第8話

「おはようございます。」

「お、おはようございます‥。」

朝食をとっていると秘書さんがやって来た。

昨日と変わらずパンツスーツの美人だが何故か怒っているように感じる。

「あ、あの大分早いですね。後で先生が脈や血圧を測りに来るそうです。」

「ええ。そうでしょうね。」

(なんか怒ってる?俺が一人で朝食食べてるせい?)

昨日まであんなに頼り甲斐があり優しかった人が無表情で返事をしてくる。

「あの二人は」

「昨日お送りししましたよ。」

年上の大人が静かに怒っている、それは恐ろしかった。

「あの、ありがとうございます‥。」

「どうしたんですか、急に。」

「俺のために時間を使ってくれてありがとうございます。

秘書さん、会社に雇われてるから働いてるのに、こんな子供の相手させられて、昨日は我慢出来ても、もう自分の仕事が忙しんですよね。本当にすみません。

俺周りがまだ見えて無くて、秘書さんを怒らせてしまって。」

「‥‥」

秘書さんが驚いたような顔をする。

(まずいな、もっと怒らせたか?)

「申し訳ありませんでした。」

「え、‥」

深々としたお辞儀、完全に謝罪だった。

「私は焦っていたようです。周りが見えてないのは私の方です。」

「えっと、あの‥。」

さっきまであんなに怒っていた人が急に謝罪、ただ焦るしかなかった。

秘書さんが顔をあげると、昨日の優しい微笑に戻っていた。

「いえ、あの、ありがとうございます。」

こっちはお辞儀と感謝の言葉が出てきてしまった。

「え?うわぁ!」

「んーー。」

顔を上げた瞬間秘書さんが顔を近づけてくる。

(すごい、いい匂いだ。)

