第10話 訓練開始だ!

 翌日目を醒ます。まだ、従者は呼びに来ていない。そうだ。風呂行こう。いつでも入れますって言ってたもんな。




 服を着替えて、冒険者カードを持って部屋を出る。そう。この冒険者カード、カードキーにもなっていて、部屋に入る時に、タッチすると部屋のロックが解除されるという。




 風呂の部屋の前に立つ。扉には、使用中の文字が浮かんでいる。誰か入っているのか?。俺は、いったん部屋に戻ろうと思い、扉に背を向ける。と、ロックが解除され扉が開く。


「あっ、岳先輩おはようございます」


 ん? フミカちゃんの声が響く。俺は、振り返る。と、いたのは。フミカちゃんだけではなく、ユイにリンカちゃんも一緒だった。



 風呂上がりの三人は、少し上気した顔をしていて、良い香りがただよう。普段からあまり化粧っけのない三人だが、今は完全にすっぴんのようだ。


「おはようフミカちゃん、リンカちゃん、ユイ」


「おはようございます。ガク先輩」


「おはよう。ガク」



 三人は、自分と同じく手ぶらだが、着替えた自分と違い。寝間着のままだった。白いワンピースの布一枚、そのため身体のシルエットが浮かぶ! どころじゃなく、いろいろ透けて見える! 三人は、俺の視線に気づいたようで、リンカちゃん、ユイが。慌てて手で隠す。


「逃げなきゃ駄目だ、逃げなきゃ駄目だ」


 心で昔のアニメの逆の言葉を呟くが、体が言うことを聞かない。視線が固定される。


「いや♪ 恥ずかしい♪」


 フミカちゃんの声が聞こえる。すると、ユイが手ぶらではなく、ちゃんと持っていたようだ。竹刀を取り出し俺の頭を叩く。


「いつまで、見てるんだ!」





「ふー」


 気持ち良い。朝日に照らされ水面が光輝く。ロックはかけなかったので、ダイや、ショウタも来るかなっと思ったが、一向に来ない。大きな風呂を一人で独占する。優雅だ。異世界じゃなきゃもっと良いのだが。






「お食事の支度が出来ました」



 風呂出て、着替えていると、従者が呼びに来る。慌てて出ると、風呂の隣の部屋へ向かう。ここが小さな食堂になっている。大きな食堂もあるのだが、6人だけの方が気楽でしょ。という訳で、こちらで食事をとることになった。




 部屋に入ると、5人が座って待っている。


「ごめん、皆待った?」


「いや、俺たちも、さっき呼ばれてきたところだし、呼ばれるまで、寝てたぜ」


 ダイが少し眠そうに返事をしてきた。


「俺は、朝風呂気持ち良かったぞ」


 と言いながら、目を瞑り、先ほどの光景を思い起こす。と、バッシ! 竹刀で頭を叩かれる。


「思い出さなくていい!」


 ユイ、能力者か?



 サラダに、スープ、そして、パンに目玉焼きという感じの食事をたべていると、ユイが、


「昨日ちゃんと話を聞いていなかった、二人に言っておくけど。この後は、わたし達が、普段使う服や、戦闘服をその場で、作ってくれるんだって。鎧や、剣や、杖何かは、希望聞いて職人さんが作ってくれるんだって。わかった!」


「はい」


「午後は、それぞれ職業ごとに別れて訓練開始。騎士、戦士、魔術師、神官、武闘家、そして、シーフとか」


「と言うことは、俺は魔術師の所になるのか?」


「たぶん、そうじゃない? だから、昨日ちゃんと聞いて質問すれば良かったのに。」


 はい、すみません。





 そして、始まった服作り、下着まで作ってくれるそうだが、全裸にされるのは、恥ずかしい。いくら、周囲男性だけとはいえ。



 服は現地の民族衣装。白いズボンに、白の上着に、色のついたチュニックを着るスタイルだ。希望の色を聞かれたので、赤を選択、ちょっと派手かな? 採寸され、その場で作成されていく。



 続いて戦闘服だが、どういうスタイルで戦うか決めてないので、とりあえず保留。防具としてチェインメイルのみ注文しておく事とする。



 訓練場所


 騎士 第一広場


 ヒサト様 騎士、男性。

 タケシ様、勇者、男性。

 チハヤ様、黒騎士、男性。

 ユイ様、聖騎士、女性。



 戦士 第二広場


 ゴウシ様、戦士、男性

 シロウ様、魔法戦士、男性。

 アユミ様、戦士、女性。

 ショウタ様、戦士、男性。



 神官 教会前広場


 スミレ様、神官、女性。

 フミカ様、神官、女性。



 特殊技能者 東の森


 ハクト様、忍者、男性。

 ユミ様、狩人、女性。

 リンカ様、シーフ。女性。



 武闘家 武闘場


 カズキ様、武闘家、男性。

 ダイ様、武闘家。男性。



 魔術師 魔導練習場


 レイカ様。賢者、女性。

 ナオミ様、魔術師、女性。

 ガク様、召喚魔術師、男性





 作ってもらった普段着に着替えると、訓練場に移動する。ユイ曰く、お昼は、同じ訓練生同士で食べるみたいなことを言っていた。魔術師は、魔導練習場だ。確か、宮殿内の宮廷魔術師の仕事場の方だったはずだ。しかし、後輩のナオミちゃんは良いとして、ラフレシア、もとい、レイカ先輩はちょっと嫌だな。




 魔導練習場に到着すると、一人の男性が立っている。確か宮廷魔術師のアルカルジさんだ。



「えーと、君は?」


「召喚魔術師のダイです」


「そうか。召喚魔術師か。僕に教えられるかな?」


「えっ? どうしてですか?」


「召喚魔術師と、普通の魔法は、魔術の体系が違うんだよ」


 ん? これは逆にチャンスでは?


