第66話 部活再開

「うーん。久しぶりの部活だわ〜」


 テストが終わって部活が再開した。今日は軽めにすると言っていたけれど本当だろうか。2学期の期末テストの後、めっちゃ筋トレさせられて筋肉痛になったのを俺は忘れてない。


「2週間後には大会も控えてるし、ワンチャン初日からぶっ飛ばしてくる可能性もあるよなぁ。ただ今日めっちゃ動ける気がするわ!」


 純也はかなり調子が良さそうで楽しそうに喋りながら、キャッチボールをしている。その横で絶望に打ちひしがれているのは修。さっきから一切喋らず、ずっと下を向いている。成績がかなり悪かったらしい。


 やばいとわかっていたのにゲームを続けるその精神力はすごいが、そこまで後悔するならちょっとくらいしておけば良かったのに。


「それで? 大樹はどうだった? あれだけ意気込んでおいたんだからそれなりにできたんだろ?」


「まぁな。今回はすっごい頑張ったからな。まじでトップレベル狙えるレベル」


「大樹〜それなら俺に全科目10点くらい分けてくれ……」


 それだけいうと修は倒れてしまった。こいつ、テスト返ってきたらもう泣いちゃうんじゃないか?


「はいは〜い。ドリンクの準備できたから休憩の時に飲んでくださいね〜」


 瑞波がドリンクをスクイズに入れて持ってきてくれた。ジャージ姿の瑞波もすごい可愛い。久しぶりに見た気がする。


「やっぱり和泉って良いよなぁ」


「それな。めっちゃ気がきくし、仕事もテキパキやってくれてありがないよな」


 純也とさっきまで下を向いていた修がそんな話をしだすから、俺の心臓はドキッとしてやばい。


 ただ自分の彼女がそうやって他の人からも褒められるのは嬉しい。


 ただ怖いなぁ。このみんなのアイドルが自分の彼女ですって言ったらどうなるだろう。


 もう居場所を無くしてしまうのだろうか。今一緒にキャッチボールしている修、純也とはもうこうして投げ合えないのかな。


「っておい! 大樹どこ投げてんだ!」


 考えごとをしていたせいでボールがすっぽ抜けて純也の遥か後方へ。取りに行かせてごめん純也。


 と、ここで先生がきて早速ノックをすることに。って先生、今日はテスト週間明けですよ?  もうちょっとゆっくりやってもいいんじゃないですか?


 まぁそんなこと言っても仕方ない。俺はショートのポジションへ。一年生でレギュラー張らせて貰ってるんだから、ここからは気合を入れてやらないと。


 一度グローブをポンと叩いて集中モード。まずは前進守備から。


「そういえば、空閑。今回のテスト、めっちゃマジだったらしいな。どうした? そんな成績が悪いってわけでもないだろ?」


 ここで俺に話しかけてきたのはサードの寺岡先輩だ。この人もめっちゃ上手くて、よくカバーしてくれている。


「あ、そうですね……まぁテストの成績がどうのこうのというよりはある意味では覚悟を決めるためと言いますか」


「なるほどな」


 と、先輩は俺から目を逸らして瑞波の方を迷いなく見た。


 ドキッ!! 


 今ほど心臓が止まると思ったことはあっただろうか。なんなんだ。この全てを見透かしたような雰囲気は。


 寺岡先輩はもう一度俺の方を見るとそれ以降、俺にテストの話をすることはなかった。

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