第4話 再会

 翌日。

 ベルグリーズ王国の王都ベルグレイアに、以下の記事が広まった。


「号外 御子みこ様、『おれの妻達の恋愛には不干渉を徹底する。恋心を縛る意思は微塵も無い』と発言」


 それは瞬く間に、ベルグリーズ王国全土へと広まっていく。

 その様子を、満足そうに眺める陰があった。


「フヒヒッ。御子みこ様、命令は果たしましたよ」


     *


 その頃。

 シュランメルトは自らの搭乗する魔導騎士ベルムバンツェ――人間の魔力で駆動する人型機動兵器――、Asrionアズリオンを駆り、アルマ帝国まで飛んでいた。


「間もなくサナートだ。貴女の想い人は、本当にここにいるのだな」

「はい」


 彼はパトリツィアと、そしてネーゼと共に乗り、想い人のいる極北の地、サナートへと向かっていた。


「さて、着く前に一つだけ問うとしよう。公然とした恋愛と秘密裏の恋愛、どちらが好みだ?」

「ぶっ!?」


 意表を突く質問に、ネーゼが噴き出す。

 しかしシュランメルトは、至って真面目であった。


「堂々と二人で甘い時間を過ごすか、さもなくばおれ達以外の誰にも気づかれない恋愛をするか。それを聞きたいと言っている」

「それは……」


 葛藤するネーゼ。

 だが、サナートまでの時間は短い。


「わ、私は……!」


 間もなくサナートに着く。

 その頃になってようやく、ネーゼは決断したのであった。


     *


「邪魔させてもらおう。ここの守備隊隊長、ハーゲン・クロイツはいるか?」

「俺がハーゲンだ」


 応対した狐の獣人、ハーゲン・クロイツが答える。

 それを聞いたシュランメルトは、ハーゲンの顔を見た。


「何だ。何か付いているのか?」

「いや、違う。だが、お前は確かに相応しい男だ。彼女が惚れるのも頷ける」

「彼女だと?」

「お前に逢わせたい女性ひとがいる。出てきてくれ!」


 シュランメルトが呼びかけると、物陰からネーゼが歩いてきた。


「ネ……ネーゼ様!?」

「ハーゲン!」


 シュランメルトは二人が再開したのを確かめると、パトリツィアに「後は任せた。何かあったらおれを呼べ」と言い、その場を後にしたのである。

 それを聞いたパトリツィアは、小声で「はーい」と言いながら、遠くに行ったように見せかけて近くの物陰に隠れたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る