「そうなんですか? 残念です。あっそう言えば、召喚魔術師と言えば、俺たち異世界転移させたのって召喚魔術師さんですよね?

だったら、その召喚魔術師さん達の研究室で、召喚魔術の勉強出来ませんか?」


 アルカルジさんは、少し考えていたが、大きく頷くと。



「そうですね。それが良いかも知れません。冒険者カード貸してください」



 俺が冒険者カードを渡すと、アルカルジさんは、ペンをだしてなにやら、書き込む。


「これで、研究室入れるようになります。すみませんね。頑張ってください」





 研究室に向かう。冒険者カードをタッチすると、ロックが外れる音がする。開くと中は、図書館のようにたくさんの本が置かれ、中央のテーブルには、研究成果の研究書らしき物が置かれている。



 研究書を開く、少し読むがさっぱりわからない。やはり、召喚魔術についてわからないと無理なようだ。


 テーブルを離れ、書架を見てまわる。おっとこれが良いかな。「召喚魔術入門」と書かれた本を手に取ると、中央のテーブルに戻って広げる。なになに。



 召喚魔術とは、精霊、幻獣、魔獣、妖精、悪魔、死霊などを現界に召喚することにより、力を行使させる魔法。なるほど。



 本来は、現界に置いて力を具現化出来ないが、術士と契約することで、その力を発揮することができる。ふむふむ。



 召喚方法、精霊界、妖精界、幻界、魔界、霊界とゲートを繋ぎ召喚する。ゲートは、繋ぐ世界によって異なる。それぞれのゲートの形が書いてある。えーと、メモメモ。



 要するに、別々の世界に通路を繋げてこっちに来てもらうのが、召喚魔法ってことらしい。その時に、召喚魔術師が、使うのがゲート。絵を見ると、手のひらを突き出した先に魔法もののアニメとかである、魔方陣が空間に出現してそこから出てくるようだ。



 精霊界、魔界、幻界、妖精界、霊界は、ここ現界の周囲をまわっている衛星のようなもので、なので比較的容易にゲートを繋げることができる。ん? これは、異世界がゲート繋げるの難しい理由かな?



 召喚できるものに対する相性があり、それは、実際にゲートを作ってみることによりわかる。ゲートは、それぞれのゲートの形をイメージして、それが、手のひらの先に出現するイメージをすることによって、出現させることができる。慣れてきたら、イメージだけでコントロールできるようになりますが、なれるまでは、手のひらのイメージでやっていきましょう。なるほど。



 よし、実際にやってみようかな。相性があるのか、何が良いんだろ? 悪魔とか格好いい気がするけど、ちょっと怖い気も。えーと、ゲートの形を覚えていこう。魔界、霊界、幻界、妖精界、精霊界。よし、覚えた。



 まずは、悪魔試してみるか、魔界のゲートをイメージして、手のひらを出す。ん? 出ないぞ。えーと、イメージが悪かったかな?

もう一度イメージして、手のひらを出す。出来ない! とりあえず、他のゲートを試してみるか。



 次は、霊界をやってみるか。霊界のゲートをイメージして、手のひらを出す! ちっちゃ! それは、大きさ10cmほどのゲートだ。ちっちゃいけど、一応出来たから、さっきの魔界は相性極めて悪いんだろうな。ゲートを消す。



 次は、幻界にしよう。幻界のゲートをイメージを、手のひらを出す。おっ、これは結構良いんじゃないか? 50cmほどのゲートが出来る。ゲートを消して、次を試してみよう。



 今度は、妖精界だ。妖精界のゲートをイメージして、手のひらを出す。おお! さらに大きいぞ。80cm位だ。本に書いてあったゲートは、この位だったな。妖精界が、一番なのかな?



 最後は、精霊界だ。精霊界のゲートをイメージして、手のひらを出す。えええええ!

なんだこれは。でかすぎるだろ! 出てきたゲートは、自分の身長より、大きいぞ。2m位ある。まあ、これで決まりだ。一番相性良いのは精霊界か。



「召喚魔術基礎編」を今度は取り出し、精霊について調べる。風、火、土、水の四大精霊を中心に、氷、木、闇、光などの精霊があるのか。これにも相性があるようだ。これも、召喚してみないとわからないようだ。



 まだ、時間あるな。どっかで召喚魔術試してみるかな。最初に召喚出来るのは、最も相性の良い精霊だそうだ。さて、従者さんに聞いて、出かけよう。

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