第11話

11

「それで?なんで皆んな貴方を探してるの?」

未だに下では俺を探し回っているようで、声がまだ聞こえてくる。

もしここで、どっちと付き合ってるのか、聞かれ、誤魔化して逃げたっと言ったら、2番は怒るだろうか。

別に隠してるわけじゃないが、もしこれでまた勘違いが始まり5番の様なことがおこる可能性もあるのではと考えていた。

「んぐ。」

「何を隠してるのかなー。」

2番が俺の鼻を引っ張り始めた、痛い。

「正直に言った方が身のためよー。」

次は頬を引っ張り始めた、そこを引っ張ると喋り難いのだが。

2番が俺をいじるのが楽しくなってきたみたいで、だんだん目の色が変わってくる、

目的と手段が入れ替わったみたいだ。

もし正直に言って、2番が悲しんだら俺はもう死ぬしか、いや死ぬよりつらい。

「これでも言わないのね、じゃあ‥、言ってくれたら、一年前倒しでしてあげる。」

「まず最初に、‥‥」

喋ってしまった、2番の言葉巧みな交渉術で、洗いざらい2番に話してしまった。

「そう、逃げたんだ。」

「ごめん‥、2番がそれで何かあったら、嫌だったんだ。」

正直に話した、何かの勘違いで2番が俺みたいな目に遭ったら俺は耐えられないと。

「そう、そうなのね。」

いつ怒られるか2番の膝の上でビクビクしている俺を2番が撫でてくれる。

「ありがとう、気を使ってくれて。そうね、この学校では特に言えないことね。」

「怒ってない?」

「うん、貴方のそういう所も私は好きだから、私以外だと怒っちゃうかもしれないわね。」

だめだ、2番とまた離れられない理由が出来てしまった。

「じゃあ、座って。ご褒美あげる。」

遂にか、ついなのか、この時がきた。

俺は名残惜しいが2番の足から頭を上げて、座りなおす。

「私も初めてだから、許してね。」

悩殺、その文字がはっきりと頭に浮かんだ。

だめだ2番、その表情は俺だけにやってくれ絶対に勘違いをする奴が生まれる。

「じゃあ、目を閉じて。」

頬を染めた想い人がそう言ってくる、もう耐えられない。

もう何度もしてきたが、今回のは違う。


「これでまた初めてを貴方にあげれたのね。」

この色っぽい2番が愛おしくて仕方がない、なぜこの人はこうも俺を夢中にさせるのか、好きで好きでたまらない。

「俺も2番としたかった。」

まだ、2番のが残ってる気がする。

「じゃあ、下に行きましょうか、もう皆んな大人しくなったるみたいだし。」

さっきから聴こえていた声がもう聞こえない、確かにもう大丈夫そうだ。

「どうする?手を繋いで行く?」

いたずらっ子の表情で言ってくる、当然頷いた。2番とベンチから立って二人で並び手を繋ぐ。

「やっぱり貴方の手結構熱いのね。」

もう何度かしてる筈なのに心臓がうるさくなってしまいまだ慣れない、いやこれから何度してもこの高鳴りは止まらないかもしれない。

「これで皆んなの前まで行っちゃう?」

この手を繋ぐ時間を本当はずっと続けたい、周りに誰がいようと続けたいがやはり恥ずかしい。

「‥いや、途中までにしよう、人前ではまだちょっと。」

