第48話 バレンタイン〈side瑞波〉

「え~とチョコレートはあったから後は生クリームとココアパウダーとラッピングするものと」


 これだけで何を私が準備しているのか分かった人もいるんじゃないかな? そうです。そうなのです。明日は日曜日。


 女の子の中では一年で一番のビッグイベントと思う人もいるんじゃないかな? バレンタインデー!!


 毎年、女の子同士で友チョコは渡し合ってたけど今回は違うよ。特製チョコを大樹くんに食べて貰うんだ~!


 去年とか渡したいとは思ってても結局何にも出来なかったし。特に去年は受験あったしね。


 でも今年はちゃんと大樹くんに渡すことが出来る。それが何より嬉しい。


「あれ、瑞波じゃん! どうしたのこんなところで」


 私がそうやって意気込んでいると横からよく知った声が。


「桃華ちゃん。お休みの日にこうして出会うって珍しいね」


「そうだね。瑞波は部活あるから、なかなか休日には会わないもん」


 私に声を掛けてきた人は私の友人の桃華ちゃんだった。長くて綺麗な髪と華の髪留めが桃華ちゃんのトレードマーク。同性の私から見ても可愛いと思う。


「それでそれで? 今日はどうしたのかな? ん~? 買い物かごにはチョコレートってことはこれは?」


 桃華ちゃんもう分かってるのに意地悪してくる。桃華ちゃんは私と大樹くんが付き合ってることも知ってる。あの初詣で桃華ちゃんとは偶然出会ってバレちゃったんだよね。


 しっかり私たちの事情は話してあるから大丈夫。


「空閑くん大好きな瑞波は愛情たっぷりチョコでもあげるのかな? っていうか付き合い始めてからの瑞波のデレデレ度すごいよ。ほんと羨ましい。そういう事で後で喫茶店でいろいろ聞かせてもらうからね」


「そういう事ってどんなことなの~!?」


 そのまま私は買い物が終わった後喫茶店に連行されたのだった。





「なるほどね。いいなぁ。もうあまあまじゃん。それで明日愛情たっぷりのハート型チョコ渡すんだ」


「桃華ちゃん恥ずかしい!」


「まぁそれにしても2人がこんなにもイチャイチャしてるとは思っても見なかったよ。付き合う前のあの話聞かされてる身からするとほんとおめでとうだね」


 桃華ちゃんにはかなりお世話になったから。ここまで来ることが出来たのも桃華ちゃんのアドバイスもあったからね。


「まぁこれ以上瑞波の時間を削っても悪いし。そろそろ解散しよっか。家に帰って空閑くんのこと思いながらチョコ作らないといけないもんね」


「だから言い方! そうやって言われると恥ずかしいの!」


 ほんと桃華ちゃんは私のことからかってきて。


 そして私たちは会計を済ませてお互いの家路についた。





「ふぅ。とりあえず友達に渡すやつと部活のみんなに渡すやつは完成っと」


 台所には型に入ったチョコレートがたくさん。これは簡単に作ったやつでチョコレートを溶かして四角い型に入れたやつ。


 だいたいみんなこんな感じ。女の子同士で渡し合うけどそんなに凝ったものを持ってくる人はいない。


「さて、後は大樹くんに渡すやつね」


 型に入れたチョコレートを冷蔵庫で冷やす間に大樹くん用のチョコレートを作る。


 作るのは生チョコ。部活の時に渡すんじゃなくて私の家に来てもらってその時渡す予定。その時はたくさん大樹くんに甘えるんだぁ。


「ふふふ。大樹くん喜んでくれるかな」


 大樹くんが私のチョコを喜んでくれるところを想像するだけで心が温まる。


「瑞波、顔すっごくにやけてるわよ」


「にゃいっ!?」


 びっくりして横を向くとニヤニヤした顔のお母さんが。


「ほんといいわねえ。瑞波今すっごく楽しいでしょ。大樹君はすごいいい子だから大切にしなさいね」


「分かってる! 日頃の感謝の気持ちも込めて贈るの」


「そうよ。それが大事。それじゃあお母さんはあっちに行っていましょうか」


 お母さんはリビングの方に行って家事をしてる。お母さんのおかげでチョコを贈る意味も再確認できた。


「よーし。頑張ろう!」


 気持ちを引き締めて私は大樹くんへのチョコを作っていくのだった。






 更新が遅れて皆様にご迷惑をおかけしているにもかかわらずたくさんの応援、★までいただきありがとうございます。皆様に楽しんでもらえるように頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。

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