第7話

「はい、そのまま動かないで。」

ctスキャンを今受けている。

別に何か痛いわけでもないがなぜか体がこわばる。

脳に異常がないか調べるらしい、外傷だけじゃなく内側に脳が縮小していないかも含めて。

病院に向かう途中に2番と1番が秘書さんに色々と質問し、秘書さんが意外と饒舌に答えていた。

内容は、俺にはさっぱりなブランドだなんだと、あとはもっとわからないので聞き流していて。

俺を待っている間に仲良くなったのか、話し続けていた。

女性3人の会話についてこれず俺はただぼーっとして正直居心地が悪かった。

しかし、俺を3人とも一人は仕事とはいえ二時間近く待っていたのだ、自分が何かやったわけではないのに警察署でずっと待っているのは苦痛だっただろう。

(結局、守られてばかりだな‥。)

2番どころか1番にも心配され、秘書さんにも助けられている。

(ほんとは俺が1番を助けるのが目的だったのにな‥。)

別に1番から迷惑とか言われたわけじゃないが、今検査されている頭のどこかで、

俺がいなければこんな事も起きなかったんじゃないかと、関わらなければよかったんじゃないかという考えが巡っていた。


「えー、脳波や、質問の受け答え・外傷などの確認の結果、特に問題はありませんでした。」

検査が終わり今は医者の先生から検査結果を聞いていた。

わかっていた事だが、自分じゃ気付けない外傷以外の可能性もあったので安心出来た。

「ただ、夜中に急に容態が変化することもありえますので、今日一晩入院して頂こうと判断しました。」

親父にさっき言われたことなのである程度は知っていたことだ。

「今日一日、容態が変化しなければ通院して頂く必要もないと思います。

しかし、精神的な不安があるのでしたら、精神科医との面談も出来ますが。」

「どうしますか?」

秘書さんが座っている俺の後ろから覗き込むようにして言ってくる。

「いや、大丈夫です。悪い夢も見てないし。」

「わかりました、ですが人によっては自覚は無くとも心的外傷、トラウマというものが出来ている可能性があります。今のところ生活に異常をきたすものではないかもしれませんが、何かあれば心療内科に行く事も覚えておいて下さい。」

っ!トラウマか‥。2番に泣きついた事を思い出してしまう。

「では、検査お疲れ様でした。」

「お疲れ様でした。こちらにどうぞ。」

医者の先生が言った後に、続くようにナースさんがそう言って、内科の部屋のドアを開けている。

ドアをくぐると、二人がソファーに座っていたが俺を見た瞬間立ち上がった。

ダメだ、二人に会うだけで顔が笑ってしまう。

「私は窓口に行ってきます。」

秘書さんがロビーに向かって行く。

「これで全部終わり?」

「おそらくはな、だけど今日一日は検査入院になるらしい。」

「お疲れ様でした‥。今日はゆっくりして下さい。」

1番がどうにも表情が硬い、病院という場所で改めて俺に申し訳ないと思ったのか。

「それでどうだったの?検査結果は。」

「結果自体は特に問題はないってさ。ただ‥。」

「ただ?」

「あれだ、入院するから寝巻きとか持ってくるべきだったと思ってな。」

トラウマの話はやめておこう、二人にこれ以上の心配も重荷もさせたくない。

「じゃあ売店に行く?入院に必要な物を見に行きましょう。」

「そうだな、とりあえず秘書さんを待つか。」

3人で秘書さんを待っていると、大体15分ぐらいで秘書さんが受付でおそらく入院手続きをして、こちらに向かって来た。

「病室の準備に時間がかかるそうです、私はお二人を学校までお送りしこの近くのホテルに泊まります。今日はお疲れ様でした。」

丁寧な45度のお辞儀をしてくる。

「いや、ありがとうございました。俺たちだけだとこんなスムーズに出来ませんでした。」秘書さんのお陰で問題なく検査に遅れなかったんだ、こっちもお辞儀をしておく。

「お着替えはどうしますか?シャワーは5時には借りられるそうですが。」

「これから、売店を見に行こうと思ってるところです。」

「わかりました、寝巻きや肌着類にタオルが必要ですね、では行きましょう。」

どこかで聞いてたんじゃないかと思うほどテキパキ、これが秘書なのか。

四人で売店に向かうため病院の廊下を歩く。

「‥‥」

どうにも1番がつらそうだ、さっき車で会話していたのが別人みたい見える。

「大丈夫だから、検査も問題なかったから。」

「はい‥。無事で本当に良かったです‥。ごめんなさい。」

どうにも話が通じて無いように感じる、本当に大丈夫なのに。


「やっぱり、あんまり種類は無いわね。当然だけど。」

「サイズはLでしたねでは少し大きい物を。」

「オムツ、これ大人用なんだ‥。」

俺は目に付いた物を適当に買えばいいや、と思っていたがこの3人がそれを許さなかった。

「別に色もデザインも気にしないしサイズはLでいいから、一晩誰に見せる訳でもないし。あとオムツはいらない肌着は自分で選ぶ。」

「貴方はいつも制服かジャージだから無頓着かもしれないけど外に行った時のために正しい夜の服装を理解すべきだわ。」

「お言葉ですが、寝間着は一つ上のサイズを選ぶべきかと。

寝間着がきつくて寝苦しいのはあなた様の健康の為看過出来ません。

さらに言えばに動きやすく脱ぎやすいものがあれば言うことなしです。」

これである、例え自分のでも、いや自分のを選んでもらっているならば尚更、女性の買い物に口を出すべきではないのかもしれない。

だけど夜の服装?なぜサイズを知っている?動きやすく脱ぎやすい?

