第8話勇者

リオンが壁にめり込ませた魔族達に回復魔法をかけて行くと…


「あなた…勇者なんですよね」


リュウが伺いながら聞いてくる


「うん、そうみたい。でも誰にも言ってないしなる気もないけど…そんな事したらりお…じゃなくてミキィを倒さなくちゃならなくなる…あれ?それもいいかな?」


リオンがミキィをじっと見つめると…


「な、何言ってるの!そんな事よりみき…じゃなくてリオンは大丈夫なの?人間達を裏切って?」


ミキィが心配そうにリオンを見ると…


「平気、あいつら本当に屑なんだよ…ほっとけばそのうち自分達で滅ぶと思うよ」


リオンがあっけらかんと答えると


「じゃ、もう戻らないの?」


ミキィが心配そうに上目遣いに聞いてくる…


「もちろん…もうミキィから離れる気は無いよ…やっと会えたんだから…」


ギュッとミキィの手を掴むと…ミキィが嬉しそうに頬を染めた。


「ミキィ様が幸せなら…それに魔族は実力主義…リオンさんに負けた我等は何も言えません…」


少し寂しそうに微笑んでリュウさんが答えると…


「ミキィが今まで楽しく過ごせていたのはあなた達のおかげだ…新参者だがよろしく頼む」


リオンはリュウを初め魔族達に頭を下げた。


「それで?このゴミはどうしますか?」


リュウが討伐隊の男達を指さすと…


「こいつらまとめて国に返そう…辛うじて何人かは生きてはいるだろ?」


リオンが足でつつくと…


「うっ…」


男の指がピクっと動いた…


「でもこの傷では、生活も困難になるでしょうね…」


「こいつら最悪だからちょうどいいよ…あ、あと…」


リオンが男達に何か魔法をかけると…


「よしOK!こいつらそっと城の外に帰して置いてくれる?」


魔族達が頷くと…荷物のように掴んで飛び立って行った…


「これで、ゆっくりミキィと話ができるね…」


リオンがミキィに笑いかけると…


「リオン…なんか変わったね…前はそんなに積極的じゃなかった…」


ミキィが恥ずかしそうにリオンを睨むと


「りおが死んで…自分の思いを伝えられなくて本当に後悔したんだ…約束通り会えたら自分の気持ちを素直に全て伝えようって思ってた…」


リオンはミキィの指を絡めとる…


「それとも…ミキィはこんな俺はやだ?」


リオンが首を傾げると…


「そ、そんなこと無いよ…リオンはリオンだし…」


ミキィがぷいっと横を向くと…優しく前を向かせる


「ありがとう…ミキィならそう言ってくれると思った…」


リオンがミキィの可愛らし唇を見つめ近づこうとすると…


「おっほん!」


リュウさんが咳払いをする。


ミキィが慌てて離れると


「リオンさん…」


リュウがリオンを軽く睨む。


「お二人共…場所を考えて下さい。全く…」


リュウさんがブツブツと文句を言うのを二人は顔を見合わせ笑いあった…。





魔族達が討伐隊を門に置いて飛び立つと…


「行ったか?」


隠れていた門番がいなくなった魔族を確認すると…外にでる。


門に倒れ込むボロボロの討伐隊を確認すると…


「大変だ!」


城の中へと急いで知らせに走った!


討伐隊を城に運び入れ治療を施すと…


「ちょっと!リオン様はどうしたの?」


王女が比較的傷が浅い男に詰め寄ると


「王女様、まだ喋れる状態では…」


回復師が止めようとすると…


「なら早く回復させて頂戴!」


「い、いえ…他の者達も回復させないといけませんから…少しずつしか回復させられないのです…」


苦しんでる他の討伐隊の男を見せると…


「そいつらはもう駄目よ!比較的助かる人に絞ればいいわ!ねぇお父様?」


王女の発言に男達が震える…


もしかしたら治療もして貰えなくなるのだ…


「そうだな…確かに貴重な回復魔力をもう戦えない者に使ってもな…」


王の言葉に愕然としていると…


「わ、私は…たたか…う…」


息も絶え絶え1人の男が答えると


皆が一応に俺も…俺も…と悶えだした…


「うっざ…この死に損ない共が…」


王女が男達を睨みつけると…ニヤッと笑う。


「そうだわお父様!私がこの人達を介抱しますわ!それで悲しいけど役に立たない人達は処分します」


出てもいない涙を拭うと


「そうか…ではお前に任せる」


王の言葉に男達は絶望した…。


皆が居なくなると…


「この使えない屑共が、誰かリオン様の事を教えなさい!そいつだけは助けてあげるわ!」


「…あ、あいつは…うら…ぎ…」


「何?何言ってるのか分からないわ!」


ガンッ!と男の腹を棒で叩く、叩く…何度も叩くと


「…」


男は動かなくなった…


「えっ?これでおしまい?ちょっと!もう少し耐えてよ!」


王女は信じられないとやわな男達に呆れてガックリと肩を落とした。

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