自分でもわかるぐらい顔が赤くて熱い。

「ふふっ。」手を通して恥ずかしいと思っている事が完全にバレたようだ。

それにするなら、ここよりももっと相応しい時間がある。

「今度の春休みにしよう。」

「そうね、そうしましょう。私も待ってるから。」

そして2番との手繋ぎは一階に続く階段までにした。

だが、見落としがあった。

二人で上から降りてくれば何かあったと、思うのは当然だった。

この学校ではそういうのはやはり珍しいのだろう、降りて行ったら、男共に追いかけ回され、2番は女子からの質問責めだった。


「‥疲れた、まだ眠い。」

「そうだろうね、結局お開きになるまで逃げ回って、質問責めだものね。」

「お前は友達だと思ってたのに‥。」

「2番さんと4番君が‥ダメだ、想像できない。」

昨日は夜の7時まで男共から逃げて、質問責めであったが、当然何を上でしていたか話さないでいた。

「ていうか、何でお前たちまで知ってるんだよ。」

「そりゃ、お前こんな話一晩経てば学年中に広まるのは当然だろう。」

誰だ広めた奴、ただじゃおかない。

「これで、しばらく俺は周りからいじられるのか‥はぁー。」

「で、でも、良かったじゃん。もう今日で学校は終わりで後少しで迎えが来るんでしょ。」

俺も少し前に知ったが秘書さんが迎えに来るらしい、断ろうと思ったが折角来てもらえるという事なのでお願いすることになった。

それに、まだあの時間があるかもしれないし、公共の移動手段で何かあったら危険なので、秘書さんに頼ることにした。

「そうだな‥。そっちはどうするんだ?」

「僕は迎えだけど、お昼頃だからそれまで委員の皆んなと話してるよ。」

「僕は部活の皆んなと、今日帰る前に博物館に行って来る予定だよ。」

「俺はもうすぐ部活の時間だ、くそ、つらい。」

実の所この中で1番友達が少ないのは俺になったみたいだが、考えない事にする。

「‥お前ほんとにそれだけか?」

6番が俺の荷物を見てそう言って来る。

「ああ、前の時に俺も気になって整理したがこんなもんだったな。」

服はワイシャツとジャージ、後は教科書・ノート・筆記用具それだけだった。

「でも、教科書とか持って帰るから大分多いな。」

どうせ2週間程だが、急に教科書を見て確認したくなる時がある為。

「で、お前たちはどのくらいあるんだ?」

「‥‥‥。」

「もしかして、郵送か?」

「もう使わない一年の教科とか送るんだよ!それぐらい普通だろ!」

「そうそう!もう入らないシャツとかまとめると凄いんだよ!」

「人それぞれ、生活に必要なものがあるんだよ。ドライヤーとかね」

こいつら、そういえば度々郵送で何か寮に届いていたが、流石に寮も届けられたものを勝手に開けられない。もしかしたら俺は知らなかっただけで、ルール違反が野放しになっていたのかもしれないな。

「でも、一年の教科書なんて前に持って帰ればよかったし、もう着れないシャツがあるなら捨てればいいだろ、あとお前毎回ドライヤーは備え付けのを使ってるだろ。」

「‥お前、彼女はいても、友達少ないだろ‥。」

プツン‥

くそ!気にしてる事を!

