第47話 まさかの
「まさか私がなっちゃうなんて」
「まぁ俺の看病してくれたし。でもなんか俺がうつしてしまった感じがして申し訳ないな」
「そんなの気にしてないよ。それにあの日は私が押しかけちゃったんだから」
そう。今いるのは瑞波の部屋。ただし瑞波は風邪ひいてしまっているのだが。
ただこれは完璧に俺がうつしてた感じがしてやばい。辛い目に合わせてしまったという罪悪感がすごい。
「でもごめんね。部活終わって疲れてるっていうのにお見舞いに来てくれて」
「全然いいんだよ。でも今日の部活瑞波が居なくてなんだか寂しかった」
今日は日曜日だから午前中が部活だった。
今日も長距離走したんだけど応援してくれて走り終わった後、笑顔でドリンクを渡してくれる瑞波がどれだけ俺に力を与えてくれていたか。
それを痛感させられた練習だった。
「俺って瑞波が居ないとだめな人間になってしまってたのかな」
「いいじゃんいいじゃん! 私は嬉しいよ。そこまで大樹くんが私に夢中になってくれて私を想ってくれてるんだって知って。もっとだめになっちゃえ~」
今日の出来事とかを話すと瑞波が楽しそうに笑ってくれる。そんなに重症じゃなくてよかった。熱も37.3度と微熱らしい。
明日は学校を休むだろうけど明後日には学校に来れるそうだ。
「それにしても瑞波のお母さん俺が来た瞬間、買い物行ったけど心配されてないの?」
「もちろん心配されてるよ。たぶん大樹くんのこと信頼してるんだと思う。それか2人きりにしてくれたのかもね」
今、そんな気を遣わなくてもいいのに。何かするわけでもないんだから。
きゅー
俺がそんなことを思っていると横からそんな可愛らしい音が。
横を向いてみると顔を真っ赤にした瑞波がぷるぷる震えながらお腹を抑えていた。
「違うから! 今のはシーツが擦れた音だからね! 変な勘違いしないでよね!」
「分かったから落ち着いて。病人なんだから大人しくしてないと」
「聞かれちゃった……私がお腹鳴ったところ大樹くんに聞かれちゃった……」
恥ずかしそうに俯いてもう誤魔化すことも忘れている。俺的にはお腹鳴っても全然気にしなくていいのに。
やっぱり女の子的には相当気にするんだろう。なら追及する事はしないでおかないと。
ただお腹空いてるのは確かだ。なら何か食べるもの作ろうかな。
「瑞波、食欲はある? もうご飯食べた?」
「お昼まだ食べてないの。食欲はあるんだけどね」
「それならおかゆ俺が作るよ。普通の料理でもいいけどこういう時はおかゆだよね。いいかな?」
「うん! ありがとう! 大樹くんがご飯作ってくれるとかすごい嬉しい!」
ガバッと布団から跳ね起きてワクワクした表情でうんうんと首を縦に振った。
「それじゃあ台所使わせてもらってもいい?」
許可をもらったので下に降りて作ってくることにしよう。そう思って腰を上げて部屋を出ようとした瞬間、瑞波に服の袖を掴まれた。
「行っちゃダメ……私を1人にしないで」
次は瞳をウルウルさせてそんなことを言ってくる。まぁ風邪の時は心細くなるし分からないでもないけど流石に俺はどうしたらいいんだ。
「ってごめんね。面倒くさいこと言って。私のために作ってくれるっていうのに」
「ううん。全然いいよ。そんな瑞波も可愛い。それなら瑞波もリビング一緒にいる? 流石に火の元からは離れられないけど」
「いく」
そう言うと裾を掴んだまま瑞波がゆっくり布団の中から出てきた。今思ったけど瑞波今、パジャマなんだよな。
ってそんな煩悩今は要らん。さっさと捨ててしまおう。
「それじゃあいこっか。ゆっくりな」
そうして瑞波の手をとって一階へ降りていくのだった。
「はい、お待ち遠さま」
「わぁ。すごいね大樹くん。すっごく美味しそう」
俺が作ったのはたまご粥。ちゃんと上手く作ることが出来て良かった。
「それじゃあいただきます。はむっ……うん! 美味しい!」
「口にあったようでよかったよ。簡単なやつだけど人に振る舞うの初めてだからさ」
「なら今度さ休みの日とかに一緒に料理しよ? ふふふ。こうして2人で料理作るの憧れてたの」
そう言いながらぱくぱく食べていく瑞波はすぐに風邪が治っていつものように学校に復帰した。
良かった良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます