第21話

21

電車で30分程、家から近くて前にシスターときたスーパーマーケットに到着。

「それで何を買うんだ?」正直買う食材を見ても料理初心者の自分には何を作るかわからないだろう。

「そうですね。ブロックの牛肉ですかね。」との事。

「ブロックに意味があるみたいだな。」と推理っぽく言うと「はい。ブロックじゃないといけないです。」と言われ俺は二人で生鮮食品のコーナーに向かう。

「どのくらいの大きさの予定なんだ?」「んー、今どのくらいお腹減ってますか?」

そうだな、お昼を食べてから4時間は経っている。ずーっと映画を見ていただけだが内容が内容だけに見るだけでかなりカロリーを使った気分だった。

「結構すいてるな。」俺がそう返答したら1番の顔がパッと輝いた。

「そ、そうですよね。男の子ですもんね沢山食べますよね!。」と言って俺の手から溢れる位の大きさのブロック肉をカゴに入れた。

「次は‥あのすみません。」急に1番が謝ってきた。「どうした?」何か問題発生かと思って慌てて聞く。

「4番君の家にはその‥どのくらい調味料がありますか?」調味料?何か特殊なスパイスでも使うのか?「あー、普通にあると思うぞ。色々。」正直家に何があるのか知らないが一般家庭で使う物はあるはずだ。

「そ、そうですよね。ごめんなさい変な事聞いて。大丈夫だと思います。」そう言って次は野菜コーナーに行ったがこれは普通の葉物野菜で特別な物ではなかった。

後、密閉できるビニール袋?みたいな物をカゴに入れた。何か保存するのか?

次にスパイスコーナーに行って何かのビンもカゴに入れた。

「これで全部か?」あまり数として入れていない。だから聞いたが、その時1番の足が止まった。

「あの‥この辺りにパン屋さんってありますか?」パン?そうだな。

「あるぞ。家の駅のすぐ近くに。でも急がないそろそろ売り切れるかもな。」

人気店なのか知らないけどあそこのパンは結構早く売り切れる。

「なら、これで終わりですね。急いで行きましょう。」急いでレジに向かい会見を済ませる。1番が出すと言ったが面倒なので昨日、電子通貨機能を持ったカードを駅で作っておいたのでそれで払う。「これでいい。急ぐぞ。」と言って駅に向かう。

と言ってもここから駅は目と鼻の先なので急ぎようがなかった。

電車に乗り目的地まで待っていると「重くないですか?持ちますか?」と1番が聞いてきたが「いや、大丈夫。それにこれから多分料理の大部分任せるんだからこれぐらいやらないと」と言って渡さなかった。そんな重くないし。

「は、はい!わかりました。任せてください!。」と自信がある返答だった。

家から最寄りの駅に着き、目当てのパン屋に行く。


「見つかりませんね‥。」やはり遅かったか、もう売り切れていた。

ここ以外と言うとあまり思いつかない、よく考えなくても俺は実家周辺すらまともに覚えていない。

「パンがいいんだよな?」1番がガッカリしているのでなんとか他の物を考えるが。

「いえ‥大丈夫です。すみません、私が最初に言っておけばよかったのに。」

作る物に相当な自信があったらしい、結構ショックを受けているみたいだ。

「お客様?何かお探しですか?」あまりにも悲しそうにしている1番を店員さんが心配そうに聞いてきた。「あ、あの。すみません。もうフランスパンってないです‥よね‥。」最後の望みをかけて1番が聞いてみると。「今出ている商品が最後かと‥。少々お待ち下さい。」そう言って店の奥に行ってしまった。

