第60話 相談
「おーい大樹。ご飯食べようぜ」
午前中の授業が終わって今はお昼休み。テスト週間のせいか昼になってもそこまで教室はうるさくならずお弁当片手に単語帳を読む猛者までいる状況だ。
「ごめん。ちょっと今日は用事があってな。じゃあ俺は急ぐから」
「あ、ちょっ! 大樹!」
それはそれだけ言い残すとサッと教室を後にした。
コンコン。
「もういたんだ。ここは白井さんの城みたいだな」
「それならサッサと出て行ってもらおうかしら」
「来た瞬間に辛辣だな!?」
そんな謎のやり取りをしたあと普通に席につく。俺が座ったあと何故か白井さんは俺から2つくらい席を移動した。
「それで? 用事はサッサと済ませて私を解放してくれないと」
「ほんと、白井さんのキャラが分からないよ」
みんなに優しそうな感じなのになんで俺には辛辣なんだ。俺、何か気に障るようなことしたかな。でもそれなら相談なんか乗ってくれないだろうし。
女心は難しい。
「とにかく白井さんは俺にアドバイスをしてくれるんだよね?」
「ええそうね。だからまずはなにがあったか教えてくれる?」
「うん……」
すごい緊張する。だって俺と瑞波の関係を家族以外の人に言うのは初めてだから。
でも瑞波にこれ以上辛い思いをさせたくないから。ただその一心で。
「それで本題なんだけど。俺と和泉瑞波さん。瑞波とは付き合っててさ」
「そうだったのね。まぁ前に廊下ですれ違った時からそんな感じじゃないかとは思ってたんだけど。ただそれだけじゃないんでしょ?」
白井さん鋭い。たしかにそれだけならわざわざ相談する必要もないしな。
「と、いうわけなんだよ」
俺は白井さんに今の現状を話した。白井さんも黙って聞いてくれた。そして一息ついた後口を開いた。
「空閑くん最低ね」
冷たい白井さんの声。まさかここまで言われるとは思っていなかった。
「まぁでもわかるよ。瑞波に無理させてるし第三者から見たら変なルールを気にしてるやつだと思われるだろうし」
「違うわよ」
「え?」
そこじゃいって? 逆にそこ以外にどこがあるのだろう。
「あなたが1番気にしないといけないのは誰? 部活のみんな? それとも和泉さん?」
「それは……ってそんなの天秤にかけられるわけないだろ!」
「その結果がこれよ。どっちともを離せないから。ねえ知ってる? 二兎を追う者は一兎をも得ずってことわざ」
白井さんの言っていることは間違っていない。部活内での体裁を守るために瑞波に無理させている。
もし今の状態でバレたらたしかに部内での信頼もなくなり、瑞波も俺を見放すかも……
「なるほど……俺は……」
確かにちゃんと言わないといけないのかもしれない。ただそれは俺の友達を失ってしまうかも……
「大丈夫よ。あなたがしっかりすればどちらも失うことはないわ。あなたは真面目にいつも頑張っていたのだから」
「白井さん……ありがとう。ちゃんと決心つけることにするよ」
「ええそうした方がいいわ」
もう一度白井さんにお礼を言って俺は教室を後にした。
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