第9話 白亜の宮殿から
砂岩で出来た、城壁をくぐり抜け、街に入る。街は結構な賑わいだ。あちこちに市場がたち、夕食の買い物だろう人々が集まっている。
平屋で大きくはないが、城壁と同じく砂岩で出来た、黄土色と言うのだろうか家々が続く。煙突からは、夕食の匂いだろうか良い香りがする。お腹すいた。
元の世界は、どうなっているんだろうか?
突然無くなった、武道場に大騒ぎなのだろうか? 親の顔が浮かぶ。心配しているかな? 友達は、先生は? やめておこう。これ以上考えると涙がでそうだ。
と、街を抜け海が見えてきた。そして、宮殿が近づいてきた。しかし、大きいな遠くからでも目立っていたが、中央の建物は7、8階建てのビル位あるだろうか? そこから、左右に3階建て位の建物が延び、そして、両端に6階建て位の建物が建っている。そして、大きい建物のてっぺんには、玉ねぎのような形をした屋根? がついている。
そして、宮殿の色、真っ白だ。何で出来てるんだ? 大理石とかか? 夕陽に照らされ、オレンジ色に輝く、その真っ白で、大きな宮殿に圧倒される。
馬車は、宮殿の玄関に到着する。大勢の従者が出迎えに出ている。
「おかえりなさいませ、ハンメリヒ様、ようこそおいでくださいました。勇者様方」
それぞれ、荷物らしい荷物ないが持って部屋へと案内してくれる。パーティーまでの、休める場所か? と思ったら、俺たちは、宮殿の中に滞在するらしい。
玄関を入り先へ進むと、中央の玉ねぎ状の屋根の下にきた。そこは吹き抜けになっていて、天井には、幾何学的な模様がモザイクタイルで、描かれている。そして、玄関も、廊下も凝った装飾が施され、かなり華美な感じだ。
「さすが、金持ち国」
馬車に乗ったメンバーで、部屋を割り振ったのか。自分たちは、小さな中庭を囲んだ6部屋になった。中庭には、水が張られ、中央には、噴水もある。
「暑い時には気持ちよさそうだな」
「岳先輩、本当に飛び込んだりしないでくださいよ」
フミカちゃんから、つっこみが入る。いくら俺でもそんなことしませんよ。たぶん、きっと。
入り口から向かって、右側が俺と、ダイとショウタ。左側が、ユイと、フミカちゃんと、リンカちゃん。
部屋に入る。内部は豪華ホテルの部屋って感じだ。ふかふかの絨毯に、大きな天蓋つきのベッド、そして、ソファーに書物机。ランプは、色んな色のガラスがはめられている。
俺は、ベッドに横になり、少し目を瞑る。
「トントン!」
部屋をノックする音で目を醒ます。少し寝てしまったようだ。慌ててドアに向かい開ける。
「失礼いたします。お風呂の用意ができました。どうぞ、ご案内致します」
部屋を出ると、ダイとショウタも待っていた。
「ごめん。俺寝てた。もしかして、待った?」
「いや、俺たちも同じくで。ノックで起こされたところだよ」
従者が先頭にたち。案内してくれる。風呂は、入り口と中庭はさんで、反対側にあった。中に入ると、
「こちらで、1時間ほど、お風呂入られるなり、休憩室で、お茶飲まれるなりでお待ちください。お着物回収させて頂き、洗濯いたします」
えっ、パンツとかもか、ちょっと恥ずかしいな。でも、ありがたい。
「よろしくお願いいたします」
体を洗い、風呂に入る。ふー。リラックスするな~。
「風呂上がりのビールとかないのかよ」
ダイが叫ぶ。
「だな。置いてあったのは、暖かいお茶だったし」
「おい、岳。ビール召喚とか出来ないのかよ?」
「できるわけないだろ。召喚のやり方も知らないのに」
「そうか。残念! ビール飲みて~!」
うるさいぞダイ。
風呂を上がり、お茶を飲みながら待つ、これはハーブティーと言うやつだな。
「お待たせしました」
従者さんが入ってくる。おー服が暖かい。綺麗になっているし、なんか良い香りもする。服を着ると、
「これから、主がお会いになられまして、その後すぐにパーティーになります。お部屋よられますか?」
「俺は、大丈夫です」
「俺も」
「直接で」
という訳で、謁見の間に向かう。
「わたしが、アラビム首長国首長の、ムスタフィじゃ、この度は、勇者様方にご迷惑をかけ、申し訳ない。何とぞ、我が国のこと、良しなにお頼み申し上げます」
すると、今度はハンメリヒさんが、
「皆様に、魔王をたおして頂くべく、サポートいたします。我が国の上級幹部を、ご紹介いたします。まずは、騎士団長…」
こうして、国の上級幹部とやらの紹介が始まった。話が長い。皆言っている事はだいたい一緒。勇者様方の、来訪感謝する、自分たちは、精一杯サポートする。そして、自分たちの指導方針等々、長い!
