第13話 ビーチと修行と俺。
「主殿、誰か来たぞ!」
いや、起きてるんだけど、体が動かない。
「いてっ!」
体を起こし、這って扉に向かう。扉を開け、
「食事の準備がって! 大丈夫ですか?」
「え、……、ダ…メ」
痛みで少し意識が遠のく。
あれ、まわりが騒がしい。そして、後頭部が柔らかいものにあたる。目を開ける。目の前にフミカちゃんの顔が見える。どうやら、俺は部屋で仰向けに、横たわりフミカちゃんが、膝枕してくれているようだ。
ダイや、ユイ、リンカちゃんや、ショウタの心配そうな顔も見える。大丈夫だよ。体が痛いだけなんだ。って言ったつもりだが。
「ダ…ブ…カラ……イ…イ…ケ…ダ」
「おい、大丈夫か?ダブからいい毛だ。ってどういう意味だ。最後に言い残すことはないか、ガク!」
ダイも、真剣なんだろうけど、ユイとフミカちゃんが凄い勢いで睨んでいる。俺は、フミカちゃんや皆とビーチ行くんだ。連れてってくれ。
「オレ…フミカ……ヤ、ミナ……ビーチ……ク…」
「俺、フミカや皆、びーちく?って何だ?」
フミカちゃんが、真っ赤になってるんだけど、意味わかったのかな? そして、ユイは、ダイの後ろで竹刀を振り上げている。何で口まで動かしにくいんだ。俺は全身の力をこめて。
「ビーチ行きたい!」
良かった、言えた。
船は、海上を走る。青い空、青い海素敵な風景だ。痛みで動けないことを除けば。
「しかし、ガク頭良いって思ってたが、馬鹿だよな」
そう、あの後、少しずつしゃべっているうちに、しゃべることは、苦痛でなくなってきたのだ。そこで、皆に説明したのだ。武闘家で、忍者でもあることは秘密にしているので、召喚魔術師として、身体強化を起こすために、過激な訓練したら、体が痛くて動けなくなったと。すると、ダイが、
「俺達教えている先生が言っていたぞ、身体強化は急速に進めると、体に負荷がかかるから、3週間位かけてゆっくり行っていきますって」
何~! セレさん、何してくれたんでしょ。
「それでも俺は、すでに先生と互角に戦えるようになったぞ」
さすが、天才。すると、ショウタが、
「自分は、教えてくれている、ハインリヒさんが、化け物なんで、全然ですね」
「騎士団長も強いよ」
と、ユイ。フミカちゃんは、
「わたし達は法術からなんで、戦闘訓練してないですけど、身体強化は、少しずつ進めてますよ」
「わたしは、戦闘訓練というよりは、スキル磨きかな、木に登ったり、山の中走りまわったり、洞窟探検したり」
とリンカちゃん。皆順調そうです。
ビーチチェアに座って、紺碧の海を眺める。ビーチパラソルが、俺を直接の日射しから守る。
海では5人が楽しそうに遊ぶ。なぜか、水着が男性トランクスタイプ、女性はビキニ。なんでも、服を作ってもらった人に頼んで作ってもらったんだそうだ。まあ、細かく採寸されたし、下着も作ってもらったからな。
さすがに、ホックなどはないため、紐で縛るタイプだけどね。俺は赤、ダイが黒、フミカちゃんが白、ショウタが青で、リンカちゃんが水色、ユイが緑。なんか戦隊ものみたいだな。
皆が上がって、こちらに向かってくる。そして、フミカちゃんが、覗きこんでくる。何と言いますか、前屈みのフミカちゃんの胸が重力で下がり、目の前に。目のやり場に困る。白いビキニがフミカちゃんの巨乳を包み込み、蝶々結びの紐が、谷間から垂れ下がる。落ち着け俺の息子よ! 冷静に、冷静に。
「ガク先輩、少しは良くなりました? ビーチ残念ですね。楽しいですよ」
「本当にね。残念だよ。またチャンスがあったら来たいな」
「そうですね。絶対来たいです!」
と、ノノが自分の胸の上で跳び跳ねているのを感じる。何やってんだ、あのエロ精霊王。
見ると、フミカちゃんの胸に向けて一生懸命ジャンプ。と、ノノの手が、フミカちゃんのビキニの紐を掴む。重力で落ちるノノ。ほどける紐、はだけるビキニ、暴れる巨乳。そしてピンクのって何言ってんだ俺!
「キャッ」
フミカちゃんが、慌てて隠す。
「何やってんだ、ガク!」
ユイの竹刀が直立した、息子にヒット!
「ぐはっ!」
「大丈夫ですか? ガク先輩。わたしヒール覚えたんです」
フミカちゃん、そこにヒールかけないで~。それより紐結んで、ちゃんと隠してくれ~!
