第4話 束の間の幸福

(ということで、来週のアイドルのオーディションに申し込んでみたの)

自信と行動力が持ち味の咲の口から発された言葉であるから、特に驚きも無かったが、本当に受かったらどこか遠くへ言ってしまうのではないかという不安が心を占めた。

(おーう、頑張ってな、きっと受かるよ)

と、応援しつつちっとも不安を感じさせないようなありきたりな返事をした。

金曜日、オーディションのため咲が東京へ行った。ラインで

(ほんでは、行って参る、岩手の警備は任せた)

(任された!)

と、だけ返信をして、土日は家でゴロゴロして過ごした。

月曜日、下駄箱付近で咲と会ったから一緒に帰ることにした。

(ど、どうだったオーディション)

(みんな可愛い子だらけで、私は田舎育ちの芋って感じで完敗。まっ、結果は一週間後だけど、もういいやって感じ、CA目指す!)

方向転換の速さもピカイチの咲だが、この時は少し悲しそうな顔をしていた

(まっ、もし落ちたら、審査員の目が悪かったってことさ)

(何それ、慰めのつもり、彼氏としてはまだまだ0点の返事だな)

そうか、咲の中では僕はもう彼氏という認識なのか。少し嬉しくてにやける。しかし、にやけたら、咲が離れていくから、無表情を貫く。

(ちなみに、もし受かったら東京で合宿とかあるから、浩太と会えなくなっちゃうところだったから、落ちてラッキーって感じ)

おいおい、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。流石ににやけた。けど、もし受かったら離れ離れになるのかな。

そして、普通の一週間が過ぎて、合格発表日になった

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