第69話 俺たちの告白

「だからさ、明日俺はみんなに俺たちのことを言おうと思うんだ。良いかな?」


 自室のベッドの上。今日やるべきことはすべて終わった。お風呂に入って、課題もして。そして今は瑞波と通話している最中だ。


「うん、ついに言っちゃうんだね。すっごい覚悟が必要だ」


「そうだな……でも俺は瑞波と堂々と一緒にいたいし、部活も続けたい。どっちも欲しいなんてわがままかもしれないけどさ」


「それを言ったら私もだよ。それに大丈夫。私は大樹くんの横に絶対にいるから」


 通話越しでも瑞波の言葉が俺の心に温かく染み込んでくる。そして瑞波とならなんでもできる。そう思った。


「ありがとう。それじゃあ明日向けて俺はもう寝るよ」


「分かった。おやすみ大樹くん」


 そして俺たちは通話を終了した。明日、全てが上手くいきますようにと願って。瑞波と堂々と恋人として接することができるようにと。


 思った以上にそのあとすんなりと眠りにつくことができた。




 何故かこういう時の時間の流れというのは非常に早い。あっという間に今日の部活は終了。先生はスラコラと職員室に戻っていった。学年末で先生は多忙らしい。


 みんながぞろぞろとグラウンドから部室へと帰ろうとする。俺はそれを大きな声で遮った。


「皆さん聞いて欲しいことがあります!」


 俺の声に先輩も同級生もみんなが振り返る。そしてここで瑞波が俺の横に来てくれた。


 あぁ……緊張する。もしかしたら明日、俺はこのグラウンドの土を踏むことは出来ないかも知れない。ユニフォームを脱がないといけなくなるかも知れない。


 そんな不安が心を埋めていく中、急に俺の右手が温かくなった。瑞波が俺の手をギュッと握ってくれていたのだ。


 俺もそれに合わせて瑞波の手を握る。


 みんなが俺の周りへとやってきた。


「なんだ空閑。何か言いたいことがあるのか?」


 ここでみんなを代表して言ってきたのはキャプテンの山田先輩。いつもは優しい先輩がかなり怖く見える。


 それでも俺は言う。この気持ちを。


 瑞波と握っている手がさっき以上にきつくなる。


 そして大きく息を吸い込んで俺たちは言った。


「空閑大樹は和泉瑞波さんとお付き合いしています!!」


「和泉瑞波は空閑大樹くんとお付き合いしています!!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る