翌日目覚めると痛いが、少し動けるようになったが、ビーチで遊べるほどではない。翌日も、ゆっくりビーチチェアの上で過ごす。散々の休みだったな~。まあ、良いか。フミカちゃんの見れたし、ゆっくり過ごせたし、明日からは、セレさんと修行だもんな。
「セレさん、よろしくお願いいたします」
「ん、よろしく。まずは、気だな。とりあえず、武闘家とは」
セレさんの説明によると、武闘家とは、騎士や、戦士のように武器で戦わない代わりに、己の体を武器にして戦う者。己の中の気を高め相手を打撃や、投げ、関節技で倒す。
そして、特殊スキル「威圧」。これは、自分よりも弱い敵を寄せつかなかったり、気絶させたりするそうだ。某国民的漫画のあれみたいだな。ただし、注意が必要で、自分と同等位か、強い敵は寄って来るそうだ。そりゃ、そうだな。
で、忍者は、文字通り忍ぶ者。シーフや狩人と同じく、探索者としてスキル「忍び足」を使用して、気配を消し敵の動きを探ったり、洞窟や、森など迷いやすい場所でスキル「マッピンング」を利用して、迷わないように仲間を誘導したりする。
そして、戦いになれば、アーチャーと同じく優れたその目で敵を観察し、仲間を助ける。ただし、攻撃力は低く、中距離から、飛び道具クナイで攻撃したり、接近して、クナイで斬りつけたりするそうだ。
そして、忍者の特殊スキルとして、「影」。これは、文字通り影に潜り込み、相手に見つからないようにできるらしい。影から飛び出して不意打ちとかできそうだな。
「気?」
「ああ、武闘家が、それを活用して戦うし、忍者は逆に消す」
「はい、わかりました。で、どうやれば?」
「気は、胸の前でボールがあるイメージをしろ、そこに力を集中させて、こねていくイメージをしろ」
実際に、力をこめて、胸の前で力を集中、こねる?。これは、合気道の経験が生きたな。意外とイメージしやすいぞ。
そして、最終的には、
「ドゴン!」
「セレさん、できました」
目の前の岩が砕けちる。
「ん。次は、逆に気配を消す訓練。心静かに精神を研ぎ澄ませ」
心静かにか。これは座禅しよう。心落ち着け、研ぎ澄まし……。グーグー。
「寝るな!」
「次は、忍者の特殊スキル「影」だ。これは文字通り、気配を消し、影や、闇に溶け相手に気付かれずに近づく技だ。実際にやって見るぞ」
すると、セレさんの姿が、認識しにくくなり、目を離していないのに、セレさんの姿が消えた。そして、背後から
「こっちだ」
「えっ?」
俺はあわてて後ろを振り返る。凄い。何これ?。
「では、やってみろ」
やってみろって、どうすれば良いんだ?たぶん、気配消すの延長線上なんだろうけど。これは難しいな。
俺は、気配消しつつ、自分の影を見つめる。特に変化なし。駄目だ。セレさんにもう一回聞いてみよう。
「セレさん。こつってあります?」
「うーん、自分が、消えて大気に溶け込み自然と一体化するイメージだ」
俺は、気配消し、これはだいぶうまくなったんだよな。そして、大気に溶け込むイメージをして、自然と一体化。徐々に、ものにしていくが、1日がかりでとりあえず、合格をもらう。これは、これからも練習だな。
「次は、マッピンングだ。今から、街に行って歩きまわり、帰って来たら俺に説明しろ」
半日ほど街を歩きまわり、島へ戻る。
「えーと、船着き場降りて、真っ直ぐ行くと……」
「うん、合格だ。ただ、料理屋の何がうまいとか、屋台の匂いとかはいらないからな。そして、今の話を実際に地図にもできるようにしておけよ」
「はい」
その後は、忍び足の練習や、威圧の練習をちょろっとして。
「最後は、俺と手合わせをする」
「えっ、はい! よろしくお願いいたします」
向き合う。
「いくぞ」
セレさんの存在が揺らぎ、と目の前に迫る。あわてて、避けようとするが、避けきれず軽い当て身が入る。
「げほっ」
「目で見るな。気配で探れ」
スピード速すぎるし、気配もわずかしか感じられないし、これはきつい。しかし、徐々にその動きについていけるようになっていく。
よし、セレさんに近づくと、貫手で突いてくる。俺は、手を極めると小手返しに投げる。前方に飛躍して飛ぶ、セレさんの頭を蹴るが、セレさんが消える。そして、背後に。
「面白い技を使うが、投げるなら、そのまま地面に叩きつける気で出せ。受け身が取りやすいぞ」
そうだった。今まで、演武だったもんな。これは、実戦頭を切り換える。しかし、セレさん、本当に100歳超えてんの?。化け物だよ。
今度はこっちから、セレさんに拳を撃ち込んでいく、避けられるが本命はこっちだ。避けたセレさんに迫り、足先で、セレさんの足の指付け根を押さえ込む。そして、すれ違うように前へ出ると、手のひらをセレさんの顎に当て、腕を返しつつ、急角度で、地面に向けて振り下ろす。が、これも避けられる。
「今のは良かったが、途中から叩きつける方に意識行き過ぎて、強引になっているぞ」
鋭いな、セレさん。気をつけよう。
「では、止め! これで修行は終わり。後は、自分で修行続けてくれ。まあ、武闘家としては、良いが。忍者として、気配消すとか、うまく融合できてないから、気をつけてな」
「はい、ありがとうございました」
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