蛹
古月むじな
✳︎
もはやどこにも行かれないのだろうか。
私はいわば蛹のようなものなのだが
周りが次々と羽化するなか
我が正体が蝶か蛾か、
あるいは得体の知れない何者かなのか
わからぬままに転がっている。
既に羽化は叶わぬのかもしれぬ。
我が身はとうに断ち切られていて
腐り落ちていくのに気づかないだけなのか。
蛹で何が悪いか。
飛び回るのがそんなに偉いか。
天の上の羽虫たちに叫んでみても、
ただただ哀れみの目で見られるばかり。
彼らが遠くに飛び去る頃には
ついに殻を破れなかった我が屍が
ごろりと地に転がっているのだろうな。
私には羽など生えていないのだと
見えない背中を撫でて慰めながら
私は殻の中で身じろぎするのみなのである。
蛹 古月むじな @riku_ten
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