第9話 探索
夜の時間に行われただけあって、廃墟探索はやばいくらい雰囲気があった。
一応手元には、スタッフから支給された懐中電灯があるものの、照らせるのはほんの少しだけ。辺りが真っ暗でよく見えないし、廃墟らしく隙間風とか入ってきていて気味が悪い。
しんと静まり返った建物の内部に足音が響いて、嫌な感じに反響してるのが不気味だし、床材が老朽化している影響か、歩くたびにギシギシ音を立てていて不安になる。
懐中電灯で辺りを照らしてみると近くの人間の顔くらいは、はっきりと見えるのだが、そんなもの何のプラスにもならない。
窓の外は暗闇でガサガサ。
ギョッとして、視線がすいよせられる。
間が良かったのか悪かったのか分からないが、どこかの酔狂なカラスがカアカアないて、雰囲気を作ってくれた。
こんな時間にカラスって、活動してるっけ?
「……」
廃墟内は、無言でいるのも辛いほどの、ホラー向けな雰囲気だった。
「えっと、こういうのは初めて?」
たまらず僕は、女の子へ話しかけた。
「はい、前々から興味があったんですけど、今回勇気を出して参加しました」
「そうだったんだ。じゃあ、有名なホラー小説とか映画とか一通り嗜んでる感じ?」
「しっかりした作品は、きちんんとストーリーも練られていて、演出も考えられているから見ごたえがあるんですよ」
「へぇー」
大人しそうな見た目に反して、意外とこういうのが好きなのかな。
廃墟の様子には特にびびってる風じゃないし。
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