2番とは違うがこの匂いも嫌いじゃない。

「そうですね、後一年は待ちますか。」

「えっと、何がですか?」

フッと笑いながら秘書さは「頑張って下さい。」と顔を離した。

秘書さんの顔に日が差した、大人の余裕を持つ微笑だった。


「はい、脈も血圧も正常値ですね。どうですか、昨日はよく眠れましたか?」

「はい、大丈夫です。」

医者の先生はあの朝食後すぐに来て検査や質問をいくらかしてきた。

「問題ないようですね。ではこれで退院ですね。お疲れ様でした。」

「お世話になりました。」

先生が看護師さんを連れて部屋の外に出て行く。

後はもう帰るだけなので、制服に着替えるだけだが。

「どうしましたか?お気になさらず。」っと秘書さんはなかなか出ていかない。

無言の抗議を続けると「仕方ないですね。思春期ですか。」っと言って外に出た。

「思春期関係ないと思うんだけど‥。」

パジャマはもうどうせ着ないから処分するために病院のゴミ箱にあたるものを探したが、秘書さんから「私が処分します。」っと言ってくる。

そこまでさせるのは申し訳ないので、自分でゴミ箱を見つけ捨てることにした。

「‥‥」

なぜか秘書さんがしばらく残念そうにしたが、そんなにやりたかったのか?悪い事したかもしれないな。

退院の手続きが終わり秘書さんに連れられて外の車に案内された。

車に乗り、ゆっくりと車を発進させる。

帰りは秘書さんに二人のことや、学校のことを話していた。

「なるほど、4番様が生徒会の手伝いをしたのはそういうことでしたか。」

「やっぱり、2番の事知ってたんですね。」

「はい、奥様からくれぐれも失礼のないようにと言われていましたので。」

「‥いつ2番と母が知り合ったか知ってますか?」

「いいえ、申し訳ありません。私にはわかりません。」

「そうですか‥。」

「気になるのでしたら。4番様が直接2番様にそれこそ奥様にお聞きになった方が確実では?」

「まさか、どっちに聞いてものらりくらりと躱されますよ。」

「フフッ、そうですか。」

楽しそうに言ってくる。

「今日はこの後どうするんですか?」

「今日は4番様をお送り次第本社に戻る予定です。」

ここから本社は決して近くない、大体二時間は車だとかかる。

「‥ありがとうございました、今日も昨日も。」

「お気になさらず、私も久しぶりにあなたとゆっくり話せて楽しかったです。

あのお二人ともいいことが聞けてよかったですよ。」

少し砕けた言葉使いになった、本心で言ってくれてるようだ。

「あの、いいことってなんですか?あの二人なんて?」

「気になりますか?でもダメですよ。女性の話に興味を持つならもっと大人になって下さいね。」

むぅ、躱された。

しかし聞かなければならないこともあった。

「秘書さん、あの‥二人には診断の‥」

「大丈夫です、心的外傷の可能性は申してません。」

よかった、そうだよな。問われて簡単に言うわけないか。

「しかし」

「‥‥。」

秘書さんの声が少し強いものになり、俺も真剣に耳を傾けた。

「このことは社長・奥様・会長にはお伝えさせて頂きます。」

‥当然か、家族でありこのままいくと俺が次期社長なんだから。

「そうですか‥。」

「お二人やご友人にはご自分で判断し伝えて下さい。」

「はい‥。」

「何も起きなければ、それが良いのでしょう。しかし何かあった時に何も知らされていないのでは対処のしようがなく周りの方々に過剰な心配をかけてしまうかもしれません。」

「‥‥。」

無言で秘書さんの言葉を聞いていた。

「伝えずにご自分で解決することもまた、必要なことです、人の心の問題はなかなか理解しにくいこともありましょう。」

「‥そうですね‥。」

「どうか慎重にご判断下さい。あなたも、後一年で高校生です。人間関係や世間での身の振り方を覚えて下さい。‥出すぎた発言でした、申し訳ありません。」

「いえ、ありがとうございました。勉強になりました。」

これを身内の親父や爺さんが言っても俺はあまり考えなかったかもしれない、近しい人でも血の繋がりのない大人が真剣に言ってくれるのが一番響いた。

「友人達にはその時が来たら伝えます。」

「はい、特にあのお二人には必ずお伝え下さい。」

秘書さんの言葉が胸に刺さった。

「‥二人は受け入れてくれるでしょうか。」

「それはご自分で判断して下さい。」

突き放すような言葉だ、だがあたたかみを感じた。

「だけど、お二人ともとても強くいい子達ですね。」

とても優しい声だった。

「そうですね、とても強い大切な人達です。」

「ふふっ、そうですね。」


「ありがとうございました。」

「いいえ、では私はこれから本社に帰ります。春休みの帰省を待っています。」

学校に帰ってきた事と、診断書のコピーなどを提出し終え、手続きも終わった。

秘書さんが車で去り、俺はとりあえず寮に戻った。

寮のベッドに寝転びながらスマホで帰って来た事をみんなに伝えた、なぜか秘書さんのアドレスが追加されていたが、別にいいやっと思い放置した。

それぞれお祝いのメールや心配のメールがきた。

その中に、1番から


退院おめでとうございます。

お疲れと思いますが式の件で話があります。

生徒会室に来れますか?


のメール。

来ると思っていたがもう来たか。

「さて、昨日今日の話だがどうなったか。」

2番を呼ぼうか考えたが、やめておいた。

「必要なら、1番が呼ぶだろうし俺と話をしたいみたいだな。」

今日は日曜日だが学生証と正当な理由があれば校舎に入れる、もう警備には1番が伝えてあったらしくすんなり入れた。

「あ、昨日はお疲れ様でした‥。すみませんついさっき帰ってきたのに呼び出してしまって‥。」

生徒会室に入って顔を見た瞬間の謝罪、だが俺に対してわがままを気軽に一人で言えるようになったようだ。

「いや、大丈夫だ。1番も昨日は俺に付き合ってくれてありがとうよ。」

「つ、付き合う‥。あ!いえ、そういう意味でなくあの‥!」

何か急に焦り始めたが、面倒だ無視して椅子に座ると、あたふたしながら向こうも座った。

「それで講堂はどうなった?まだ、立ち入り禁止だろう。」

「‥はい。もう警察の方々はいないのですが、あの‥機材の一部を証拠として回収したらしくて‥、学校側にも操作室のものを移動させないように言われたそうです‥、。」

マイクやケースの単語を言わないでくれた、あの事は伝えてないのに。

「そうか、音響自体は操作室じゃなくても起動はできるけど音楽がな。」

「‥はい。‥。」

前に2番が言っていたが高等部の方にも大体同じ施設があるらしい。

「現実的に考えて、やっぱり高等部の方でやるんだろうな。高等部と中等部では式の日時が違って問題ないだろうし。」

「‥そうですね‥。あと、20日程、立ち入り禁止が解けても音響の機材が返ってくるかわかりませんし‥。

だけど‥。」

だけど?