「よし、お前らの荷物まだここにあるんだろう。お前らの荷物整理手伝ってやる。」

その後、3人の部屋の前にある荷物に突撃する俺を3人が止め、喧嘩に近い状態になった。

やるじゃないか、アイツら、初めての友人達との喧嘩は三対一でキツイものだった。


「私は安心しました。もしかして4番様には同性の友人がいないのではと心配していましので。」

「‥それは、心配しなくても大丈夫ですよ。」

今、俺は秘書さんの運転する車に乗っている。

「そうですね。しかし、あそこまで堂々と喧嘩をするのはいただけません。私にはわかりませんが男子同士で喧嘩は必要なことかもしれませんが、」

「あー、はい。わかりました今度は気をつけて解決します。」

今回の事は俺に非はないと思っているため、話半分で聞いている。

「男の子同士でしかわからない事があるみたいだけど、流石に四人での喧嘩はやりすぎじゃない?」

「そうです!また入院したらどうするんですか。」

二人にも怒られる。

「わかったよ、殴り合いの喧嘩にならないようにするよ。」

寮で3人と喧嘩をして周りが煽ったり止めたりする中、秘書さんと2番と1番が寮に迎えに来た。

普段は女子が寮に来ないものだから騒ついたが、うちの秘書さんと2番だとわかったら静かになったが、視線が痛かった。というか完全に殺意があった。

今回の車も、6人席の大きい車だった。

運転を秘書さん、助手席に俺、後ろにそれぞれ1番・2番、更に後ろに荷物。

俺を迎えに来たのに、俺が助手席ってどういうことだ?まぁいいけど。

そして、俺は知らなかったが、2番と1番にはもう1週間近く前から迎えを知っていたらしい。

むしろなぜ、俺は昨日まで知らなかったのか3人に不思議がられた、誰にも言われなかったからだけどな。

「4番様、貴方に言っておく事があります。」

なんだ?また怒られるのか。

「4番様が受験で受けたテストは、本来の難易度ではないそうです。」

「え?」

「お父様が貴方に諦めさせる為に作ったテストらしく、学校側がこのテストでこの点数が取れるなんて、貴方のお子様は素晴らしいと仰っていましたよ。」

おかしいと思ったんだ!あのレベルのテストを実施するなら大半落ちるだろうと思ったんだ!親父の野郎にはいつかお見舞いをすると決めた。

「2番の家は知ってたけど、1番の家も近いんだな。」

どうにかイライラを落ち着ける為に1番に話を振る。

「はい、徒歩では難しいですけど、車なら30分ぐらいです。」

ちなみに2番の家にも車で30分ぐらいだ。

「なら、これから家まで直行ですか?」

俺が気軽に秘書さんに聞いてみる。

「まさか、そんな事思っていたのですか?」

え?違うの。

「思ったより、貴方は抜けてるみたいね。」

「がっかりです、折角四人で集まったのに。」

なぜだろう、女性陣(俺以外の全員)が俺に非難をなげかけてくる。

「これから、4番様の服を探しに行きます。病院で話したはずです。」

そういえば病院着を探す時に言っていたな。

面倒だからネットでそれなりの物を買うつもりだった。

「もしや、ネット通販で買おうと思っていたのですか?」

ギロリ、2番と1番の視線が座席を貫通してくる。

「い、いや、休みの間に3人を誘って行こうと思ってたよ。」

「それならいいでしょう。」

良かった、なんとか回避出来た。

「しかし、その探しに行く時の服はどうするおつもりでしたか。私も都合良く休めるわけでもありませんし。」

「それに、そう言って誘うなら一人だけしか誘えないわね。」

「もしかして、最悪制服で誘うつもりだったんですか?」

「‥‥。」

苦しい、胃が痛い、咳でもしようものなら血も出てきそうだ。

「あなたには、もう少し大人になってもらわないとね。」

2番の呆れたような声が聞こえる。

「‥はい。」

その声に俺はただ頷く事しか出来なかった。


「もう、無理だ。立てない。」

久しぶりに実家のリビングのソファーに寝転ぶ。

