三章 辰の年辰の日辰の刻(4)
若様たちが天守閣に登っていた、ちょうどその頃。
素羽鷹沼の東の岸の街道を北へ急ぐ山伏の姿がありました。肩にかついだ
「へっへっへ。もうけた。もうけた」
独りごちして笑うと首からさげた
「おっと、いけねえ」
人目をはばかってうつむきますが、つい、ひげづらがにやけてきて、やがてまた含み笑いをもらすのです。
「だめだ、だめだ」
山伏は手のひらで自分の頬をはたきました。それからは足元をにらみつけて歩いていたので、お天道様が三つになったことに気がつきませんでした。
しばらくゆくと、街道は大人の背より高いススキの枯れ野に包まれます。素羽鷹沼は左手に広がっているはずでしたが、銀色の穂波に阻まれて見通せません。ここまで来ると、街道を行き交っていた旅人の姿が途絶えました。
「よし。いまのうちだ」
足を止めた山伏は用心深く辺りに目を配ると、背負ってきた
「すげえ宝だ」
すっかり心を奪われた山伏は、枯れ野の向こうに光の柱が立ち昇ったことにも気がつきませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます