勇者と魔王

三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5

第1話みきとりお

「りお…」


みきはベッドに横たわる青白い顔をしたりおを見つめて呟く…


りおとの出会いは小学生になってから…隣の席になった事で話しかけるようになり、意気投合。


性別は違えどなんでも話せる間柄となっていった…


大学受験を間近に控え…放課後席を合わせて勉強会をする日々…冗談を言い合いながら…お互いちょっかいをかけながら…


そんな日々を思い出す…しかし今目の前にいるりおはその時の元気な姿では無かった…


突然の病…りおは学校に来なくなった…


お見舞いに行くと


すぐ治るよ…


そう言って笑う。


その言葉を信じて待ったが…とうとう、りおが学校に戻ってくる事は無かった…。


「りお…」


もう一度りおを呼ぶと…声に気がついたのか、うっすらと目が開く…


「みき…こんなとこ来てる場合じゃないよ…勉強しな…」


口の端をクイッと上げて笑おうとするが…その表情が痛々しい…


「りおが大変な時に勉強なんて…」


みきが下を向く。


「頑張って…大学行ってよ…後で追いかけるから…」


りおはそれだけ言うと…眠りについた…


その様子をみて…


「なんでりおなんだよ…」


みきは立ち上がるとそっと部屋を出ていった…


こんな時にと思うが時は待ってくれない…勉強もしないと行けないことが腹立たしい…


みきはヤッケになりながら勉強に明け暮れた…


りおを尋ねて数日後…母親が部屋をノックすると


「さっき病院の四谷さんから電話が…」


「りおん家から?」


母親が頷く、その顔は決していい知らせでは無いことを物語っていた…


みきは家を飛び出すと病院に走る!


家を飛び出す時に母親が何か叫んだが聞こえない!みきは力の限り病院に向かって走った。


病院に着くと、りおの病室の前にりおの母親と父親が抱き合い泣いていた…父親が泣き崩れる母親を連れて部屋を離れると…


遅かった?


みきは呆然と部屋に近づく…部屋をノックして扉を開けると…


「りお…」


りおの側には看護婦さんが付き添っていた…


「ああ…いつも来てる子ね…本当は家族だけだけど…あなたは大丈夫かな…」


看護婦さんが席を外してくれると…りおの顔を覗き込む…


「少し前に気を失ってしまって…もう…」


看護婦さんが家族を呼んでくるからと部屋を出ると…


もう?もう何?もう二度とりおと喋れないの?まだ何も気持ちを伝えていないのに?


「りお…」


りおの手を握る。


その手は前と同じように温かかった…思わず握りしめると…


「痛いよ…みき…」


りおが目を開けた!


「りお…りお…伝えたい事がある…」


りおはクイッと口の端を上げるように笑うと…


「ごめん…今は聞け…ない…それは…あっちで…言って…」


りおはそれだけ言うと…りおの手が力を失う。


ビービービーと不快な機械音が響く…


そこからはよく覚えていない気がつくと母親が迎えに来ていて何かを言われているようだったが…


家に帰ると部屋に籠った。


「あっちで言って?何それ…あっちって何?」


声を出すと一気に溜め込んでいたものがこぼれ落ちた…


みきは次の日目が開かなくなるほど…涙を流した…





「…て事があったんだ…だからこのまま天国なりに行けばりおに会えると思ったんだけど…」


みきが目の前の人物に話しかける。


「…話はわかりましたが…すみませんこれは決定事項です。あなたは転生する事が決まっています」


「だから!お断りします!って言ってますよね?」


目の前の人物が現れてからこのやり取りを何度した事か…


「もう…なんでこんな面倒な人選んだのかしら…」


みきの目の前の女性がブツブツと文句を言う。


「あーもう面倒だからさっさと転生させちゃおう!本当は色々と説明とあるけど省きます!後で説明に伺いますので、では良い転生を!」


「ちょっと!」


みきは納得いかない!と文句を言うとするが…目の前が眩しく光ると…思わず目を閉じてしまった。

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