「お疲れ様です、弱音も出さずよく耐えましたね。忍耐力も人生に必要な事です。」

今の秘書さんは、スーツから着替えてカジュアルな服装でになっている。

そんな秘書さんが真顔で褒めてくれたが、あなたのせいでもあるんですよ。

「一説には女性の買い物に男性が付き合うと、暴徒を鎮圧するぐらいのストレスがかかるらしいですよ。」

それは慰めのつもりなのか。

「でも、今日もお世話になりました。また助けてもらいましたね。」

「いいえ、私も楽しかったです。では。」

「え?もう行くんですか?」

「いいえ、ご両親に電話をしてきます。」

そう言うと秘書さんは、玄関から外に出てる。両親に連絡するようだ。

今日の事を思い浮かべるだけで、疲れてしまった。

「なんでもいいって言わない。」

「でも俺には差がわから」

「わからないって、言わないでください。」

「よし、じゃあこういうのは」

「適当に選びましたね、本当に見て取りましたか?」

買い物は正しく戦争だった、俺には同じに見える物が3人には違って見えたらしい。

帰り道、自分は制服のままだが、3人は着替えていた。

3人の私服は珍しくて新鮮でそれがこの戦いの報酬の一つだった。

「‥もう無理だ、疲れた。」

これはこれで良かったかもしれない、もし三人がそれぞれ別々に今日のような事があったら俺の胃に穴が開いたかもしれない。

二人の家に先に向かって送り、最後に家に帰ってきた。

「とりあえず、着替えるか。」

三人に選んでもらった物はまだ着ない、今日かなり汗をかいたので着てはいけない。

よって、制服を脱ぎ、自分の部屋にあるジーンズを履いて、シャツはそのままにする。

着替えて、リビングに戻ったら丁度秘書さんもリビングに入って来た。

「部屋に戻ってらしたのですね。あの服に着替えなくてもいいのですか?」

「今、汗かいてるので、その服を汚したくなくて。」

「そうですか。」短く秘書さんが笑ってくれた。

「先程、社長と奥様に連絡しました。私は今日4番様と家に待機する事になりました。今日はお世話をさせていただきます。」

良かった、本当は一人で少し不安だった。

「いいんですか。これ秘書の仕事じゃないのでは。」

「私では不満ですか?」

「そんな事ありません、嬉しいです。」

少し必死に言ってしまった。

秘書さんはそれが楽しいのか口を隠して笑っている。

「では、とりあえずお風呂の準備をしてきて下さい。奥様から甘やかすなと言われております。」

「わかりました。風呂の準備をしてきます。」

親父の趣味で風呂はゆっくり、足を伸ばせる広い湯船だ。スポンジで擦り洗う、そして流して風呂の電源を押す。簡単な作業だが、思ったより蒸した。

リビングを見たがいないので探すと秘書さんはキッチンにいた。

「準備できました。」

「はい、でも食事の準備が出来てないので、先にお風呂に入って来てください。」

もともと、世話をするように言われてたのか、秘書さんが料理をしている。

「‥はい、入ってきます。」

「はい、ごゆっくり。」

家族以外の女性と二人だけの家、ドキドキしてる自分がいた。


「ふー、一人風呂いいな。」

寮では、大人数で入っていたので一人でゆっくり入るのはなかなか良い。

今日の買い物が思ったより効いていたのか、少し眠い。

「ダメだ、眠い。頭でも洗うか。」

湯船を出てシャワーを頭に当てる。

買い物が終わった時に二人と出かける日時をもう決めた。

2番は6日後、1番は4日後。

プランも何もないが何か考えておかないとお仕置きと2番に言われた、2番からのお仕置きそれはそれで興味があるが少し怖い。

「科学部みたいに博物館も悪くないな。3番みたいに音楽もいいな。」

誰かと二人で歩くなど今まで考えた事もなかったので、色々迷っていた。

ガラガラガラ、「え?」頭を洗っている時に後ろの扉が開いた。

「失礼します。」秘書さんの声だった。ていうか普通言ってから入るのでは!?