きっと俺が知らない事をこの二人は多く知っているのだろう。

タオルは意外とでもないが、無地か柄物か手ぬぐいみたいに長いものから、バスタオルみたいにでかいやつまで沢山あった。

タオルは自分で使うのだから自分で選べた。寝間着もそうなんだけどな。

下着はほとんど種類がなく大体同じ、白いシャツにトランクス、Tシャツっぽいのもあった。

二人にはなかなかお眼鏡に叶うものがなかったようで不服そうだったが、1番はチラチラと俺が手に取った物を見てくる。なんなの?

タオルと下着は自分で寝間着は普通のパジャマっぽいもの、それぐらいしか買わなかった。

「春休みにでもあなたの服を選ぶべきね。私と歩くならもっと服装に気を使いなさい。」

「賛成ですね、あなたももう15歳。ご自分で自分に似合う服を見つけられるようにすべきかと。」

「4番くんの私服どんな感じなのかな‥。」

はぁーーっ。パジャマ選びでこの言われよう、だが次の春休みは2番と出歩けると思うと確かに服を見つけるべきだろうと思った。

もうすぐ5時だ、シャワーの時間ももうすぐだな。

もう病室の準備が出来ただろう。

「そろそろ病室に行ってシャワーを借りてくるよ。」

「一人で出来る?手伝う?」

「出来るから!そこまで面倒見てもらわなくて大丈夫だから!」

「病院では静かに。」

2番に遊ばれ、秘書さんに言われる。

1番は少しは元気になったのか笑っている。

「では私達はここで。何かあれば夜中でもお呼び下さい。」

「明日、帰って来るんだか忘れ物をしないように私はいないんだから。」

「また明日、ゆっくり休んで下さい。」

もし病院に何か忘れたら2番は怒ってくれるのか、少し見てみたい。


病室は一人部屋、ありがたかったが一日なのに一人部屋である必要はあまりないかも、とりあえず制服から着替えてシャワー室に向かう。

シャワー室は、一つ一つのシャワーがビニールのカーテンで分けられていた。

一人でシャワーが使えない患者さんの手伝いをするため看護師さんが何人かいる。

看護師さんがいる中裸でシャワーを浴びるのは結構つらかったが、普通のことなのか看護師さんは別に気にも止めていなかった。

部屋に戻って洗濯する下着の整理をしていたら、食事が運ばれて来た。

「まぁ、そうだよな‥。」

The病院食、米こそ普通だが、ほうれん草のおひたし(味が薄い)、

豆腐(醤油なし)、卵に出汁を使ってスクランブルエッグにした感じ(味がしない)

コーンスープみたいな汁(具なしでやけに甘い)などの微塩料理、もちろんおかわりなし。

飲み物として、スポーツドリンクみたいのが出て来た、これが1番美味しかったかもしれない。

食べ終わり、食器を看護師さんが回収して去っていった。

「暇だ。」

スマホもすぐに飽きてしまい、病棟を少し歩きたくてももう消灯なのでと、病室に戻された。

時刻はまだ8時色々あった日だが夜は暇だ。

何か本でも持ってくるべきだったかもしれない。

「あ!そうだ荷物。忘れてた。」

病院に行く前の車の中で秘書さんから、荷物を受け取っているから病室に置いて置くと言っていたのを忘れていた。

「でも、どうせ昨日から入れっぱなしの物だし何か面白いものはないかもな。」

教科書は入っているが、もう二年次の教科書もほとんど終わりといっても三年次の内容も大方自習していた、辞典はあるがこれで暇をつぶすのは最終手段だろう。

「あれ?なんだ?本と雑誌だ。秘書さんが入れてくれたのか?」

紙のカバーが付いている本と雑誌の二冊が入っていた。

「何から何まで世話になったな‥。明日でも親父に言っておくか。」

今日の運転もまったく振動を感じず、乗り心地がすこぶる良かった。

「えーと、ん?」

とりあえずカバーを外さずに題材が書いてある1ページを開ける。


雑誌は【年上の落とし方ー入門編ー】

本は【同い年や年下ではなく年上を選ぶべき10の理由】


「辞書にするか‥。」

帰り次第とりあえずこの二冊は捨てると決めた。


「来ませんね?」

スマホを机に置きいつでも反応できるようにスーツを着用していた。

もう二人を学校に送りホテルにチェックインしていた。

第3秘書とは3番目の秘書であるが別に能力がそれぞれの秘書と比べて劣っているわけではなく、単純に3番目に選ばれた秘書というだけ。

得手不得手はあっても仕事を完遂する能力は誰とも見劣りしなかった。

「やはりあの子ですか。」

(2番様ですか‥。1番様もかなりのものでしたが、いやどちらに転んでもおかしくないですね。あの二人なら仕方ありませんか、あれだけ今日アピールしましたのに。)

秘書の視線は鋭い。

(最初は雑誌だけの予定でしたが、奥様からの頼みで気づいて急ぎ本も入れましたのに。‥‥しかし4番様のスマホに私のアドレスを入れれたのは我ながらなかなかの手際。)

4番は気づいていなかったが、知らなければそもそも連絡してこないと秘書は気づいていなかった。

(今、連絡下されば本番は流石にダメでも練習をさせてあげますのに。)

4番は今、辞書を片手に暇を潰している。

(しかし、4番様はまだ中学生、大人の女性に夜会いたいと電話をかけるのはまだ出来ませんか。)

4番は今、辞書を片手にうつらうつらしている。

(仕方ありません。中学生が一人部屋でする事と言ったら一つ。今晩は私を使ってごゆっくり下さい何度でも。)

4番はもう寝ていた。

(しかし、朝早くや真夜中でも連絡が来たらすぐに駆けつけるのが私の務め、どうぞ何時でもご連絡下さい。準備は整っています。)

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