第3話 あなたってほんと、英雄

サレハから士官学校卒業の手紙が届いて、早数か月。やはり連絡がとれない日々が続いていた。

アカネは毎朝、サレハの無事を祈って朝日を拝むのが習慣になっていた。


ある日、インターネットで衝撃的なニュースが報道された。

「劣勢のラフルクルアーン!救国のロボット戦闘団により敵国を壊滅、講和条約を締結。」


爆撃用自律型二足歩行兵器は爆撃に特化しているが俊敏性に難がある為、攻撃用自律型二足歩行兵器が直掩につくのが常だ。しかし直掩兵器は燃費が悪く、長距離の稼働は不可能だった。

その為、直掩機なしで大量の爆撃用兵器のみで敵国を直接攻撃したのだ。

犠牲を厭わない戦闘方法でラフルクルアーンは勝利した。

その任務に就いたのが「ラフルクルアーン国 機甲軍 第442爆撃戦闘団 通称、救国のロボット戦闘団」だ。

同戦闘団は直掩なしで敵国へ侵入、部隊は損耗するも最後の一兵器が首都にある

王宮兼中央政治議会所を爆破、これにより敵国民の戦意が喪失し講和となった。

だが最後の一兵器も任務終了後、敵国王族警備隊に攻撃されパイロットは散った。


その最後のパイロットがニュースで報道された。

「救国のロボット戦闘団、最後のパイロットは機甲軍中尉 サレハさん! 彼はまさしくラフルクルアーンの軍神です。」


アカネは固まって動けなくなった。サレハが「軍神」になったのではなく「戦死」したことに。アカネは三日三晩、干からびる勢いで泣き続けた。


世間はサレハを軍神と敬った。ラフルクルアーン政府から勲章を授与され、階級は特進し機甲軍中佐になった。彼を称え「サレハ機甲戦闘団」という勇ましい軍歌も歌われた。


サレハはまさしく「神」になった。

だがアカネは泣き続けた。サレハは帰ってこない。もう二度と。


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