「え?ちょっと待って?!」急いで泡を落として後ろを向くと、競泳水着のようなものを着ている秘書さんだった。

やはり、大人の体つきで、胸があの二人より突き出ていて、腰から下の臀部が丸く美しかった。

「な、なな、!」

驚きすぎて、声が出ないし、何より秘書さんに見惚れていた。

急いで下を隠すため背を向けるが完全に見られた。

「良かったら、背中を流そうかと思いまして。」

「は!はい!お願いします!」

断ればよかったものを、お願いするなんて、自分で言ってて動揺してしまった。

「はい、ではそのまま。」

秘書さんが、屈んで背中を洗ってくれる、すごく気持ちいい。

「中学三年ですか。それにしては背中が大きく見えますね。」

笑いながら言ってくれる、でもそんなことより二人で風呂場にいるという状況が、頭を沸騰させていた。

「あ、あの。なんで?」

「背中ですか、これも私の役目です。」

秘書ってこんな事もするのか、違うと思うが、今はどうでもいい。

まずい、気絶しそうだ。頭がふらふらしてくる、血のめぐりも早い。

「も、もう大丈夫です、後は自分で出来ます。」

「ふふっそうですか。では、あまり長くならないように。」

ガラガラガラ、秘書さんが出て行くのを聞いて、急いで湯船に浸かる。

秘書さんは特段気にした様子もなく背中を流してくれた、焦っているのは俺だけだった。

「‥あれが大人か、二人も将来ああなるんだろうな。」

あの姿はあまりにも刺激的で、しばらく頭から消えそうになかった。


秘書さんと顔を合わせにくいが、長居をしないように言われたので思いきって出ることにした。

「出ましたね。食事の準備が出来たので食器を出してください。」

脱衣所から出てキッチンに向かったら、廊下で秘書さんと会い、そう言われた、

「は、はい、わかりました。」

「では、お願いしますね。」

さっきの事を思い出し顔を見れないでいると、それが面白いのか、顔を覗きこんで言ってくる。

自分でもわかるぐらい、顔が熱い。

何か悪いことをしたわけでもないのに、秘書さんの挙動一つ一つにビビっていた。

食器の場所をなんとか思い出し、二人分の食器を用意する。

「いいのですか?同じ机で食事をしても。」

「両親に何か言われたんですか?俺は大丈夫です。」

秘書さんは少し申し訳なさそうに言ってくるが、構わないと思っていた。

「では失礼しますね。」

「‥なんで、そんなに遠くに座るんですか?」

一緒に着いている机は、長方形だ。

俺は長辺の真ん中に座っているが、秘書さんは端っこに座っている。

「いえ、ここで大丈夫です。」

「別に俺は平気ですよ、秘書さんにお世話になってますし。」

秘書というだけで、そこまで畏れたくなかった。

「まぁ、4番様は意地悪ですね、大人をからかうなんて。」

そう言と、秘書さんが隣に座ってきた。

「それとも、こういうのが好きなんですか?もしかして、お二人にもそうやってるのですか?」

秘書さんの言ってる事が最初はよく分からなかったが、すぐにわかった。

こ、この香りは、秘書さんの!

当然といえば当然だ、さっき背中を流してもらった時に秘書さんはシャワーも浴びずに出ていったのだ。

秘書さんの汗の匂いがする、これが大人の女の人の香りなのか。

「っ!」

「ふふっ、そんなに嗅がれると流石に恥ずかしいですね。」

顔を軽く染めて恥ずかしいそうに言ってくる。

何を血迷ったか、我慢するはずが思いっきり吸いでしまった。

頭がクラクラする、なんで女性はみんなこんなにも良い匂いがするのか、ダメだ我慢なんて出来ない。

「では、冷える前に食べますか。」

「はい‥。」

秘書さんの手料理を食べながら秘書さんの匂いを嗅ぐ、もう意識を保つのに精一杯。

「学校ではどうですか?」

「はい‥、学校では‥。」

まるで尋問だった、秘書さんからの質問に何も考えずに話してしまう。だけど、この感覚は気持ちよくて、逃れられない。

「そうですか、2番様と1番様にそんな事を。」

秘書さんが頭を動かすたびに髪の匂いと汗の匂いがする。

味も間違いなく美味しい、ずっと食べていられる程、そしてこの秘書さんの香りと一緒に吸い込む時の甘みが癖になって止まらない。

「どうですか?お口に合いますか。」

美味しいに決まってる、そう言うつもりだったが。

「はい、美味し」

これは偶然か秘書さんの息を飲みこんでしまった。

まずい、意識がもう。

クラクラしているのにわかったのか秘書さんが笑う。

「ふふ、ではこちらに。」

秘書さんに頭を抱えてもらう、二人みたいに。

抵抗できない、このままここで眠りたい。

直接、秘書さんの匂いを嗅いでしまい、もう何も考えられない。

「こんなに甘えて、4番様は私と何がしたいのですか?」

秘書さんの甘い声が聞こえる。

「かわいいですよ4番様、2番様が何度もするのがわかります。」

2番‥。そうだ2番と行く所を考えないと!

