第59話 廊下で
「白井さん?」
俺の目の前にいるのは白井さんだった。ただ変だと思ったのはあのいつものニコニコ笑顔の優しい声じゃなかったからだ。
それはまるで最初に空き教室で出会った最初の会話のようで。ただ冷たい感じはしなくて普通な感じがする。
「それで留年しそうなくらい成績悪いの?」
「いやそうじゃないから。こうみても成績は普通くらいだし。今回は20位に入るつもりで頑張ってるから」
「そうなの。がっかり」
「がっかりって。でも無理だって馬鹿にはしないんだ」
「無謀な挑戦するのって見ていて面白いじゃない」
この人けっこう毒舌っていうか思ってたキャラと全然違うな。なんていうかあのフレンドリーな話し方より全然良い。
「それで? 何があったわけ? 私とあなたは全然仲良くないけど聞いてあげるわ」
「それはありがたいけど流石に時間がないから前行った教室、今日もいるんならあそこで」
「分かった。じゃあね」
白井さんはそういうとクルッと身を反転させて廊下を歩いて言った。
その姿を見ながら俺は思った。
(俺、全然白井さんのこと知らないのになんでこんな大事なこと話そうとしてるんだ?)
誰にも言えない俺たちの関係。もちろん悪いことをしているわけではないけれど。
でも全然認識のない白井さんがなぜ聞いてくれるんだろう。
「ちょっと待って白井さん!」
「なに? そろそろ行かないと次の授業が始まっちゃうんだけど」
「どうして俺の相談に乗ってくれようと思ったの?」
俺の問いに少し難しそうな顔をしてそしてスッと笑顔を作っていった。
「空閑くんが初対面で出会った時にぜんぜんデレてくれなかったからかな」
「え? あのお昼休みの時?」
「ううん。もっと別の時。って言うか冗談だよ冗談。まあ恩はしっかり返さないといけないとは思うけどね」
「最後の方ぜんぜん聞こえなかったんだけど」
「そこは気にしなくていいからね。とにかくそんなに気にすることじゃないから。じゃーね」
白井さんはそれだけ言うと自分の教室に戻っていった。
俺と白井さんってあの教室以外のところで出会ってたことあったかな。全然覚えてない。
とにかく瑞波との関係のためにアドバイスをもらうとしよう。何故か白井さんは俺たちの関係とか部活の話をしても大丈夫だと思っている俺がいた。
「むぅ〜! 大樹くんこれはどういうことなの。なんで亜由美ちゃんとあんなに仲良くしてるのよ!」
そして俺を見ている人が1人いたのだった。
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