第56話 何故か修羅場

「これはどういう事なのかな、大樹くん」


 ニコニコ笑顔に瑞波が一歩一歩近づいてくる。顔は笑っているのに目が全然笑っていない。まじで怖い。


 なんでなんだ。俺、やましいことは一つもしてないのに。勉強もひとつも進まない。


「瑞波、これは違うんだよ」


「ふぅん。何が違うのか説明して欲しいな」


「この子は俺の従妹なの! だから瑞波の心配するようなことは全然ない」


「ほんとに?」


「あぁほんとだ。決して浮気なんてしてない」


「なぁんだ良かった。まぁ大樹くんが浮気するわけないって分かってたけどね。ちょっと意地悪しちゃった」


 心臓に悪過ぎる。ほんとに意地悪しちゃったレベルの雰囲気ではなかったよ。


「えー? じゃあ天が小さい時に結婚しよって言っってくれたのは嘘だったの?」


「大樹くん?」


「そんな約束したわけないだろが! 平気で嘘つくんじゃない!」


 やっぱり天ちゃんいたずらっ子なのは全然変わってない。もう俺と瑞波をからかって遊んでる。


「とにかく詳しくことを聞かせてもらうから大樹くんの部屋入ろっか」


 俺、いつになったら勉強できるんだろう。





「私はたーにいの従妹の天です。いつもたーにいがお世話になってます」


「私こそいつも大樹くんには楽しい思い出たくさん貰ってて。これからもよろしくお願いします」


「なんなんだこれ」


 俺の部屋では瑞波と天ちゃんの謎のやりとりが行われていた。もちろん手は洗ってきた。


「それにしてもたーにいに彼女出来たんだね。それもこんな可愛い人」


「そうだよ。瑞波めっちゃ可愛いんだよ。昨日だってバレンタインですごい俺にいろいろしてくれたし!」


「ちょっと大樹くん恥ずかしいよ」


「2人ともベタ惚れじゃん。天今初めて2人の関係知ったのに1発で分かっちゃった。ほらほら2人とももっとイチャイチャしても良いよ」


「そんなことしないから」


 身内の、それも小さい頃から知ってる人の前でそんなことできるわけない。恥ずかしさの度合いが違う。


「それでさ、天ちゃんが家に来た理由は分かったんだけど瑞波はなんでここに?」


「そんなこと決まってるじゃん。大樹くんと勉強するため。大樹くん今回の学年末テスト相当頑張るって聞いたから。それになんでそんなに頑張るか理由も知ってるしね」


「お見通しでしたか」


「お見通しでしたよ」


 どこからその情報を得たのか聞いてみたらまさかの母さんだった。そういうのは黙っていてほしかった。だってそっちの方がかっこいい感じがするから。


「ふーん。今高校はテスト週間なんだ。なら天は邪魔にならないように帰るね。じゃあ春になったらよろしくね。せんぱい」


「「え?」」


「だって私、広明高校受験して合格したんだもん」


「「えええええええーーーー!!!」」






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