第62話 決意
「瑞波……聞いて欲しい」
そう言った瞬間部屋の空気が止まったような気がした。瑞波は俺の真剣な感じを感じ取ってくれたのかペンを置いてじっと見つめてくる。
「このテストが終わったらさ、ぶ、部活のみんなに俺たちのさ……関係を……ちゃんと話そうと思うんだ」
「えっ……」
目を見開いて俺の方から目を離さない。その目にはいろいろな感情が混ざっている気がした。
「大樹くん、それってさ……」
「うん。そういうこと」
「そっか。わかったよ。大樹くんありがとうね」
瑞波は静かにそれだけを言った。
「ありがとうって。逆に俺が謝らないといけないのに」
「違うよ。だって私は最初に大樹くんに私たちの関係は秘密でも大丈夫って言ったのに。やっぱり私のためなの?」
「そうだね。今日瑞波の表情を見たらなんでそんな顔をさせてるんだろうって。俺が1番大切なのは瑞波なんだから」
「大樹くん……やっぱり大好き!」
正面にいたはずの瑞波がサッと移動すると俺に抱きついて来た。
うん。やっぱり瑞波はこの笑顔がいい。俺はこの瑞波の笑顔に惚れたんだ。
さっきまで落ち着いていた瑞波が嬉しそうに俺にすり擦りしてくる。ただ、まだみんなにいうって宣言しただけで何も済んではいない。
「きっと大丈夫。もし退部になったら私も辞めて帰宅部になるよ。その代わり大樹くんと毎日キャッチボールすることにする」
「ははっそれもいいかも。そういえば瑞波とキャッチボールしたことって全然無いよね」
中学の時は瑞波を眺めるだけだったし、高校に入ってもそんな機会は無かった。
「瑞波と一回はしてみたいな。すごい楽しそう」
「そうだね。でも今ボール投げたら筋肉痛になっちゃいそう」
「瑞波のことだからそんなことなさそう」
「ちょっと大樹くん!! それってどういうこと!?」
ほっぺたを膨らませてポカポカしてくる。でも瑞波のことだから本当になりそうにないんだよな。
「ふぅ。とにかくまずはテスト頑張ろう! そこを乗り切れないと何にも始まらない! 春には旅行にも行くんだし! 成績悪かったら行けない」
「そうだよ! 寝る間も惜しんで勉強しないと! 行きたいところたくさんあるんだから!」
こうしてまた勉強に励むのだった。ただ今日で俺たちの関係がすごく進んだことは確かだ。
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