第16話 下に~下に!

 第3階層、第4階層もさほど敵は強くなく、マッピングしつつ、第4階層で、もう一泊して、翌日朝地上に向けて引き返すことになった。ダイが威圧を使うと、いっさい敵が出てこなくなる。そして、リンカちゃんが、マッピングした道をたどり一直線に戻ると、昼には地上に到着してしまった。



 地上の光がまぶしい、そして暑い。また、2日休んで潜るんだそうだ。


「次は3泊4日か。どのくらいまで、行けるかな?」


 ユイが聞いてくると、ダイがいち早く答える。


「今回、4階層まで行ったから、最終日帰って来るだけだとして、6階層じゃない?」


「ダイ、甘いな。最終日帰ってくるだけはあっているけど、行きは、また威圧使って、リンカちゃんのマッピング使って進むから、4階層までは半日で行き、そこから冒険スタート。敵がそれほど強くならないと過程すれば、9階層だ。まあ、敵も強くなって来るかも知れないから、8階層くらいかな?」


「なるほど、ガク、頭いいな」


「いや、たぶん、みんなわかっているぞ」





 しかし、実戦訓練いつまでやるんだ?


「ハインリヒさん、実戦訓練ってどのくらいやるんですか?」


「とりあえず、慣れるって感じだから1ヶ月だ。そして、1週間準備して、本格的攻略かな?」


「どこまで深さがあるかわからないから、厄介ですね」


「えっ! うん、えーとだな。今のところ、15階層に厄介な敵がいて、なかなか突破できないそうだ」


 ん? あれか? 確かバンパイア、アルキースとかいうやつか? 倒しちゃたけど。どうなったんだろ? そして、ハインリヒさん、歯切れ悪いな。





 そして、2回目に突入。ダイが威圧を使い。リンカちゃんの指示の元、最短距離を進み4階層へ。そして、5階層より攻略開始。ここも、でっかいさそりがいた位だったが、6階層からは歩行系のモンスターで、ダイが嬉々として倒していく。ひとがたの方がやりがいがあるそうだ。また、目の前で、ゴブリンが一体弾けとぶ。



 そして、7・8・9階層と順調に攻略して引き返す。ちなみに、いたのは、大きな蛇、でっかいゴブリン、そしてゾンビ。ダイが威圧かけると、モンスターはやってこない。最終日、ひたすら戻り、夕方脱出する。ゲートを使えば一瞬だけどな。




「おい、聞いたかガク?」


「ん。何がだダイ」


「勇者グループが、俺達9階層まで行ったって話聞いて10階層行ってるらしいぞ。だから、まだ帰ってこないってよ」


「勇者様もご苦労なこって」


「だな」


「俺達も、2日休んで次は5日潜って、今度は、4日休んで1週間か? それで訓練は、終わりか」


「最後の休み、またみんなでビーチ行ってはしゃぐか」


「いいね」




 そして、3度目の迷宮探索へ。9階層までほぼ1日かけて進み、1泊して翌朝、冒険開始。



 ようやく、敵も少しまともになってくる、骸骨の戦士に、幽霊、小さな石像が襲いかかってきたり、炎を吐く怪物も出てきた。苦戦とはいかないが、皆にはようやくまともな実戦経験になり、ついに14階層、そこで、引き返すことにした。





「あははは~♥️」


「フミカちゃん、待って~♥️」


「ガク先輩、早く~♥️」


 フミカちゃんが砂浜を走り、俺が追いかける。青い空、青い海、白い砂、フミカちゃんの揺れる胸。たまらん! ノノが、同意の声をあげる。じゃなくて、何考えてんだ俺!




「うん、ガクと、フミカちゃんのあれなんだ?」


「バカップルですね。ダイ先輩も、やりたいですか?」


「いや、いい」






 そして、三度目の探索へ、最後の探索だ。


「だーれだ?」


「ガク先輩…。真面目にやってください」


「はい、すみません」




 俺達は、潜っていくそして、ダイの威圧の効果がなくなってくる。そして、アルキースの扉の前に到達し、休む。そして、朝いよいよ扉を開ける。





 扉を開けて中を覗く。遠くに舞台のように盛り上がっている場所があり、壇上の椅子に誰かが座っている。




「はっはっは。良くきたな。我こそは、不死なる者。バンパイア、アルキース様だ。愚かな冒険者よ。覚悟するがよい」


 と言って、高く舞い上がる。アルキース、さすが不死復活していたようだ。


「一応、ボスっぽい、全力で行くぞ。各自散開」



 皆が構える。フミカちゃんが、呪文を唱える。薄く皆の体が光る。俺は、サラマンダーを召喚し、炎を放つ。アルキースは、無数のコウモリとなり炎をかわす。そして、再び元の姿に戻ると、襲いかかってくる。ダイ、ショウタと、ユイが武器を構え、受け止める。



 リンカちゃんが、小さな弓を構え中距離から攻撃する。アルキースは、ダイの拳で、ショウタの大剣が、ユイのロングソードで、傷つけられ、そして、


「ぐわあああああ~!」



 アルキースは、灰になる。ダイが、魔石を取り上げ俺に投げてよこす。



「雑魚よりは、強かったけど、それほどでもなかったな」


「ダイ達が強いんだよ。さて、先進むぞ」






 その後は、少しずつ強くなった敵とパーティーで戦っていく。苦戦ってほどじゃなかったが、16階層の人面鳥が鳴くと、状態異常を起こすらしく、ダイが混乱して、慌ててフミカちゃんが、法術をかけて解呪していた。ダイは、そういうのに弱いようだ。敵と戦うより、ダイと戦う方がよっぽど苦戦する。




