないんだから」

「そっかぁ、違ったのか。つまり、金沢くんはドッキリみたいな告白よりロマンチックな告白がいいって事ね」

「いや、違う。俺が言いたいのは告白方法じゃなくて…」

と、そこまで話して脱力感に襲われた金沢は、「もういいよ」と投げやりに言った。そして、そのまま話す気も起きず黙っていた。

芽内はそんな金沢を見て、何かまだ言いたそうだった。

珍しく笑顔を引っ込め、ともすると生真面目に見える眼差しで金沢を見つめている。こんな表情を芽内がするのは、たいそう珍しかった。

その視線に気後れしつつ、気づかないフリをしたまま教室に向かい、入る。

すると、入った途端、シーンとなる。久しぶりに感じるクラスメートからのピリピリした雰囲気に首を傾げつつ、次のアクションが起きるのを待った。

おそらくまだ、役者が揃わないのだろう。


あと、1人。


ヒロイン、芽内が教室の入り口登場した途端、幕が上がる様子が見えた気がした。

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