第12話 ダブルクラウン忍者マスターセレ。
「主殿、主殿、誰か来たぞ。主殿!」
「うわっ!」
目を覚ますと、ノックの音が聞こえる。慌てて飛び起きると、ドアを開ける。そこには、従者さんがいて、朝食の準備ができたことを伝えられる。
「すみません、着替えてすぐ行きます」
「おはよう~」
「おっ、おはようガク」
「おはようございます」
皆に向かえられて、席につく。まだ、眠い。
「ガク先輩大丈夫ですか?」
「フミカちゃん。うん、大丈夫なんだけど。まだ眠い。今日は午前中寝る」
「昨日何をしたんだガクは?」
「召喚魔法でいろいろ呼びまくった」
「それって、大丈夫何ですか?」
「だから、眠い。グー」
「ガク先輩、起きてください!」
「はい、あっフミカちゃんおはよう~」
「大丈夫か、ガク?」
午前中ゆっくり寝て体力回復。さて、出かけますか。研究室に籠るのはいつでも出来る。
確か冒険者ギルドは、街の入り口門の方だったな。歩いて出発する、街に出るの始めてだ。本当に街は活気に溢れている。お昼時だからか、良い香りが漂ってくる。寝てただけなのにお腹すいてきたぞ。
俺は一件の屋台に立ち止まり、羊肉の串焼きを買う。焼きたてで旨い。もう一本買っておけば良かったな。
歩いて45分ほどで、冒険者ギルドに到着する。まわりの建物がほぼ平屋なのに対して、5階建ての立派な建物だ。
中に入ると受付の女性に声をかける。
「あの、すみません。ギルドマスターのバルディアさんにお会いしたいのですが?」
「えーと、紹介状や、推薦状は、ありますか?」
「はい、これです」
俺は、冒険者カードを渡す。
「少々お待ちください」
と言って、受付の女性が奥に向かう。代わりの女性が受付に立ち、俺は少し中を見渡す。
結構賑わっている。冒険者ってこんなにいるんだ。しかも、結構ベテランっぽい人が多い。ちょっと受付さんに聞いてみよう。
「人いっぱいですね。いつもこんなに冒険者集まっているんですか?」
「はい、元々この辺、森や砂漠があって、魔物が多かったりするんですが、さらに、[魔王の迷宮]が現れて腕試しの冒険者が集まって来てるんです。国も高い報償金だしてますし」
「じゃ、[魔王の迷宮]も攻略間近とか?」
「それが、迷宮って呼ばれているだけに、内部複雑だし、それにどんどん下に下がっていく形式の人工の洞窟なんだけど。下に行けば行くほど、魔物が強くなっていって、なかなか進めないみたい」
「そうなんですか」
「マッピング済んでいるのが、10階層位で、一番潜れた人が15階層位だったかな?。皆無事に帰ってきて欲しいんだけどね」
「そうですか。帰ってきて欲しいですよね」
「お待たせしました。マスターお会いするそうですが、今出かけてまして、こちらのお店に行ってください」
と、一枚紙を渡される。地図だ。分かるかな?
ちょっと迷ったがなんとか到着した。まだいるかな?扉を開けて中に入る。お昼時は過ぎたので、5人のお客さんだけがいる。お店の中には、焼いた肉の良い香りが漂う。お腹すいてきた。
えーと、どの人かな?。うち2人は女性だから違うとして、1人は、知的な研究者っぽいし、もう1人は、大男の髭もじゃの禿げ。いかにも犯罪者の顔だからこの人も違うだろう。最後の1人は、端整な顔立ちのイケメン。ちょっと若いけどこの人かな?
