第10話
寝れない。
ベットの中で金沢は、悶々と考えていた。
芽内への虐めは悪化していた。
先日など、窓から飛び降りろ、と羽黒たちに煽られていた。自殺教唆だ!と金沢は、悲鳴をあげたかった。
幸運なことに、忘れ物をした担任の増田が休み時間にもかかわらず教室に来たので、羽黒たちは大人しくなり、事なきを得た。
金沢がこんなにも頭を抱えてしまうのは、芽内から得体の知れない怖さを感じるからだ。
飛び降りろ、と言われた時も怒るでも悲しむでもなく、羽黒たちを興味深そうに見ていた。
その様子から、芽内なら言われた通りポン、と飛び降りるのではないかと恐怖を覚えたのだ。
そう、芽内は不思議な女の子だ。
発する言葉は、嘘ばかり。いつも笑顔で過ごしているせいで、逆に感情が一切読めない。
そのくせ、見た目は抜群で羽黒たちのターゲットになっているにもかかわらず、芽内に告白した男が1人じゃなく、何人もいるらしい、とまことしやかに噂されていた。
実際、彼女は目を引く女の子だった。どんなに羽黒たちに貶められようと気にせず過ごす様子からは、得体の知れない不気味さは形を潜め、美しさすら感じられる。
挙げ句に、芽内は勉強でも運動でも隙が無かった。
最初こそ、授業中、芽内が発言する度に小馬鹿にしていた羽黒たちだったが、中間、期末テストと全教科満点を取ってからはその口をピタリを閉ざした。
各教科の先生たちが芽内を褒め、彼女を中心に授業を進行するものだから羽黒たちに発言する隙などあるはずもなかった。
体育に関しても、仲間外れにされている様子を見てほくそ笑んでいた羽黒たちだったが、ひょんな事から芽内が走ってよし、球技よし、ダンスよし、という運動神経を目の当たりにしてからは思うように仲間外れもうまく行っていなかった。
抜群の運動神経を見た体育会系の部活に所属している子たちが、芽内とプレーしたがったのだ。
そう、芽内への虐めは悪化していたがそれは半分以上クラスメートが羽黒たちの思い通りに動かないからだろう。
芽内はその見た目だけでなく、勉強、運動において無視できない存在感になることで、クラスに蔓延る虐めの陰惨とした雰囲気を吹き飛ばそうとしていた。
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