「どうした?何か足りないのか?」

「‥ごめんなさい。あんなことがあったのに、私また貴方に頼ろうとしてる‥。」

急に泣き始めた1番が言ってくる。

「本当はこの次期会長なんてやめて、他の人に渡すべきなんだとわかってるの‥。

送る言葉だって、もっと相応しい人がいるってわかってるの‥。」

悲しさか悔しさかわからない。けど1番は自分自身に言い聞かせるように叫んでいる。そして泣きすぎて過呼吸になっているが、それでも続ける。

「でも、ごめんなさい‥。わかってるんです、ここでやめるんだったら、もっと早く‥、昨日のことが起こる前に言うべきだってことになるのもわかってるの!。」

「‥‥。」

「だから、貴方にいて欲しいの。ここでやめたら貴方がなんの為に一緒に練習してくれたか、わからなくなるから‥。」

必死に戦っているんだ。1番はずっと前から。

「だから、お願いします。これからの練習も、本番も私を助けて下さい!」

‥俺は、1番はもっとすごい‥俺なんか届かない人間なんだと思っていた。

でも、そうだよな。みんな必死に自分の役割をまっとうしようとしてるんだ。

その立場に自分が相応しいかどうかは関係無いんだろう。

少ないとも、1番は戦っていた。

なら俺のやる事は決まっている。

「わかった。俺もできる限りやろう。」

「本当ですか‥?本当に。」

自分で聞いといて何度も確認してくる。

こいつは自分の姿を鏡で見たことあるのか?こんなに必死で美人が頼み込んでくるのは卑怯だろ。

神にでも救われたような顔で見上げてくる。

「でも、一つ聞いといて欲しいことがある。」

「えっと、何ですか?」

涙を袖で拭きながら言ってくる、くそ、かわいい仕草しやがって。

「俺はまだ、いやこれからも表に出ないかもしれないが、心的外傷、トラウマができてるかもしれない。」

「心的外傷‥。」

「俺自身まだ自覚も無ければ病院でもわからないらしいが、急にそれが現れるかもしれない、今日かもしれないし、式の当日かもしれない。」

「‥‥。」

1番は無言で真剣に聞いてくれている。

「それがどんな形になるかもわからない。そんな俺でも君は俺にいて欲しいと必要だと、言ってくれるか?」

重い話だ、しかもそれがどんな形でいつ現れるわからないって言うんだから。

だけど、

「‥私はそれでも貴方が必要です、貴方じゃないとダメなんです。」

(「貴方は私じゃないとダメなんでしょ?私も貴方と一緒にいたの。」)

あの時が頭によぎる。

「私が、貴方を守ります。だから貴方も私を信じて下さい。」

(「貴方は私を信じられる?私が貴方を守ってみせるから。」)

