第70話 告白の返し

 言い切った。俺たちの関係をついに言った。


 思った以上に何か思うことはなく、ただスッキリした晴れ晴れとした感覚。横の瑞波もすごく良い顔をしている。


「おい、それは本当か」


 山田先輩が鋭い目で俺を射止める。しかし、俺は決してその目を離さず「はい」と答えた。


「それはここの部のルールを知っていないわけないよな?」


「もちろんです。それでも俺はこうして瑞波と付き合っていると公言させていただきます」


「わ、私もです! 大樹くんと離れるつもりは一切ありません!」


「そうか。ならこの部のルール通りに退部してもらうしかないな」


 やっぱりそうか。もしかしたらなんていう甘い考えがあったんだが……やはり退部するしかないんだろうか。


 そう肩を落とした時だった。


「しかし、お前たちの本気も分かった。その本気の姿を見てただ単に退部と言うのも納得いかないだろう」


「なら!」


「そう。だから結果で示してみろ」


 先輩はそういうとバットをビシッと俺の方に突き出した。グリップの方を俺の方に向けている。これは……


「ウチのエースと三打席勝負だ。お前が一本でもヒットを打ったら認めてやる。ダメだったら……そうだな、一週間グラウンド整備を一人でしてもらうか。それじゃあみんな準備してくれ」


 先輩の合図とともにみんなが守備位置に着く。みんな俺の肩をポンと叩いて応援してくれているようだった。


「みんな本当にありがとうございます」


「大樹くん。頑張って。今だけは私はマネージャーじゃなくて大樹くんだけを目一杯応援するから」


 ぎゅっとグリップを握って二、三回素振りをする。ズバッとキャッチャーからいい音が鳴る。エースの先輩、いつも以上に早いじゃないか。


 でも絶対に打つ。今までの努力はこの瞬間のためにあると言っても良い。神経を集中させる。


 ソフトボールは圧倒的にピッチャー有利だ。ホームとピッチャーの距離14.02メートル。これをさらに詰めて投げてくるのだから。


 そして体感速度150キロにもなるようなボールをしっかりと見極めながら打たなければいけない。そしてこの先輩は球が速いだけでなく、ライズボールという浮き上がる球を得意とするかなり厄介な人だ。


 準備が出来たようだ。俺は打席に向かう。


「大樹くん絶対打てるよ! 応援してる!!」


 大きな瑞波の声援を受けながら打席に入る。


 さぁ、勝負だ。

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