第75話 アフターストーリー(1)

「大樹くん早く早く!」


「瑞波そんなに急ぐなって!」


 というわけで俺たちは無事に春休みになっていた。


 あの日から俺たちは学校でかなり有名はカップルとして知られるようになった。それと同時にソフトボール部への見方も変わり、ついに先日先輩にも彼女ができたのだ!


 ただ、俺と同じように三打席勝負をしてものの見事に三打席連続三振を彼女に披露したのは今でも話題に出るくらいの面白エピソードだ。


 一週間のグランド整備を命じられていた。もしかしたら彼女ができたらこの試練をするのが今後のソフトボール部の恒例になるかもしれない。


 ちなみにその先輩は今も仲良くお付き合いをしているそう。これがきっかけで別れるとかなくて良かった。


 って違う違う。と、いうことでやって来たのは京都! 今日は嵐山だ。


 前から約束していた春休みデート。部活が休みになった日を狙って二泊三日の旅。


 お金に関してなんだけど、テストの結果が最高だったことでお小遣いとは別にこのデートのために半分くらい経費を出してもらっただけでなく、小学生の頃預けていたお年玉を渡してくれたのだ。


 俺の将来の進学や必要になる時のために大切に俺の口座に貯金していてくれていたらしい。本当にお母さんには感謝だ。


「人が多いから離れないようにしてよ」


「分かってるよ。大樹くん。せっかくこうして二人で来たんだからちょっとの間も離れたらもったいないよ」


 そう言ってから瑞波はソッと俺の手に自分の手を絡めて恋人繋ぎをしてくる。


 そしてニギニギとしてくるからむず痒い。


「それにしてもなんかカップルが多くない?」


 阪神電鉄嵐山駅からぞろぞろと移動する人の中で結構の数の男女が手を繋いでいる。


「確かにそうだね。だから気にせずイチャイチャしていいてことだよね」


「人目は気にしようね瑞波。あっ、あれが渡月橋じゃない?」


 俺たちがそんな話をしている中見えてきたのは大堰川に見事に掛かっている渡月橋。


「わぁ! すごいね大樹くん! よくテレビで見たのだ!」


 はしゃぐ瑞波が手を引っ張るので俺も速足で移動する。手は絶対に離さない。


 そしてそのまま渡月橋を渡って行く。すれ違う人すれ違う人が着物を着ている。


 瑞波が着たら可愛いだろうなぁ。絶対似合ってるよなぁ。


 着てもらいたい!


「瑞波、着物レンタルしてる場所あると思うんだけど着てみない?」


 俺の言葉にパアッと笑顔の花を咲かせる瑞波。


「良いね! 着たい着たい! 着物着るのとても興味ある! みんなすっごい可愛いし」


 瑞波も興味津々といった感じで喜んで了承してくれた。ということでまさかの渡月橋を半分くらい渡ったところで引き返す。


 そして俺たちがやって来たのは着物レンタルのお店。お店に入ると目に入ってくるのはたくさんの絵柄の着物。


「どれも綺麗。花柄とかとっても可愛い」


 いろいろ見ていると店員さんがやってきた。


「着物をお探しですか? 今日は天気も良いですしレンタルにはぴったりの日和ですね」


「そうですね。なので似合う着物を借りたいんですけど」


 店員さんは瑞波の方を見るとならこれはどうでしょうと着物を持って来てくれた。


「この、ピンクを基調とした花柄の着物なんてどうでしょう。彼女さんとても可愛らしいですから似合うとと思いますよ〜」


「えへへ。ならこれにしようかな。すみません。これにしたいんですけど、着物着たことないので着付けてもらえますか?」


「はいもちろんです。ではこちらへ。彼氏さんちょっとまってて下さいね〜」


 瑞波は店員さんに連れられて奥の方へと向かって行った。1人になった俺は瑞波の着付けが終わるまで待つことになる。瑞波の着物姿楽しみだ。


「もしよかったら彼氏さんも着物着てみませんか?」


「えっ?」


 さっきとは別の店員さんが俺に言ってくる。別に俺は着るつもりなかったんだけどな。


「カップル着物プランっていうのもありましてとってもお得なんですよ。それに彼女さんとやっぱり一緒に着た方が楽しいですよ」


「それもそうですね。ならそうさせてもらいます」


 せっかく瑞波と一緒にいるんだから俺も着た方がいと思う。


 瑞波をびっくりさせることが出来れば良いな。

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