結局こうだ、俺は誰かに守られなきゃ何もできないな‥。

「‥わかった。俺は君を信じよう。」

「あ‥、はい!ありがとうございます‥ほんとに‥!。」

涙で目が腫れているが、この笑顔は何にも代え難い。

「「‥‥」」

しばらく無言の続くが悪くない空気だ。

「あの!えっと‥。」

急に1番が思い出したみたいに言ってくる。

「ん?どうした?」

「私貴方にしないといけないことがあります‥。」

しないといけないこと?何だろ?もう散々謝ってもらったのだから、謝罪はもういらないし。

「あの!そこでじっとしてて下さい!」

「わ、わかった。」

声がうわずっているが、真剣味が感じられる。

机越しに話していたので向こう側からこちらに歩いてくるが。

ガシャンガシャン、と擬音が聞こえてきそうな歩き方だ、また練習が必要そうだ。

「あの!こっちを向いて下さい!」

「は、はい!」

なかなかの迫力がある声で言われ敬語で対応してしまう。

そして、深呼吸を1番がした後、急に。

「えい!」

「ん!」

頭を抱きしめられた、2番と同じように。

「お、思ったより、慣れが必要ですね‥。」

「ん、うん。」

確かに2番の方が余裕を持って包み込まれているように感じた。

だが1番は文字通りの抱きしめるだ、きつく抱きしめられて、そして息ができない程のこのボリューム。

まるで、押し付けられているようだ、制服が少し硬いがそんなもの関係なく自己をアピールしてくる存在感。

「私も出来ました‥。まだ、恥ずかしいですけど‥。」

「‥‥。」

急な1番の行動に驚いたが、だんだんと落ち着いてくる。これは2番とはまた違う母性だな。

「あの私も、春休み帰省するので‥その‥一緒!に出かけませんか!?」

1番が、体を震わせながら言ってくる、喋るたびに胸が揺れているのがわかる。

「‥わかった、一緒に行こう。」

「はい!絶対ですよ。」

苦しい中なんとか返事をする。

「「‥‥。」」また、無言の時間が訪れる。

1番の匂いがする、少し汗の匂いが混じってそれがドキドキさせる。

スッと1番が頭を離した。

危なかったもう少し遅ければ、窒息でまた病院に行って、1番が取り調べを受けることになっていた。

「ありがとうございます。おかげで落ち着けました。」

「い、いや、そうか‥それは良かった‥。」

お礼を言いたいのはこっちだがやめておこう。

「あの‥また明日の放課後で!場所のことが決まったら連絡しますね!」

逃げるように消えてしまった。

一人、呆然としていると思い出したことがあった。

「鍵、俺持ってないんだけどな‥。」

1番にメールで連絡し、お互い顔をまだ合わせ難かったので、俺はすぐに校舎から出ることにした。


「それでなんだって?1番は。」

あの後、2番に連絡して講堂近くの学食兼喫茶店で今一緒に食事をとっていた。

ここは個室こそないがテーブルを壁でそれぞれ遮られているので内緒話にはよく使え穴場だった。

「今のところ、中等部の講堂には入れないからやっぱり高等部かもしれないらしい。機材もいくつか持ってかれてるらしいしな。」

「まぁ、そうでしょうね。」

「そっちは大丈夫なのか?生徒会のメンツは。」

「‥実際、5番はあまり好かれる人ではなかったけど、仲のいい人は生徒会にもいたし、結構こたえてる人はいるみたいね。」

1番とはあまり話題にならなかったが、生徒会メンバーにもショックを受けている人は、いたように見えた。

「もしかしたら貴方以外の外部の手を借りなきゃいけないかもしれないわね。」

「だとしたら、やっぱり3番とかの放送委員だな。」

放送委員は何にせよ音響の仕事で手伝ってもらうのだから、当然本番の日はいるだろう。

「貴方、3番くんと友達でしょ、念のため伝えておいて。次期委員長は彼なんだから。」

「わかった、伝えとくよ。」

にしても、病院の食事は夜も朝も味が薄くて足りなかった。

食べ飽きた学食が美味くてしかたない、ちゃんと味がする。

「それで貴方はどうするの、続けるの?」

「‥話をつけてきた。俺も本番まで手伝うことになった。」

「そう言うと思った。」

2番が優しく笑ってくれた。

「と言っても、もう俺ができることはほとんどないんだけどな、スピーチも階段の登り降りも出来るみたいだし。」

「ふふっ、貴方はそう思うのね。」

「え?どういう意味?」

「貴方はまだまだ必要ってこと、1番にいて欲しいって言われたのでしょう。」

「よくわかるな。あそこにいたのか?」

「まさか、あの子じゃあるまいし。」

「ん?」

ダメだ、また2番のペースに引き込まれている。悪い気分じゃないけど。

「それで話ってこれだけ?まで何かあったんじゃないの?」

俺が何か隠してるのがわかったのか、それともわざわざ呼び出したんだからこれだけじゃないと思ったのか。

俺が言い難いことを率先して聞いてくれる。

「‥悪い、ここじゃ言えない。場所を変えたい。」

穴場とはいえどこで人が聞いているかわからなかった。

「わかったわ、こっちよ。」

2番は外に出るとそのまま講堂に入って行った。

驚いたが、封鎖されているのは講堂の会場のみで、それ以外の場所には入れた。

2番に会場の控え室へ連れて行かれた。

「ここなら大丈夫よ、ここで着替えることもあるそうだから監視カメラもついてないはずよ。昨日先に帰った生徒会メンバーから聞いたんだけど、ここは警察が使ってたから鍵はかけてないそうなの。」

