第15話 実戦訓練開始

「では、いよいよ実戦訓練として、[魔王の迷宮]に入っていただきます。今後は、6人一組で行動して頂き連携を高めてください。今日は、パーティー決めします。バランスも、考えてよろしくお願いいたします。では」



 さて、パーティー決めか。でも、俺達は、いつものメンバーで良いんじゃないか?。と、思っていると、パタパタとフミカちゃんが、走って隣へ、そして、ダイと、リンカちゃんが、ユイにショウタも、集まってきた。



「じゃ、俺達決まりだな」


「ああ、いいんじゃね」


「バランスもいいよね?」




 見ると、勇者タケシの回りに集まって、皆騒いでいる。



「タケシ君、わたし入れて!」


「俺もいいかな?」


 なんて盛り上がっている。おもてになられますね。勇者様。



 と、4人がその輪から外れひとかたまりになる。勇者グループ諦め組かな? えーと、シロウとチハヤ、そして、スミレちゃんと、ユミちゃんか。どういう繋がりだ?。剣道部の同期が、チハヤとユミちゃんで、シロウと、スミレちゃんは、合気道部の先輩後輩。それはわかる。チハヤとシロウが話しているところとかは見たことないけど。まあ、いいか。




 勇者グループの方もメンバー決まったようだ。



「ゴウシ行くぞ!」


「えっ、俺もですか?」


「いいから、行くぞ!」



 勇者グループから外された、カヅキが、後輩である、ゴウシを連れてシロウの方へ行く。これで決まりか。えーと、メンバーは、



 勇者パーティー


 勇者タケシ

 騎士ヒサト

 忍者ハクト

 戦士アユミ

 賢者レイカ

 魔術師 ナオミ



 カヅキグループ


 格闘家カヅキ

 狩人ユミ

 魔法戦士シロウ

 黒騎士チハヤ

 戦士ゴウシ

 神官スミレ



 ガクパーティー


 召喚魔術師ガク

 武道家ダイ

 神官フミカ

 戦士ショウタ

 シーフリンカ

 聖騎士ユイ



 こんな感じか。




「では、メンバーも決まったようですので、明日より、時間差で[魔王の迷宮]に入っていただきます。2泊3日の冒険を想定して頂き、その分の準備を整えてください。食事は、我々が用意しますので、安心して下さい」



 で、何を用意すれば良いんだ?。俺は、皆の方を振り返る。


「何を用意するんだ?」


「なんだろう? 洞窟みたいなの入るんだから、たいまつとか、灯り?」


「それは、俺が光の精霊召喚して、各自に渡すよ」


 俺は、光の精霊を召喚し、宙に浮かべる。昼間なので、あまりパッとしないが、光の球体が浮かぶ。


「へー。便利だな」



 と言って、ダイが指を近づける。触っちゃ駄目だよ~。


「いてっ」


 ダイが光の球体に触れるとバチッと音がして、弾ける。


「言ってなかったけど、触るなよ。痛いから」


「先に言えよな、ガク」



 笑いが起きる。後は何を用意して行けば良いかな? と、ショウタが、



「準備って言うか、こういう時ってリーダー中心に決めていくじゃないですか?。リーダー誰ですか?」


「あっ、そう言えば、決めてなかったね」


「それなら、ユイか、ダイじゃない? 部活で主将やっていた位だし」


「うーん、俺は違うな。チームまとめてってタイプじゃない、俺のふたつなは、走る暴走列車だぜ!」


「暴走列車は、すでに走っているし、暴走するなよ。ユイは?」


「うーん、指導するのは好きだけど、いざとなったら、考えるより、体が動いちゃうタイプだから、あまり向いているとは、言えないかなぁ? それよりは、向いているやつがいるぞ」


「誰だ?」


「うーん、いざという時、冷静沈着で、頭が良くて、皆に的確に指示を飛ばし、それでも、先陣をきって行動出来るやつ」


 誰だそれ? 良く考える。フミカちゃんは、心辺りがあるらしい。


「そうですね~。すっごく頼りになりますね」


「ああ、こちらに転移させられた時に、皆が危なくないように指示出してたな」


「そして、まわりの状況を率先して確認してましたね」


「その後、ここの使者と落ち着いて対応したと」


 ダイ、リンカちゃん、ショウタも思いついたっぽい。で、誰だ?