 その後も、ゴーレム、剣を持ったトカゲ、人面ライオン。こいつは、毒針持っていて、ショウタが避けきれずに刺さる。フミカちゃんが解呪する。


「すみません、フミカ先輩。こんなの気合いでなんとかなると思っていたのですが」


 毒は、気合いでなんとかなるもんでもないぞ。





 そして、斧を持った豚が立ち塞がる、しかも集団で襲いかかってきた。だが、俺達のパーティーの敵ではないぞ。俺も、サラマンダー召喚して、炎で焼く。と、意外と良い匂いが立ちこめる。美味しそう。俺は、こんがり焼かれたオークって言うそうだ。を持ち上げて眺める。




「ガク先輩、駄目ですよ! 食べちゃ、拾い食いは」


「大丈夫だよ、フミカちゃん」


「おい、よせ、止めろ。ガク、口開けるな」


「フミカちゃん、拾い食いが駄目って問題じゃなくて、道義的にだなって、ガクいい加減にしろ!」


 ユイは、さすがに剣で殴るのはまずいと思ったのか、白い金十字の描かれた盾で殴られた。


「いてっ!」






「なんだよ、ちょっとふざけただけだろ」


「ガク先輩、ふざけて良いときと、悪い時があるんです。こんな時にあんなの食べて、お腹壊したらどうするんですか!」


「あのね、フミカちゃん、怒るポイントずれてるよ。まあ、いいコンビなのかな? わたしじゃ、無理だな~」


「何がわたしじゃ無理なんですか? ユイ先輩」


「ううん、何でもないの」






 そして、20階層の扉の前に立つ、まだ時間あるしやるか。俺はみんなを見渡す。さっきちゃんとお昼は食べて食後の腹ごなしの戦闘もすんで、万全のはずだ。皆も頷いている。




 俺は、ゆっくりと扉を開ける。広間の真ん中に自分たちの2倍くらいある何かが立っている。そして、周囲には、数人の影がある。俺達は、ゆっくり近づいていった。




「ぐははは、愚かな冒険者どもよ、わしは、オークロード、ライヤーン。貴様らをこの斧で切り刻んでやるか。さあ、かかってこい」



 そう言うと、斧を構える。まわりの4匹のオークも同様に斧を構える。 俺は、



「でっかい豚だな~。美味しいかなぁ?」


「なっ! 貴様、わしらは、食べ物ではないぞ。よだれ垂らすな!」





 さて、戦うか。まわりを見ると、皆が呆気にとられて俺を見ている。冗談だって。



「フミカちゃん、法術お願い! ユイは、周囲のオーク倒して、俺も倒すけど、リンカちゃんは、援護。ダイとショウタは、ボスと戦って、時間稼ぎよろ!」



 慌てて、戦闘準備を開始する、皆をよそに、俺は、一体のオーク兵士に向かい。手刀で、首を切り落とす、他の一体が、俺の背後から斧を降りおろしてくるが、斧を受け止め、斧の柄を掴んで、腕を極め、投げる。オーク兵士は、斧を離して空中を舞う、そして、斧で、一閃。胴体が2つになる。



「ガク。やっぱり召喚魔術師じゃねえ、というか、怖い」



 と、いいながら、ダイは、ショウタと共に、オークロードと戦っている。こちら見ている余裕あるなら大丈夫だろう。ユイの方を見る、オーク兵士2匹と斬りあっている。こちらも押しているな。




 問題なし! だけど、長期戦にならないようにっと。俺は、シルフを召喚し、ユイと戦っている、オーク兵士を風の刃で切り刻む。そして、ユイが、2匹にとどめをさす。



「ありがとう!」


 ユイが声をかけてくる、


「まっ、余計なお世話だったでしょ」


「そんなことないよ」


「ぶう~。ガク先輩。オークロードに集中してください!」


 なぜかフミカちゃん不機嫌になっている。戦闘に集中、集中。





 俺と、ユイもオークロードに襲いかかる。


「げへへへ、もう仲間はいないぞ! 覚悟するこったな!」


「ガク先輩、それ悪役のセリフです」





 そして、ダイ、ショウタ、ユイの直接攻撃、リンカちゃんの、中距離攻撃、そして、フミカちゃんも、槍で攻撃に加わり、俺の精霊魔法で、焦げ焦げになって倒れる。残念ながら、死体残さず灰になり、魔石が転がる。



「くくく、我が力を思い知ったか。雑魚ども」


「ガク先輩、だから、それ悪役です」






 俺達は、オークロードを倒すと、戻る事とする。さて、次は本格的攻略の始まりか。まだ、20階層。だけど、何階層まであるんだ? オークロードにでも、聞いておけばよかったか?







 戻ると、ハインリヒさん他含めて、飲み会をする。場所は、ハインリヒさん常連の店だそうだ。小さなカウンターと、奥にテーブル席があるが、こじんまりした、良い店だ。今度また来よう。



「正直な話、見てて思ったけど、全員強くなったな。俺が、正規の冒険者だったら、本当に対決したいレベルの敵だったぜ」


「ですけど、強くて、どうしようもないレベルじゃないですよね? 本当に、20階層到達した人いないんですか?」


「それはあれだ。15階層のやつも含めて、倒しても復活してくるらしいから、突破できないことにしようって国の方針で。それに、20階層突破した、パーティーも一組だけだぞ。それも、オークロードとの戦いで仲間失って、現在新メンバー募集中だから、動いてないし」


「ふーん」


「や、ガク信じてくれ。もうこれ以上お前達に嘘はつかない」


「わかりました。今度嘘ついたら、ハインリヒさんのお腹の中にサラマンダー召喚するから、大丈夫ですよ」


「おっ、おい!」



 ハインリヒさんが、焦り、俺達は笑う。さて、本番に向けて気合いいれるか。

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