第11話

苛々する。

ここ最近ずっと、気分が悪い。芽内への虐めが思うようにいかないのが原因だと考えなくてもわかっていた。


あの女。

華奢な見た目とは裏腹に強かな奴だ。虐めても虐めても、びくともせずに登校して過ごしている。

何をやっても芽内を痛めつけられず、むしろ羽黒たちが行うあの手この手の嫌がらせを観察している節すらあった。


しかも今までと決定的に違うのは、クラスメートのやつらが羽黒たちのノリについてこない事だ。

進学校へ行くような奴らは、男女関係なく芽内に勉強方法やらテストの点数を聞きに行っているし、運動部の奴らからも「そろそろ飽きたわ、てかあいつ良いやつじゃん」と言われる始末。

今までなら羽黒が虐めている奴には、関わらないようにしたり、一緒にからかったり、無視していたくせに。


思い通りに動かないクラスメートへの苛立ちも相まって、羽黒はますます心が荒れていくのがわかった。


学校とは不思議なところだと思う。

空気を読む、これをいかに上手にやるかで自身のポジションが左右される。

自分自身が持っている見た目、性格、運動神経、交友関係、学力。

これらを持って適切なポジションにいなければならない。その位置や輪から外れようものなら、一気に変人扱いされ、学校生活は居心地悪いものとなる。

それはそうだ。

学校側もペアを組ませたり、グループ活動させたり、部活をさせたりと協調性を求めてくるものだから。


虐めだって同じだ。

虐める奴、虐めに加担する奴、見て見ぬ振りをする奴、影で助ける奴、虐められる奴。


空気を読み、自分に合った役割をそれぞれ演じるのだ、と虐める奴である羽黒は思っていた。


だから、クラスメートが羽黒たちを空気を読み違えて、まだ虐めをしている残念な奴、という目で見てくるのが耐えられなかった。


くそ!

どうしたら、クラスの雰囲気を芽内から羽黒側に持ってこれるんだ、と考える。

このまま、みっともない姿を晒すなんて俺らしくない。

強者は圧倒的だから、強者なのだ。クラスメートにそれをもう一度印象付けなければ。

金沢を虐めていた時は、皆、同じノリだったのに。

そう考え、そうか、とニヤリと笑う。


そうだ、芽内がダメなら金沢をまた虐めればいいんだ。

何故かは知らないが、金沢と芽内は登下校を一緒にしているようだし。(ただ、羽黒も見かけた事があるが彼氏彼女という甘ったるい雰囲気は皆無だったが)


芽内は自身が虐められる事に興味は無くとも、金沢の虐めには反応を示すのではないか、という確信に満ちた予感があった。

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