「‥わかった。」

入ると、部屋の真ん中に背の低い長方形のテーブルに、その両脇にソファーが置いてあった。

「それでどうしたの?」

俺が片方のソファーに座ると2番が隣に座ってくる。

「診断の時に言われた事がある、話さないといけない事があるんだ。」

「うん。」

「今のところ問題ないんだが、人によっては心的外傷、トラウマができてるかもしれないらしい。」

「そう、心的外傷、そうだったの。」

「自覚もないし、これからも表に出ないかもしれないけど、どんな形でいつそれが現れるかわからなくて、」

「こっち‥。」

2番に優しく胸元へ引かれ、ソファーに二人で寝転び、頭を抱きしめてくれた。

「ありがとう、正直に話してくれて。ごめんなさい、話させて。」

「いや、俺が話したかったんだ。ありがとう、聞いてくれて。」

2番の心音がする。

落ち着く、これだけで何よりも安心出来る。

「通院や往診はするの?」

「断ったけど、考えておいてくれって。」

2番が少し力を入れた。

「本当にごめんなさい。私が貴方を誘ったせいで。」

「平気だから、2番がいてくれる今はそれで大丈夫だから。」

「私、我が儘が過ぎたし、お節介だった‥。」

「それは違う、俺は君に感謝してる。君がいなかったら俺はこんな気持ちになってない。」

暖かい、俺はやっぱり抱きしめられるのが好きみたいだ。

「許してなんて言わないから、貴方を守るから。」

優しい2番の声がする。

「ありがとう、俺も君を守るから。」

ずっとこうしていたかった。

2番の体温に包まれているようで、このまま眠りたかった。


「1番との練習は本当に大丈夫?つらくない。」

顔は見えないが心の底から身を案じてくれている。

「大丈夫、1番にはもう話した。」

ギリギリギリ、ん?今かなり力が強くなったぞ。あ、でも悪くない。

「いつ、話したの?」

「さっきの生徒会室で話した時。」

「そう。」

2番が俺を離し席を立ち少し離れた場所に行く。

不思議だ、なぜか2番の背から力のようなものが漂って見える。

「立って。こっちに来て。」

2番が振り返り鋭い目で言ってくる、やはり美人だ。

言われた通りに立つ。

「そこに座って、正座ね」

床に座るように言ってくる、ちょっとだけ足が痛い。

「そうよね、まず1番に話すのが当然よねー。どうしても触れなきゃいけないことだし。」

不思議だ、なぜ怒っているのかわからないがこの無表情にとてもドキドキしてしまう。

「でも、メールとかで最初に私に話せたんじゃないの?」

「だけど、これは2番と直接会って話したかった。それに‥。」

「それに?」

「ごめん‥。2番に甘えたかった‥。めんどくさいよな‥。」

「そう、そうね確かにこれは二人で話すべきことね。」

ん?怒ってるようなにやけてるような顔だ。

「そうよね、いずれ話すことになっていたかもね。」

口に手を当てて2番が真剣な顔で言い始めた。

「いいわよ、立ってこの辺で許してあげる。」

言われたとおりに立ち上がり2番より少し上の目線になる、少しだけ足がピリピリする、慣れない正座のせいと固い床のおかげで足が痺れている。

「それで?1番はなんて。」

「構わないって、手伝いに来てくれって。」

「1番がそう言ったのね。」

他にも色々言われたが多分2番が怒ると思うので言わないでおく、俺も成長した。

「それにしても、貴方も変わったのね、言うべき相手をちゃんと理解してる。」

「褒めてくれるのか?」

「ええ、褒めてあげる。貴方は成長したわ。」

嬉しい、2番が褒めてくれた。なら、お願いがある。

「‥あの一つわがままを‥言って‥もいい?」

「珍しい、貴方がわがままなんて。何かしら?」

そんなもの決まってるが、言いずらい。

「この前の‥」

「この前の何?なんて言ったの?」

絶対わかってるのに聞いてくる、満面の笑みだ。

「何何?何がしたいの?」

「ひざ‥枕‥です‥。」

聞いた瞬間、2番は身が震えるほどの笑いの中、両手で口を塞いでいる。

「いいわ、わかったわ。正直に言ったご褒美にこれを外してあげる。」

言うと、2番に「後ろを向いて」と言われ後ろを向く。

