第8話 職業判明。召喚魔術師にして、忍者にして、武闘家。

 皆が、わらわらとハンメリヒの方へ向かう中、俺は、武道場の方へ下がり、壁を背に腰をおろした。史華ちゃん、大、凛花ちゃん、そして由依もついてきた。




「なんか大変なことになっちゃたな」


「そうだよな。俺たち帰れるのか? そう言えば、岳、こっちにも、猫みたいな店あるかな?」


「大、凄いな。大物だよ」


「でも、わたし達本当に、どうなるんですかね?」


 史華ちゃんが、不安そうに聞いてくる。


「帰る方法を探すさ。召喚魔術師達の研究書ってやつを徹底的に調べてさ」


「本当に、魔王倒したら、役目終わって元の世界に自動で帰れるとかになれば良いんだけど」


 由依が、呟く。


「だな」


 しかし、魔王倒すにしても、勇者が強くて魔王を倒せるって保証があれば良いけど。






 周囲を見回す。剣道部の井上兄弟や、合気道部の柿本、田城、春田が熱心にハンメリヒと話している。その後ろでは、茶木先輩が、自分のスマホとにらめっこしている。電波入っているのか?




 と、合気道部の1年、近藤翔太と目が合う、とこちらにゆっくり歩いてくる。



「先輩方も、興味ない感じですか?」



 どこか飄々として1年とは思えない男だ。よい意味で脱力系だ。


「翔太君も?」


 史華ちゃんが、聞き返すと、


「はい、ないですね」


 と言うと、自分達と並んで、壁を背に座りこむ。






 そして、職業診断が始まったようだ。




 柿本が、金属プレートを受け取り、春田に渡す。渡された春田は、えっという顔で、柿本を見る。


「先にお前やれ」


 ジャイアンかよお前は。



 春田は金属プレートを握ると、画面らしき所を眺める。こちらから見ても何も表示されない。


「戦士って書いてあります」



 すると、ハンメリヒは、冒険者カードとペンを手渡し。


「では、こちらに登録してください」


「えっと、名前は、ゴウシ、年齢19歳、職業戦士、男性と」




 続いて柿本が金属プレートを握る。


「よし、名前はカズキ、年齢21歳、職業武闘家、男性と」




 今度は井上兄弟が握る。


「ヒサト、年齢20歳、職業騎士、男性」


「ハクト、年齢19歳、忍者、男性」




 その後、田城が金属プレートを握る。すると、


「やった。僕が勇者だ!」


「そうですか。勇者様よろしくお願いいたします」


 ハンメリヒも、とても喜んでいる。


 田城が勇者か、確かに勇者っぽいな。



「えーっと、名前がタケシ、年齢20歳、職業勇者っと! 性別は男性」




 続いて、筧が受けとる。


「名前がシロウ、年齢20歳、職業、魔法戦士。男性」




 続いて、剣道部1年の鈴木千早が。


「僕はっと、名前がチハヤ、年齢19歳、職業、黒騎士。男性と」




 すると、スマホを諦めたラフレシアが、もとい、茶木先輩が、金属プレートを握る。



「田城君、勇者だから、わたしなんだろな?