「あの~、すみません。バルディアさんですか?」
と、髭もじゃ禿げが顔をあげ、
「おっ兄ちゃん、バルディアは、俺だ。えーと、確かハインリヒが紹介してきた。ガクだったか。まあ、こっちきて座れ」
えー。犯罪者顔の方だったか。俺は、さっき声かけた人に謝ると、バルディアさんの前に座った。
「始めまして、ガクです」
「俺は、バルディア。この街のギルドマスターやっている。よろしく。で、ここ美味しいからなんか頼んだら、おごらないけど」
「はい、そうさせて頂きます」
この店は、ステーキ専門店のようだ。羊肉のステーキに、ひよこ豆のスパイシースープ。そして、パンのセットを頼む。料理が来る間に話をすすめる。
「バルディアさん、冒険者の職業で、聞きたいことがあって」
「何だ?」
「職業3つ持っている人っていたりします?」
「職業を3つ?。いや。聞いたことないな。2つはあったけど」
「2つはあるんですか?」
「ああ、まあ英雄って呼ばれている人ばかりだけどな。ダブルクラウンって言ってたけど、思いつく限りだと、召喚魔術師にして、騎士だったベラート。幻獣ペガサスに乗って大空を駆け回った。最近だと、忍者にして、武闘家のセレかな。目に見えぬ速さで、あるいは影に潜んで、そして凄まじい攻撃で相手を打ち倒す、忍者マスターって呼ばれてたよ」
それだ! その人参考にしよう。
「ありがとうございます。2つはいるのか」
「で、3つって?」
「ええと、信じてもらえないかもしれないけど、職業診断の時に、職業が3つ出てきまして」
「何と何と何?」
「ええと、召喚魔術師と、忍者と、武闘家です」
ぐはっ、げほっげほっ。マスターがむせかえる。落ち着くのを待つ。
「さっき話した、忍者マスターのさらに上じゃないか。しかも、上級職3つか。スゲーな」
「信じてくれるんですか?」
「だって、嘘言ったってしょうがないだろ?。そうだ、冒険者カード貸してみろ」
俺は冒険者カードを渡す。するとバルディアさんは何か操作する。
「これで、職業書いてみろ。シークレットモードにしておいたから、他の職業はバレないようになっているから、安心しろ」
俺は、ペンを借りて冒険者カードに書き込む。えーと、忍者。そして、武闘家。何も鳴らない。
「やっぱりトリプルクラウンか。面白くなってきたぞ。他に、何が聞きたい」
「それだったら、友達が武闘家なので、その技術は教わろうと思うんですけど、忍者の技術教えてくれる人いませんか?」
「ちょうど良い人がいるぞ。さっき話した。ダブルクラウン、忍者マスターセレだ。奥さん亡くされてから、この国に住んでいる。場所は、宮殿近くの島だ。まあ、100歳超えているから、どれだけ教えられるかわからないけど。会うだけでも参考になるでしょ」
おお~、何と言う幸運。参考にしようと思った人が生きてるなんて、しかも話もできそうだ。
「是非、ご紹介、お願いいたします」
「いいぞ。冒険者カード貸してくれ」
「まあ、こっちからも連絡しておくから、明日以降にでも訪ねてみなよ」
と、言いながら、冒険者カードに書き込む。
「ありがとうございます」
さっそく、明日行ってみよう。
料理が運ばれてきた。良い香りだ。俺は、ステーキをナイフで切ると、肉を口の中に運んだ。旨い! 肉の焼き具合、ソースの味。かなり旨い。また来よう。
「では、ありがとうございました」
「おう、気をつけて帰れよ」
俺は、バルディアさんと別れ、宮殿へと帰る。しかし、夕食食べれるかな? お腹いっぱいだ。
夜、夕食をもてあましていると、ダイが
「そう言えば、今度の休み船で行ける島に、綺麗なビーチあるから、行こうって話になってるんだけど、行くよな?」
おっ良いですねぇ。気分転換によさそうだ。目の保養にもなるし。
「もちろん」
「じゃ、決まりだ。6人で行くぞ。えーと、3日後か。楽しみだな」
そして、翌日船を出してもらってセレさんに会いに行く。どんな人だろう。
島は、小さな島だが草に覆われ、さらに数本のヤシの木がはえている。家は石造りの白い家だ。家に近づくと、小柄なおじいさんが、庭でビーチチェアに座っているのが見えた。この人かな?。でも、100歳超えているように見えない。
近づくと。
「お前が、ガクか?」
「はい、始めまして、セレさんですか?よろしくお願いいたします」
「ん。で修行したいのか?」
「はい」
セレさんは体を起こして立ち上がる。目が鋭いし、体も歳には見えない。
「才能はありそうだが、まだ、体が出来ていない。忍者や、武闘家に適した身体強化が起こっていない。本格的な修行はそれからだな。身体強化が起きると体がとてつもなく痛くて動けない。それが、2日ほど続く」
そして、砂浜を指差すと、
「今日の午前中は、砂浜を端から端まで、全力で走って、少し休んで全力で走るを繰り返せ。水のタンクがそこにあるから持って行け。では、修行開始だ」
きつい、きついぞ。水を飲みながら続けるが、これで本当に身体強化が起こるのか?
「よし、止め。それでは昼にするぞ」
駄目だ、食べる気力がない。
「食べるのも修行だぞ。早く食べろ」
省エネ、手抜きがモットーの自分が何でこんなに辛いことを~。だけど……。逃げない。皆で帰るためだ。頑張ってみよう。
「午後はヤシの木の登り降りだ。出来るだけ休むなよ」
今度もひたすら登り降りを繰り返す。さっき走りまわって足の力がなくなったが、今度は手が、駄目になりそうだ。
「止め! 今日は帰っていいぞ」
這うように、船に乗って帰り、夕食の時は、フォークすら持てない自分のために、ノノとフミカちゃんがお世話してくれた。
「大丈夫か? 主殿」
「はい、あーん。美味しいですか?」
情けない。翌日も、セレさんのスパルタ修行は続く。今度は、出来るだけ高く休まずジャンプする。と、午後は延々の筋トレ。すると、帰り際、全身が熱く痛い。
「ようやく、始まったか。これで、明日、明後日休んで、来週から、本格的修行に入れるな」
やった~。ようやく修行か。だけど、これでビーチ行けるかな?
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