第57話 ようやく勉強
めちゃめちゃ驚いたが天ちゃんは本当にうちの学校の入試に合格したらしい。リビングにいた母さんと天ちゃんのお母さんが教えてくれた。
「びっくりだね。まさか天ちゃん私たちの学校に来るなんて。そういうこと聞かなかったの?」
「全然聞いてなかった。デリケートな話だからこっちから聞きにいくわけにもいかないしさ。今年の正月は受験勉強があるからってことでおじいちゃん家にも来てなかったし」
「それもそうだよね。それじゃあ勉強頑張ろうね」
ポンと準備よく教科書と課題をテーブルに広げていく。天ちゃんと瑞波のインパクトが強すぎてちょっと忘れかけてた。
「私たちのために頑張ってくれるのは嬉しいけどちゃんと言ってよね。私、ちょっと寂しかった」
ちょっとだけムッとした顔をこちらに向けて瑞波は勉強を始める。俺も謝ってから勉強を始めた。
カリカリカリカリカリカリカリ
俺の部屋にシャーペンを走らせる音だけがする。今俺たちは数学の問題集をひたすら解いている。先生問題数出し過ぎだ。これテスト直前にやったら絶対徹夜で死ぬやつ。
「大樹くん、この問題なんだけど」
「あぁこれは因数定理を使って……そうそう」
「ちょっと瑞波いい? この問題なんだけど。確率がおかしくなってさ」
「見せて。ん~。これはね。あ、ここの求め方が違ってるよ。赤玉の取り出し方だからこうだね」
俺たちは真剣に勉強を進めていた。たまに分からないところを教え合うくらいの会話しかしていない。相手に教わったり自分の分からないところを教えて貰ったりしてかなり効率よく勉強で出来ている。
今の俺たちに甘い雰囲気はない。これが勉強ガチ勢だ。
そして勉強を始めて一時間くらい経っただろうか。普段の授業が50分なのでそろそろ休憩しようかな。
と、ここで瑞波の方をみるともじもじしながら俺の方を見ていた。なにかあったのかな。
「ちょっとね大樹くんご相談があるの」
「なんだ? ずっと座ってて足が痺れたとか?」
「違うもん! そんなことじゃなくてあのね……大樹くんとイチャイチャしたい!」
「それ俺だってしたい!」
でも今は勉強中でそんなことをしてはいけない。普通だったら瑞波の誘いに乗っていたかもしれないが今回のテストはとても重要。その甘い誘惑に負けてはいけないのだ。
「じゃあ今一時間勉強したから10分休憩にしよ。それでこの10分はイチャイチャしてもいいってことでさ」
なんていいアイデアなんだろう。確かに休憩は必要だ。でもそこでスマホを触ったりぼーっとしたりして時間を過ごすより圧倒的に瑞波と触れ合った方が良い。
疲れも取れてほんとの休憩といえるだろう。ただそれに没頭しないように気を付けないと。瑞波と触れ合うと時間があっという間に過ぎて行ってしまうからな。
「じゃあ10分間だけこうしてぎゅーってしていよう? どれだけ名残惜しくても私もちゃんと離れるから」
「ならちょっとだけしよっか」
こうして勉強の休憩をするのだった。
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