なんとか意識を取り戻し秘書さんから離れる。

そして急いで料理を食べきる。

「ご、ご馳走様です!」

「まぁ、ふふっお粗末様です。」

秘書さんも俺で遊んで楽しかったようで、嬉しそうに言ってくる。

「後片付けはしておきます。お二人との予定を考えて下さいね。」

急いで部屋に逃げる、危なかった、あの秘書さんはただただ危険だ。


部屋に着くとベッドに寝転がりスマホをつける。

まだ秘書さんの匂いが体中についている気がするが、無視できる範囲だ。

なんとか頭を振って目的に集中する。

「1番とは後今日入れて4日しか無いんだ。今日にでも考えて明日、直接見て来ないとな。」

自分の真面目さが嫌になる、直接行かなくていいのではないかとも思ってるが、2人にあきれられたくないという感情が優っていた。

「1番と行く所を考えないと、でもまず2番の趣味は確か‥。」

買い物が終わりぐったりしてる俺を尻目に三人が何か話していたのを覚えている。

「そうですか、2番様は絵をお描きに。」

「はい、でも趣味のものなので、お見せできる程のものではないです。」

「そんな事ないんですよ、2番の描いた絵が‥」っと言っていた。

なら、2番と行く所は美術館って所か。

「結構多いな。へぇ、こういう絵があるのか。」

もうすぐ四月、春は何かとイベントが多く、美術館の多くが何かしらの催しをやっていた。

美術館の一つにイルカと海の絵が有名な画家の展覧会をやっているらしい。

「いや、2番にはこっちかな。」

美しい青を使った有名な画家の展示会もやっていた。

2番の絵を見たことがないが、恐らく水彩画か油絵だろう、流石にタブレットとかじゃないはずだ。

「よし、チケットを予約するか。」

混んでいるかもだが、ホームページによればチケットは日にちによって、枚数が決まっているらしいのでそこまでじゃないだろう。

でも、少し安直すぎないか。もしかしたら2番はもう行くつもりだったかもしれない。

そう思うと、ここでいいのかと考えてしまう。

「次は、1番か。」

1番は確か。

「そういえば1番、この前部屋に行った時聞いてた曲、ヘッドホンから音漏れがしてたわね。気をつけないと没収されるわよ。」

「え?‥あれはその、勉強中に聞きたくて‥あの‥」

「大丈夫ですよ、1番様。私は寮のルールを知らないので、気にされなくても。それに乙女に秘密があるのは当然です。」

「違うんです!あれは、違反した物とかじゃ!」

んー、1番が意地悪されていた気がするが。今は考えない。

「1番は音楽か、でもなんの曲かわからないな。」

イメージではクラシックだが、J-POP・K-POP、メタルなども可能性としてはある。

それにライブに俺は行ったこともない。

スタジオによっては年齢制限がある、もし1番がそういった曲が好きな場合はせいぜいCDショップが良いところになってしまう。

まずいどうしたものか、2番に聞くか?でもそれは最終手段だろう。

「仕方ない、聞くしかないか!」

急いでリビングに戻る。

「秘書さん!」

「どうしましたか?また甘えますか?」

片ずけが終わったらしい秘書さんが、リビングでノートパソコンを打っている。

「それは‥。また、今度‥。」

「わかりました。今度ですね。」

楽しそうに言ってくる、あれが余裕ってやつか。

「いや。そうじゃなくて、1番の聞いてた曲ってわかりますか?」

「1番様のですか?直接聞いた訳ではないので確証はありませんよ。」

「はい、構いません。何か言ってませんでしたか。」

「んー、そうですね。恐らくはクラシックですね。ピアノについて話しましたので。」

そうか。ならどうしたものか、クラシック音楽は場合によってはドレスコードがある。

せっかく選んでくれたんだ、あの服を着て一緒に出かけたい。

「何か、困りごとですね。」

「はい、俺は想像以上にこういうのが苦手みたいで。」

俺は2番と1番の事を本当はよく知らないのかもしれない。

「そうですか、ならもっと悩んでください。相手の事を思って出した結論はきっとお二人に届きますよ。」

具体的に解決策を言わないが秘書さんが、悟すように言ってくる。

俺に相手を思わせるために。

「大丈夫です、あの二人はあなたが必死に誘ってくれた場所なら喜んでくれますよ。」秘書さんが、こっちを向いて正面から言ってくれる。

そうだった、また俺は人を信じられなくなりそうになっていた。

「はい、わかりました。もう少し考えてみます。」

「ただし、限度というものもあります。よくよく考えてくださいね。」

「はい‥。」

最後のは秘書さんの個人的な意見だろか、そう思う事にする。

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