ソファーに座ったようだ、そこでモゾモゾ動いている。

「いいわよ、こっちを向いて。」

2番はストッキングを外していた、白い長い2番の足だった。

「ほら、おいで。」2番が素足で言ってくる。

もう待てなかった。

「きゃあ♪まったく意外と積極的。」

もういいここに住む、ここで死ぬ。

言葉ではいい表せない程の喜び、優しい2番の手で撫でてもらえ、この小悪魔的な笑みは自分だけのものにしたい。

「また、やってくれる?」

「そうね、でも同じでいいの?もっと上でもいいのよ。」

これより上があるのか!それを知る時俺はもう引き返せないかもしれない。

そしてもう十分幸せだが、ある欲望が生まれる。

「触っても‥」

「触りたいの?どうしようかなー。」

触りたい、触りたい!でも、この意地悪な2番も好きだった。

「仕方ないわね、いいわよ少しだけ。」

「っっっ!」

「ただ、触るだけねそれ以上はまた今度ね。」

触るより上?一体何があるんだ‥。

ゆっくり触る、まず今頭を乗せてる太もも、「きゃあ、容赦ないのね。ドキドキしちゃう。」柔らかいすべすべだ、程よく引き締まった筋肉と脂肪が柔らかい。

乗せてる頭が足に沈んでるのがよくわかるな、もうこれだけでいいかもしれない。

「もういいの?」

いや、まだだ次はふくらはぎ、「ふふふっ。」ふくらはぎには自信があるようだ確かに形の良い筋肉がただただ白く美しい、そしてずっと触っていたくなる程、柔らかい。

次は次は‥付け根が見たい、寝返りを打ったことで俺の考えがわかったのか「できるの?」と扇情的な笑みで言ってくる。

付け根はスカートを上げないといけない、2番のスカートをめくる?そんな事をしていいのか、怒られないかチラッと2番を見ると、「いいよ‥。」

我慢出来なかった、スカートをめくると。

黒いレースの下着だ、大人の下着だった。

そして、香水の香りがする、こうなる事がわかっていたのかスカートに仕込んでいたように感じる。

香水と2番の香りが混ざってもう。

「はい、おしまい。」

2番が急に立ち上がったため、俺は転がるようにソファーから落ちた。

少し痛かったが目が覚めた危なかった、あのままじゃ。

「今日はここまで、次はまた、ね。」

「‥はい、またお願いします。」

「ふふん♪」

2番は上機嫌だ、俺で遊んで楽しかったようだ、俺も2番に甘えられて良かった。

「‥‥。」

「大丈夫、貴方以外には触らせないから、安心した?」

俺は単純なようだ、すぐに2番に考えがバレる。

「もう一度褒めてあげる。貴方は成長した。私も誇らしいわ、本当よ。」

「ありがとう、話せるタイミングをくれて。」

「いいの、良かった、貴方が私を信じてくれていて。それに改めて言わせて」

何かを言うために、2番が息を吸い込む。

「私にはあなたが必要です、私を守ってください。」

真剣な表情で2番がそう言ってくれた、俺は必要ないんじゃないかと頭のどこかで考えていたが、2番の言葉だけで、それが薄まった。

あぁ、やっぱり好きだこの人。

「二人にだけは知らせようって決めてたんだ。」

「うん。」

「秘書さんにも言われてたし。」

「そこに座って。」

ソファーに座りなおした2番が腕を組みながら言ってくる。

その底冷えする声にドキッとした。

「言われてたとしても黙ってれば良かったのに。」

2番はスカートの中がギリギリ見えない範囲で俺の顔をつま先でつついたりつまんだりしてくる。

「秘書さん美人だったものねー、優しくて、かっこよくて、頼りになる大人の女性だったものねー。」

器用で、すごく痛い、けど2番の足はやっぱり綺麗だ。

「貴方にも教えないといけない事が沢山ありそうね。」

そしてそれ以上に2番の足の匂いが危険だった、クラクラしてしまう。

そんな俺が楽しいのか笑いながら言ってくる。

2番の目を見ると魅了にかかったように動けなくなった。(魅了には元からかかっていたが。)

その後、初めて2番の足の味(蹴り)を知ったが、なかなか痛かった。

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