「他の‥パンとか米じゃ‥ダメだよな。ごめん。」自分で聞いといて失敗したとおもった。「いいえ、お米でも問題ありません。そうですね、今回は諦めますか‥。」

なんとか他のパン屋をスマホで調べるていると。

「あ、お客様。」そう言って店員さんが持ってきた物に俺たちは驚いた。

「申し訳ありません。こちら正確にはフランスパンではないのですが。」店員さんが持っているものは確かにイメージしているフランスパンより少し小さい。

「こちらで大丈夫でしょうか?」と聞いてきたが「あ、はい、大丈夫です。それを下さい。」と1番が言って買うことにした。

「良かった、少し違うけど。それっぽいものがあったな。」

「はい。これで準備は出来ました。」と言いあってレジでパンを購入する。

「どうぞ。こちらです」店員さんが丁寧に紙袋に入れてくれた、今度ここで何かもっと買わないとな。

それからは二人で家に向かって歩いていた。

「今は‥もうすぐ5時か。」1番曰く4番の家にいるなら長く外にいてもいいと言われたらしいから、準備や夕食はゆっくり出来るみたいだ。

「調理にどのくらいかかるんだ?」そもそも未だに何を作るか俺は聞いていなかった。だがなんとなくだがわかってきた。

「そうですね‥。少し時間がかかりますよ。ただ‥。」1番が聞いて欲しそうに区切る。

「ん、どうした?」このやり取りも慣れてきた。

「いいえ、なんでもありません。それが聞きたかっただけです。」

そう言いながら1番は笑いかけてくれた。暗くなってきたので顔に影がかかっているが街灯に当たった1番の顔は少しミステリアスに見えた。

「‥そうか。これからも聞き続けないとな。」

「あ‥、ありがとうございます。これからも聞き続けてくれたら‥嬉しいです。」

今日一緒にいて少し大人っぽく1番を沢山見れたがやっぱりこの1番も可愛いかった。


もうすぐ家に着くのでパン屋の時にシスターへ連絡を入れたが、なかなかシスターからの返事がない。

おかしい、シスターには言っておいた筈だ。もしかして寝ている?あり得るけど‥。

「あ、電話ですか?」着信が届いたシスターからだ。

「ああ、みたいだな。ごめんちょっと待ってて。」

そう言って少し1番から離れた場所に行く。

「シスター?もしもし?」「あー4番?。」良かった。何かあったのかと思った。

「今から帰るから‥その‥。」上に行って出てくるな。どう言い繕ってもそういう事になるが。「わかってる。上にいろって言うんでしょ。でも大丈夫。」

「大丈夫?何でだ?」

「今2番さんの家にいるから。」‥え?、2番の‥家?なぜ、どうなっている?

「えーと、それは‥。」どう聞こうか困った。朝に連絡先は渡した。その時に家に行く話になったのか?

「別に2番さんから怒られてるとかじゃないから。直接話す事になっただけ。」

「そ、そうなのか。だったら、大丈夫そうだな。」女の子同士で何か話したい事があったのだろう。1番も待たせてるしここまでにしよう。

「わかった。じゃあ後で。」「ええ、また後で。」そう言って電話を切り上げた。

「悪い、待たせたな。」1番に駆け寄りながら謝る。

「いいえ、待ってませんよ。」笑いながら許してくれる。優しくて可愛い。

「じゃあ行くか。と言ってももうすぐ近くだけどな。」

もう歩いて五分もかからない。早く行こう。

「そ、そうですか。はい、もうすぐ‥。」落ち着かないのか、1番はそわそわしている。もしかしたら人の家に行くのも始めてか?


家について鍵を開けて1番を迎え入れたら、「お、お邪魔します!」と無人の家に言う。俺に言ったのかもしれないけど、確実に家の玄関に向かって言った。

「ほら、上がって。リビングはこっちな。」なかなか玄関から上がらない1番を急かして、背中を押してリビングに連れて行く。早く食材を冷蔵庫に入れたいし。

「こ、こここ、が4番君の、家でしか!?」急に不思議な言葉になったな。

「そうだな。まぁと言っても、最近は家で過ごしてる時間より学校の方が長いけどな」1番にとってもそうだろうが。

「あ、そうですね。私も似た感じです。ふふ、同じですね。」

少し恥ずかしそうに笑う1番がそう言ってくる。

「やっぱり、可愛いな。」もう今日で何度目かの感想だった。俺も語彙力がないな。

「あ、えっと。そ、それは‥。ありがとう‥ございます‥。」絶対に言われ慣れているのにこの反応、どうにも1番は自己評価が低いようだ。

「え、と。キッチン!早く夕飯の準備しましょう。」そう言いながら俺を急かしてきた。「そうだな、キッチンはこっちな。」リビング隣のキッチンに連れて行く。

食材を机の上に乗せていると。1番がまたそわそわしている。

「あー、別に冷蔵庫とか。勝手に使っていいぞ。親には言ってるし。」

好きに動いていいと1番に言う。

「は、はい。では、そのお塩やコショウはどこですか?」と聞いてきたので、調味料が置いてある戸棚を開ける。「あ、ほんとだ。色々ありますね‥。」と言いながら何かしらの香辛料と思わしき物を手に取る。

「あ、あの。これを使ってもいいですか?」そう言って黒コショウ?みたいな物を見せてくる。「いいと思うぞ。」メールでだが母に調味料を使っていいかと聞いたら、なぜか使う相手を聞かれて隠す事でもないので話すと、好きに使っていいと言われた。

