第2話魔王
長いような短いよな眠りから目覚め、目を開くと…そこには見た事もない化け物達がひしめき合って覗き込んでいた…
恐怖のあまり固まっていると…
「こら!お前達の顔が怖いから強ばってるじゃないか!」
覗き込む化け物達を叩く綺麗な人が優しい顔で微笑む…
(うわぁ…美人さん…)
思わずうっとりすると…
「ミキィおいで…」
綺麗な人が自分を抱き上げる
えっ!思わず声を上げると…
「あぶぅ~」
はっ?声が出ない!
「あぶあぶあぶ…」
なんだよ!あぶしか言えないじゃん!
「ふふ…ミキィはおしゃべりだなぁ~あー可愛い!食べちゃいたいくらいだ」
そう言うと目の前の美人さんが頬にキスをおとす!
ミキィはヒィ!と心の中で叫ぶと気を失った。
どうやら私はミキィと言う魔族の王の子に転生したらしい…
人じゃなくて魔族なんて…
でも魔族といってもパパは美人でかっこいいし…部下のみんなもとっても優しい…私を大切に扱ってくれる。
今ではこれも良かったと思えるようになっていた…ただ一つ心残りは…あの約束だけ…
そんな日々を過ごして行くうちにパパが引退をすることになってしまった…
バーン!
パパの部屋をノックも無しに開けると…
「ミキィ~!」
甘ったるい声が帰ってくる。こんな事をしても許されるのはこの城で私とママくらいなものだろう。
「パパ!魔王辞めるって本当なの!?」
ミキィが詰め寄ると…
「怒ってもミキィは可愛いなぁ~」
話が進みやしない!
「ママ!どういう事?」
のんびりと椅子に座っているママに矛先を変えると
「ミキィちゃん落ちついて~」
のんびりとした返答が返ってくる…
「何かね~パパもう疲れちゃったみたい、ママとゆっくり旅行に行きたいんだって~」
「りょ、旅行?」
「うん!私も楽しみなんだぁ~ミキィちゃんのお土産沢山買ってくるからねぇ~」
「わぁ~楽しみぃ!ってなんで?急に!」
「ミキィももう大きくなったし…今は人間達の間に勇者は生まれていないようだしね…だからしばらくはミキィでも大丈夫だろ」
パパがニコッと笑う。
クソ…笑うとさらにかっこいい…って違う!
「私が引き継げるの…」
不安そうにパパ達を見ると…
「大丈夫!私達のミキィならなんて事ないよ、ミキィは可愛い上に賢いからね」
「賢くなんてないよ…」
「何言ってるんだい…生まれて一年も経たずに喋ったのは誰だい?画期的な発明や発言は?ミキィを賢くないなんて言う奴がいるなら私がこんな世界は滅ぼしてあげるよ」
「そ、それは…」
前の知識があったから…ありのままの姿で世話をされる事に耐えられなくて…つい喋っちゃったから…
「大丈夫…ミキィならやれるよ。それに周りのみんなが助けてくれるしね」
そう言って後ろを見ると…パパに仕える魔族達が並んでいた…
「ミキィ様…これからは我らが貴方様を支えます」
「なんでも仰って下さい…」
「ミキィちゃんの為ならたとえ火の中水の中」
魔族達が嬉しそうにこうべを垂れた。
こうして…ミキィは魔王になってしまった…
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