えっと、賢者だって、賢者って何?」



 茶木先輩が、賢者? とても賢者には見えない。踊り子とか、娼婦とかなら合うけど。



「えーと、名前は、レイカ。年齢ヒミツ」


「ブーブー」


「ん? 何?」


 すると、ハンメリヒが、冷静に答える。


「エラーメッセージですね」


「えー。書かないとダメなの? じゃあ、年齢22歳。職業は賢者と。そして、女性です」




 そして、金属プレートを、合気道部1年女性に渡す。


「名前、ナオミ、年齢19歳、職業魔術師、性別は女性」


「わたしは、スミレ。年齢19歳で。職業は、えーと、神官で。性別は女性っと」




 続いて剣道部に渡される。長谷あゆみちゃん? が金属プレートを握る。


「アユミ、年齢20歳、職業戦士、女性」




 そして、1年生に渡される。確か名前は、田中優美、剣道初心者だけど頑張っているそうだ。


「えーと、ユミは、年齢19歳で~。職業は~。狩人。性別は~。女性」





 すると、立っているメンバー全員終わったのを確認して、ハンメリヒが金属プレートと、冒険者カード、ペンを持ってやってくる。




「すみません、皆様も職業診断の方。よろしくお願いいたします」


「おう」




 大が、受け取って金属プレートを見つめる。


「へ~。こんな感じで、文字出るんだ。えーと、武闘家だな」


「おっ、大にぴったりだな」


「だな」




 今度は、ハンメリヒが冒険者カードとペンを、大に渡す。


「続いて、こちらの記入をお願いいたします」


「おう。えっと、名前は、ダイ。年齢は21歳、職業は、武闘家。性別は男性っと」


「ほい、岳」


「いや、俺は最後でいいや」


「そうか。じゃ凛花ちゃん」


「はい」



 凛花ちゃんが、金属プレートを握る。


「わたしシーフです。盗賊か~。ちょっと嫌だな」



 そうかな? 結構凛花ちゃんはまっているかと思うけど。


「わたしは、リンカ。年齢20歳で、職業シーフ。女性っと」


「はい、史華」


「わたしですか?」


「そう」



 史華ちゃんがこちらをちらっと見る。金属プレートを握る。


「あっ出てきました。わたし、神官です」



 史華ちゃんは、冒険者カードを受け取り、


「フミカ。年齢は20歳で、職業神官で、性別は女性ですっと」


「次は由依先輩、よろしくお願いいたします」


「うん、えーと」



 由依は、金属プレートを握ると。


「おっ、聖騎士だって」



 今度は、冒険者カードに書き込む。


「えーと。ユイ。年齢は、21歳、そして、職業は、聖騎士、性別は女性」


「次は、翔太君だね。どうぞ」


「ありがとうございます。由依先輩」



 金属プレートを握る。


「俺は、戦士です」


「ショウタ、年齢19。職業は戦士、男性と」


「最後です。岳先輩、よろしくお願いいたします」


「うん」




 金属プレートを受け取り両端を握る。


 ん?何だこれは?職業って一つじゃないのか?

 画面には、召喚魔術師、忍者、武闘家と三つかかれている。これは、一番上のものを言えば良いのか?


「どうした?」


 動かなくなった、自分を不審に思ったのか、大が聞いてきた。


「大、職業って一つだよな?」


「そうだけど? 何かあるのか?」


「いいや、ありがとう」




 一番上の召喚魔術師と言っておこう。自分達を召喚した。召喚魔術師達の研究書を見るのも、都合が良いだろう。


「召喚魔術師だな」



 さて、冒険者カードを書こう。


「名前は、ガク、年齢は21歳、職業は、召喚魔術師で、性別は男性」


 これで良いな。






 全員のを、まとめると。


 ゴウシ、年齢19歳、戦士、男性

 カズキ、年齢21歳、武闘家、男性。

 ヒサト、年齢20歳、騎士、男性。

 ハクト、年齢19歳、忍者、男性。

 タケシ、年齢20歳、勇者、男性。

 シロウ、年齢20歳、魔法戦士、男性。

 チハヤ、年齢19歳、黒騎士、男性。

 レイカ、年齢22歳。賢者、女性。

 ナオミ、年齢19歳、魔術師、女性。

 スミレ、年齢19歳、神官、女性。

 アユミ、年齢20歳、戦士、女性。

 ユミ、年齢19歳、狩人、女性。

 ダイ。年齢21歳、武闘家。男性。

 リンカ、年齢20歳、シーフ。女性。

 フミカ、年齢20歳、神官、女性。

 ユイ、年齢21歳、聖騎士、女性。

 ショウタ、年齢19、戦士、男性。

 ガク、年齢は21歳、召喚魔術師、男性。




 計18人。男性10人で、女性8人。







 勇者田城じゃなかった、タケシの前には数名が集まって話が盛り上がっているようだ。


「凄いっすね。勇者か。いいな」


「魔王覚悟しろ、勇者タケシ様が、成敗してくれる! とか?」


「こういう時って、確かチートって言って、勇者が、魔王とかあっさり倒しちゃって、展開ですよね」


「俺たちもチートかな?」


「わたし賢者だよ~。で、賢者って何?」




「では、皆様登録終わりましたところで、我が国の宮殿にお連れいたします。首長も皆様の事をお待ちしております。夜はささやかですが、皆様の歓迎パーティーをしますので、楽しみにお待ちください。では、こちらへ」




「すみません、その前に着替えさせてもらって良いですか?」


 そうだった。自分たち道着のままだよ。男女順番に武道場の中で交替で、着替える。





「では、今度こそ、どうぞこちらへ」




 ハンメリヒに続いて少し歩くと、草原が切れ、土の露出した道が見えてきた。そこには、三台の馬車がとまっている。



「どうぞ、6名ずつに別れて乗ってください」





 馬車が動きだす。自分のまわりには、ダイに、フミカちゃんに、リンカちゃん、そして、ユイに、ショウタ。あえて聞こえるように独り言を言う。


「まずは、召喚魔術師達の研究書を読んで、帰る方法探さないとな。続いて、自分の能力を把握して、それにプラスして、訓練に実戦経験。生き残る為に強くならないといけないし」


 すると、ダイが。


「その前に俺は、美味しい料理いっぱい喰って、酒浴びるほど飲んで、ゆっくり寝たい!」


「だな」





 今日は、とてつもなく疲れた。まあ、当たり前か、異世界転移? なんてわけのわからないことが起こったのだから。



 しかし、今の状況もわけわからない。俺の右隣には、フミカちゃんが、自分に少し寄り添うように座っている。左側には、自分に密着するようにユイが座っている。あの~。馬車のスペース結構広いですけど。



 目の前には、ニヤニヤ笑う、ダイ。気持ち悪い。なんだこれは?





 遠くに、夕陽をバックに浮かびあがる、宮殿のシルエットが見えてきた。

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