第2話 あなたってほんと、そそっかしい

サレハが帰国する日を迎えた。

アカネは重い足取りで空港へ向かう。


飛行機の搭乗口につくとサレハが笑顔で向かってくる

「アカネ。お見送りありがとう。」


「早く帰ってくるのよ。」

本心が悟られないよう、あえて笑顔でこたえる。


「ああ、もちろんさ。すぐに帰ってくるよ。おっと、そろそろ出発だ。またね。」

サレハは両手に荷物をもって足早に飛行機へ向かっていった。


「まったく、そそっかしいんだから」

アカネは独り言を呟く。



サレハが帰国して半年が経過した。

ラフルクルアーンは情報統制の為、通信と郵便に厳しい規制をしいていた。

つまるところ、サレハと連絡が取れない。

そんな不安を募らせる日々の中、急にサレハから手紙が届いた。

軍用封筒の中には士官学校の卒業写真と手紙が入っていた。

パーカーが大好きなサレハに礼装軍服は似合っておらず、アカネは笑ってしまった。

手紙にはこう綴られていた。


「アカネへ

ついに士官学校を卒業しました。こんな僕でも機甲軍少尉だ。すごいだろう。

詳しい配属は軍規で話せないけど、自律型二足歩行兵器の戦闘パイロットの任を拝命したよ。早く仕事を終えて君のもとに帰るんだ。それまで、待っててよ。

ラフルクルアーン国 機甲軍 少尉 サレハ」


「セントウキ」と呼ばれる兵器が使用されていた頃より遥かに死傷率は減った。

だが「自律型二足歩行兵器」のパイロットは「歩兵」と同じ割合で戦死率が高い。

アカネは不安に駆られたがサレハへ連絡を取る手段がない。


「サレハに会いたいよ。」


二人を引き裂いたのは物理的な「距離」だけでは無いようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る