「という訳で、よろしくリーダー」


「えっ、俺?」


 ユイが俺を指さしている。良いのか?、俺で。


「わかった。やるよリーダー」



 めんどくさいけど、しょうがない。



「では、リーダーをやらせて頂きます。ガクです。よろしくお願いいたします。で、用意を開始するけど」



 俺は、前日に迷宮潜った時のことを思い出す。必要だった物ってなんだ。1日事で帰っていたから。という訳で、寝る場所とか、寝具か?。ああ、後はあれだ。


「男は立ちしょんするから、良いけど女性のトイレどうするかか?」


「なあ、ガク、とてもありがたいけど、いきなりそこ? これは、わたし達だけで解決するよ。ねえ、フミカちゃん、リンカちゃん」


「そうですね」


「わたしは、ガク先輩なら見られても別に」


「フミカちゃん!自分安売りしないの」


「えっ。はい、すみません」




「じゃあ、次は夜寝る時か」


「安売りしないので、一緒には寝ませんよ!」


「えっ。えーと、ではなくて…」


「フミカちゃん、落ち着いて、ガクそんな話してないから」


「ふえ、ぐすっ、えー、フミカちゃんが、一緒に寝てくれない件は置いといて、ぐすっ」


「何泣いてんだ、ガク。大丈夫だよ。フミカちゃん、一緒に寝てくれるよ」


「ダイ、そうかな」


「ああ、大丈夫だって!」


「いつまで、コントやってんだ!」


 ユイがついに怒る。はい、真面目にやりますよ。はい、たぶん。


「さあ、気を取り直して……」






 翌日、準備をして、朝早くに集合。馬車で、出発する。俺達が一番手だそうだ、勇者タケシが勝手に順番を決めてしまったそうだ。まあ、良いけど。俺達と、同行してくれるのは、ハインリヒさんと、魔術師のフジャイラさん、そして、神官のアーリマンさんに、シーフのファカンさん。そして、食事担当の兵士5名だ。



「俺がリーダーの戦士団長ハインリヒだ。って、ガク達か、なら知ってるか。えーと、今回はまず迷宮に慣れるのが、目的だ。本当は、迷宮の内部のマップあるんだが、敵が弱い場所で、慣れてもらうために、マッピングしながら進んでくれ。もしもの時は、俺達も助けるが、自分たちで、進んでくれ、以上。では、出発」



 俺は、光の精霊を召喚して、それぞれの頭の上に飛ばし、命令する。それぞれの言うこと聞いてまわりを照らして欲しいと。



 俺達は、第一階層を進んで行く。先頭は、探索者スキルを持つ、リンカちゃん。そして、アタッカーとして、2列目にダイとショウタが、3列目は、魔法と、回復担当の俺と、フミカちゃん、再後方を、ユイが歩く。バックアタックとかの警戒だそうだ。



「待って、先に何かいます」


 そう言って、リンカちゃんが止まり、そして、自分の光の精霊を飛ばして確認する。洞窟の天井部分に、緑色をしたどろどろとした粘液状の何かが付着している。


「えーと、スライムですね。ガク先輩、燃やせます?」


「スライムって、玉ねぎ型して、大きな目をしていてってやつだと思ったけど。まあ、いいや、サラマンダーの炎」



 俺は、指先に火を灯すと、粘液に向けて飛ばす。スライムが燃えて消滅する。




 リンカちゃんは、的確に敵や、罠を見つけて進む。行き止まり、引き返すを繰り返し、半日ほどで、第1階層は終わりそうだ。敵もスライムと吸血コウモリだけ。


 兵士達が用意してくれた食事を食べると、第2階層に突入する。ここも同じような敵しか出てこない。でっかいネズミが増えたくらいか?。




「このペースだと、4階層は行けるかな?

最後の1日帰るのに使うとして」


「えっ、ちょうど半分だと、明日の昼に3階層で引き返すのかと思っていたけど」


 ユイが当然のことを言ってくる。普通はそうだよね。


「帰りは、道分かってるし、ダイのスキル威圧で、敵も寄せ付けなかれば、ただ歩いて帰るだけになるし。あまり、弱い敵と戦っても意味ないしな」


「まあ、確かに。スライムは、ガク先輩の炎で一発だし、バットは、ダイ先輩の衝撃波で一発だし、ラットも剣で一撃ですし」


 ショウタが同意すると、皆も頷いている。よし、決まりだ。



 順調に2階層終わった所で、1日目終了。ハインリヒさん達も近づいてくる。



「順調、順調! さあ、夕飯食って早く寝るぞ。明日も早いからな。さて、キャンプの準備だ。そうだ。見張りの順番だけ、決めておけよ。敵は弱いが寝ている間に近づいて来たら危ないからな」


「ハインリヒさん、それに関しては、俺に考えが、リンカちゃん、この辺に行き止まりの道ある?」


「少し手前の道、ちょっと入ったら突き当たりです」


「じゃ、そこ行こう」



 皆で移動する。俺は、心の中でノノに呼びかける。ここに岩の壁作って。


「わかった、主殿」


 そして、今度は声に出して。


「ノーム召喚。ウォール!」


 岩で出来た壁が出来、行き止まりを使った個室が出来上がる。けっこう広めに作ったから、圧迫感もない。


「凄いな! 精霊魔法って、こんなことも出来るのか。確かにこれなら、敵も入ってこないな」


 ハインリヒさんが、誉めてくれた。




 しかし、夜寝ていると、誰かが起きる気配がする。気配を探るダイだ。何やってんだ?


「冷えるんだよな。迷宮。地上暑いのに」



 そして、


「ジャーーーー!」



 閉じられた岩の部屋に響きわたる、放尿音。うーん、ちょっと考えないとな。

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