そして、関係なさそうな大臣達まで、挨拶している。自分は、力は持たないけど、自分の役職でサポートできることを話す。
ダイと二人、後ろで準備されている、料理や、飲み物を眺める。お腹すいた~。
「続きまして、戦士団長、ハインリヒ」
壇上に、ここの現地の人と明らかに異なる人種の金髪、碧眼の大男があがる。
「戦士団長、ハインリヒだ。俺は元冒険者だ。魔王の件、お前達だけに任せる気はない。ただ、冒険者として生き残るすべを教えてやる。以上だ」
と言って、壇上から下りると、さっさと、料理の並ぶ後方へ、移動しビールジョッキを手に取ると、樽を操作して、ビールを注ぎ、最後方のテーブルの椅子をひき、どかっと腰をおろす。よしっ。
自分も、列から離れると、ビールジョッキを手に取り、ビールを注ぐ、後ろには、ダイが続き、フミカちゃんが、おどおどしながらついてきた。後ろでは、ユイが凄い顔で睨んでいる。ショウタ、リンカちゃんは、離れるタイミングを逸したようだ。
自分は、ビールを手にハインリヒさんの横に腰かける。ダイも向かってくる。フミカちゃんは、どこで見つけてきたのか。グラスのワインらしき物を持っている。
「なんだ?」
ハインリヒさんが、声をかけてくる。
「ガクです」
「ダイです」
「フミカです」
「ん。ハインリヒだ」
「ハインリヒさん、教えて欲しいことあるんですが」
「俺は戦士だぞ。お前達の職業なんだ?」
「召喚魔術師です」
「武闘家です」
「神官です」
「なら、俺に聞くのは間違っているぞ」
「ではなくて、俺達が聞きたいのは、生き残るすべです。魔王を倒すことは正直興味ありません。無事に生き残って、帰れれば良いんです」
「ガハハハハ!」
ハインリヒさんが、豪快に笑う。振り返ると、今度はハンメリヒさんが、凄い顔で睨んでいる。自分と目が合うと、慌てて作り笑いを浮かべる。
「気に入った。正直だな。ガクって言ったか、俺でわかることなら、何でも聞いてやる」
「では、今日は一つだけ、職業について詳しくて、国の束縛を受けてない人っていますか?」
「うん? そうだな~。それだったら、アラビムの街の冒険者ギルドのギルドマスターだな。名前は、バルディアだ」
「会いに行けば会えます?」
「いや、奴も忙しいからな。冒険者カード持ってるか? 貸してみろ?」
俺は、冒険者カードを渡すと、ハインリヒさんに手渡す。ペンを取り出し、冒険者カードに書き込んでいく。何か書いているのか?
冒険者カード便利だな。
「ほら、紹介状書いておいたぞ、冒険者ギルドの受付で渡せば便宜はかってくれるだろう」
ハインリヒさんは、そう言って、冒険者カードを返してきた。
「ありがとうございます」
「また、何かあったら言えよ。それより、向こうも終わったみたいだぞ、あの凄い殺気だしているやつは、ガクの何かか?」
振り返ると、どこから取り出したのか、竹刀を片手に凄い形相でゆっくり歩いてくる、鬼神、もとい、ユイが見えた。
自分はゆっくり立ち上がると、脱兎の如く逃げ出した。
「待て! ガク!」
「大変だな。ガクの彼女か?」
「彼女は、わたしです!」
「そうか。ガハハハハ。もてる男は辛いな」
「ガクは、人を見る目あるし、人たらしだし。うらやましいよな~」
「見事、俺もたらされたってわけか」
「ここにいる全員ですよ」
見ると、ユイがぼっこぼっこにした、ガクを連れて会場に入ってきた。御愁傷様です。
「人の話はちゃんと最後まで、聞きなさいよね! 勝手に、お酒飲みはじめて、行儀悪い!」
わけのわからない理由で怒られた。やっぱり、ユイは絶対あれだ!
ユイに引きずられて会場まで戻る。石造りの床はひんやりして、気持ち良い。そして、よく滑る。ちゃんと話を聞いていた、ユイ曰く、何でも、午前中に服を用意してくれ、午後から訓練始まるそうだ。
パーティーが始まった。ピザのようなものや、牛肉、羊肉、鶏肉をスパイスつけて、焼いて串に刺したもの。タコ、イカ、エビ、白身魚のフライ、焼き野菜など。美味しい料理が並ぶ。すべてにちょっとピリ辛のスパイシーな香辛料がかかっていて、これが意外とはまる。お酒も、ビール、ワイン、果物で作った蒸留酒が並ぶ。
良かった、お酒の類いも元の世界と変わらないようだ。
しかし、いろいろな人が、寄ってきて鬱陶しい。勇者タケシ(笑)が中心だが、自分のところにも寄って来るのが、嫌だな。
先ほどまで、国のお偉いさん方が話していた壇上には、異国情緒溢れる音楽が流れ、ベリーダンサーのお姉さん方が、妖艶に踊る。
「良いぞ、姉ちゃん!」
あー、やめろカズキ、下品だぞ。
寄って来る方々の話を、適当に聞き流しつつ、大の言ったセリフを思い出す。そうだ。美味しい料理、そして、美味しいお酒飲んでゆっくり寝よう。
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