VOL.3
それから二日間、何も起こらずに時間が過ぎていった。
MIB達は、
『外に出るのは構わないが、庭の中だけにしてくれ』と念を押されていたので、庭に出る時は俺がカレンに付ききりになった。
家の中ではトランプやビー玉遊びなど、他愛もないゲームに興じたりして時を過ごした。
食事?
勿論、俺が作ったさ。
確かに手をかけなくても出来るようにはしてあったが、それじゃ味気ない。
男の料理だって、バカにしたもんじゃないぜ。
かくのごとく、一日目、二日目は何事もなく過ぎていった。
俺にとって辛かったことがあるとすれば・・・・酒が呑めないくらいだろう。
(呑みゃいいじゃないか?)って?
馬鹿をいうな。
仮にも仕事中だぜ。
俺にだって守らねばならない仁義ってもんはある。
呑んだくれていて、いざって時に動けなかったら何にもならんだろう。
それに未成年者の前で一人で呑むなんて絵面、どう考えてもサマにならないからな。
ま、それはともかく・・・・こうして三日目になった。
当り前だがその日は聖夜前日、つまりは俗にいう、クリスマスイブだ。
俺は教えられた番号に電話をかけ、とびっきりの材料を仕入れさせた。
向こうさんはあまりの値段の高さに目の玉が飛び出るほど驚いたようだったが、そんなの構っちゃいられない。
可愛い女の子のためなら、何でもしてやるのが大人の務めってもんだ。
カレンは『ねえ、小父様、何をしてるの?』と、盛んにキッチンを覗きに来る。
『黙ってそこに座って見ていなさい。今晩のお楽しみだ』
彼女は俺の言う通り、最初は黙って大人しく見ていたが、そのうち『お手伝いさせて!』と来た。
仕方ないなぁ。
俺は彼女にもエプロンをしてやり、料理の手伝いをして貰う。
彼女はそれが結構嬉しかったようだ。
考えてみれば生まれてこの方、こんな思いをしたことなんかなかったんだろう。
少し時間はかかったが、午後四時過ぎに全ての支度は整った。
ローストビーフにローストチキン、サラダ。それに特大とまではいかないが、クリームたっぷりのクリスマスケーキときたもんだ。
彼女はこのご馳走に、歓声をあげ、目を輝かせていた。
俺達はシャンペン(勿論ノンアルコールのジュースみたいなやつだ。甘ったるいのは苦手だが、この際だ)で乾杯をし、料理を食べた。
彼女は口の周りをクリームだらけにし、ローストチキンにかぶりつき、本当に幸せそうだ。
(こうやって見りゃ、普通の女の子じゃないか。科学の発展の為だか何だか知らないが、普通に暮らさせてやれないもんかねぇ)
俺はそう思いながら、BGMにクリスマスソングを掛け、二人っきりのパーティーを過ごした。
彼女は後片付けまでちゃんと手伝ってくれた。
『今晩はもうお休み。明日朝になれば、もっといいことがあるからね』
『何?』
『それは明日の朝のお楽しみだ』
彼女は俺の言う通り、ベッドに入ると、直ぐに寝息を立てた。
可愛いもんだな。
俺はベッドの側に椅子を置くと、拳銃を取り出して弾丸を確かめる。
いいサンタがちゃんと来てくれるといいんだが・・・・。
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