第12話

「朝から悪い顔してるね」

横から、羽黒に馴れ馴れしく話しかけてくる女がいる。

いつもなら無視するが、さっき思いついた計画に気分が良かった羽黒は

「おはよう、柳」

と素っ気なく返す。

いつも無視されたり、邪険にされている事に慣れている柳梨香はびっくりしたようだったが、嬉しそうに話を続ける。

「今度は何思いついたの?教えてよー」

そう媚びるように言われ、羽黒は相変わらず好きになれないな、と思う。


芽内がくる3ヶ月前。

柳に告白された。柳は頭も見た目もたいして良くないが、交友関係における抜群のバランス感覚で目立つ先輩にも可愛がられていた。

そうなると、一軍だ。

自身も目立っている事をきちんと自覚していた。つまり自分のポジションを適切に理解しているといってもいい。

だからか、羽黒たちにも物怖じせず話しかけてくる。羽黒たちがやっている虐めにも否定的だったことなどない。

告白されるまでは羽黒も邪険にせず、話を振られたから返していたのだが、それをどう勘違いしたのか、柳は羽黒が好きだと言う。


羽黒からすると、柳など恋愛の対象外だった。陽気な女、としては認めているがそれ以外の感情を持ったことなどない。


俺には柳レベルは、相応しくないという自負もある。

芽内なら付き合ってやってもいいのに、と考える。

虐めに根を上げて、泣くような可愛げが有ればもっと良かったのに。


横にいる柳を見て、芽内に遠く及ばない見た目にうんざりする。

が、今は貴重な羽黒に協力的なクラスメートだ。

気を取り直して話を続ける。

「計画聞きたいか?」

「聞きたーい」

「柳にも手伝って欲しいんだけど」

「あたしに?できることなら全然いいよー」

そう羽黒に言うと、秘密を打ち明けられるのが堪らないのだろう。

頬を赤くして、羽黒を見てくる。

そんな柳を見て、内心、全然可愛くねーな、と思いつつも口を開く。

「今日の放課後に…」

と教室に着くまで、羽黒が考えた計画を話していた。

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