「じゃ、じゃあ使わせていただきます。で、でも、沢山使う訳じゃないですから!」

と少し前の1番を思い出す話し方をする。

「ああ、わかった。任せるよ。」正直スパイスの適量とか知らないし。

そして1番は調理に入った。他人のキッチンに慣れないのか少しおっかなびっくりだ。

まず牛肉をキッチンペーパーで拭いて、さっきの黒コショウをまぶして手で揉み始めた。何が出来るか何となくわかってきた。

「俺はパンとか切っといた方がいい?」ただ1番の調理を見ていては申し訳ない。

自分でも出来る事を聞くと。

「えーと、そうですね。お願いします。後は‥、時間があれば野菜をちぎっておいて下さい。」と、俺のような料理初心者でも出来る事をお願いしてきた。

「わかった。やっておくよ。」

本当は1番の調理を見ておきたいけど、1番が俺の視線が気になるのか少し恥ずかしそうなのでキッチンから離れてリビングで準備をする。

「もう終わったな‥。」当然のごとく十分もいらない。ちぎった野菜は冷蔵庫に入れた。

「他に‥いや、やめとくか‥。」1番があれだけ期待してくれと言ってるんだ。これ以上話かけるのはやめておこう。

ジュー‥。キッチンからブロック肉を焼いている音がする。

コショウとオリーブ油の匂いもそして買ったスパイスの香りもする。もうそれだけでパンが何個も食べれそうだ。

「‥‥。」キッチンの様子を見に行きたい。あわよくばつまみ食いなど‥やめておこう、1番に怒られそうだ。怒ってる1番も見てみたいけど。

「あ、あの4番君‥。」1番から呼ばれた、だけどその声はひどく弱々しく聞こえ、

「どうした‥!何かあったか?」急いでキッチンに振り返ると1番がボトルを持って立っている。

「あの、その‥これ。」駆け寄ってくる1番からボトルを受け取ると赤ワイン(調理)と書いてあった。

「これ、使いたいのか?」「はい‥。」律儀だな、何でも使っていいと言ったのに。

「いいぞ、使っても。これがあった方がいいんだよな。」どうせ使っても怒られるないだろう。そう思いながら1番にボトルを返す。

「あ、!ありがとうございます!大丈夫です。ちゃんと調理の行程でアルコールは飛ばしますので!」余程嬉しかったのか俺からの許可を取るとキッチンに戻って早速使ったらしく、少し甘くてクラっと来そうな匂いが漂ってくる。

「♪〜♫‥。♩〜♩。」

上手くいっているのか1番が上機嫌に鼻歌を歌っている。音楽が好きなだけあってか、鼻歌だけでもかなり上手い。何の曲か知らないけど。

調理に時間がかかる。どのくらいかかるかわからないけど、恐らくは1時間は必要だろう。あの大きさの肉だ、焼くにしても中まで火を通すのに手間がいるだろう。

「4番君、アルミホイルってどこかにありますか?」1番がキッチンから聞いてき、アルミホイルか‥。確か、えーと。

「コンロの上の棚にないか?もしくは、」言いながらキッチンに入る。

そこにはフライパンの上でいい色になっているブロック肉がある。

「わかりました。えっと‥あ、ありました。ありがとうございます。」

1番がアルミホイルを出してそれを手にしてニコニコしている。1番の料理がわかった気がする。あのアルミホイルで肉を包んで余熱で中まで熱を通すのだろう。

「‥ローストビーフか?」俺の(今更な)推理を1番に投げかけみる。「ふふ、正解です。」1番からの返答に心の中でガッツポーズ。

「久しぶりに食べるかもな、1番の得意料理なのか?」

いい匂いだ、そして1番は意外と力持ちらしい。あのブロック肉を切らずにそのままトングでひっくり返している。

「はい、昔から休みの日に作っているんですよ。」

1番の自信を持って期待してくれと言っていたのがよくわかる、レシピを見ずにこれだけの調理が出来るのだ、本当に何度も作っているのだろう。

「じゃあ、アルミホイルを広げるか。包むん‥だよな?」

「その通りです。もしかして作っている時を見た事あるんですか?」

昔、母が作っているのを見た事がある。それになんとなくブロック肉でいくらのメニューに絞れていた。

「ああ、そんな所。もう広げる?」「はい、お願いします。結構大きく広げて下さいね、思ったより大きいので。」

言われた通りにかなり大きく広げる、その上に1番がブロック肉を乗せて手早く包んでいく。

「後は、この状態で20分程置いときます。」

後20分‥。長いな。そう思った俺の思考がわかったのか、1番が「ダメですよ、まだ中まで火が通ってないんですからね。」微笑みながら先手を打ってくる。

「わかったよ。もう少し我慢するか。」「はい、我慢して下さい。」

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