第1話
今日も朝が来た。枕元の時計を見ると、7時。最近は朝からだるく、起きる時間も遅くなってきていた。
のろのろと行く準備のため一階の居間に行くと、母親が朝食をテーブルに並べている。もそもそとパンを食べながら、台所で忙しなく動く母親を見ながらぼんやり考えていた。
お母さんは、俺が羽黒たちに虐められている、と知ったら何て言うのだろう。
悲しむのだろうか、それとも情けない息子だと思うのだろうか。
いや、羽黒たちに虐めをやめさせる為、学校に乗り込んでくるかもしれない。
どのパターンを想像しても羽黒たちの虐めが止むとは思えず、ますます鬱々とした気分になる。
「のんびりしていていいの?」と母親が心配そうに聞いてくる。もう7時半を過ぎている。
その優しい声を聞いただけで、全部学校での虐めを叫びたくなった。
「お母さん!俺は虐められているんだ。もう学校に行きたくないんだ」
もちろん、言えるはずもなく鞄を背負って行こうと居間から出ようとした時だった。
ピンポーン
と玄関のインターホンがなる。
母親が「こんな朝から誰かしら」と訝しげに外へ出ると、何だか楽しげに鞄を背負った俺の元へ来た。
「お迎え来てるわよーあんたもやるわね」
とニコニコと言われる。
意味がわからず、玄関のドアを開けるとそこには1人の女の子が立っていた。
「おはよう、金沢くん。一緒に行く約束してたの忘れてた?急がないと遅刻しちゃうよ」
と屈託なく言う目の前の女の子に唖然とする。
誰なんだ、と言いかけた金沢を引っ張ったかと思うと
「さあ、走っていくよ!」と軽快に声をかけ、そのまま学校まで走り抜けた。
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