第46話 彼シャツ

「それじゃあ瑞波もそろそろ帰った方がいいよ。暗くなるといけないから」


「分かった。なら今日は泊まって行こうかな」


「はぁ!?」


 もう陽も暮れてきて瑞波が帰るだろうと思ってそんなことを言ったのだけど俺が思っていた返答は得られなかった。それどころかそれ以上の返答が返って来た。


「明日は土曜日だから朝に帰っても心配いらないよ。お母さんもお義母さんもいいよって言ってくれると思うな」


「なるほどって明日はまだ金曜日だろ! 危うく騙されるところだった」


 学校に行ってないとマジで曜日感覚が分からなくなってしまう。ただ流石にこれには騙されなかったけど。


「むぅ! そこは分かったっていうところでしょ! 一瞬私本当に泊まっていいんだって思ったのに……」


 急にしょんぼりする瑞波。なんか俺が悪いって雰囲気になってない? 俺、何もしてないよ?


「瑞波学校から直接来たのに着替えだってないだろ?」


「それは大樹くんのシャツとか借りればいいかなって。一度やってみたかったの彼シャツ」


 彼シャツ。いわゆる……うーん。ごめんなさい知識不足でした。分かりません。


「あ、その顔は何か分かってないって感じだね。仕方ない私が教えてあげましょう!」


 ドヤ顔瑞波がエア眼鏡をくいっと上げる仕草をして俺に教えてくれる。


「彼シャツというのはね。その……あの~なんていうかね? 彼氏のシャツを私が着るってことなんだよ」


「え……?」


 あの瑞波さん。それそれってそのまんまじゃない? まさか瑞波も知らないとか?


 と、そう思った瞬間ブンブンと手を振って否定する瑞波。


「ち、違うから! 知らないわけないから! ほら想像してみて。私が大樹くんの服を私が着てお風呂上りに一緒にグダグダしてるところを」


 瑞波に言われたように瑞波が俺の服を着ているところを想像してみる。


 ダボっとした感じに着ている服で俺にくっついている瑞波。お風呂上りで濡れた髪にまたグッとくるものがある。いつも以上に可愛い雰囲気がある。


「大樹くんかまって~」


 とか俺が本読んでる横で言われたらやばいな。これが彼シャツの効果。なんてすさまじいんだ。


「うん。俺の服着られるのは少し恥ずかしいけどすごい魅力的だな」


「でしょでしょ。というわけで今日はお泊りけって~い!」


「それとこれとは話が別! 今度だったらいいから。春休みも泊りがけでどこか行きたいしさ」


「それって前に言ってたお花見デードのこと?」


「そうそう」


「なら仕方ない。でも覚悟しててよね。お泊りデートで私いろいろとすごいことしちゃうからね!」


「何をするつもりだよ!」


 瑞波の発言が怖すぎる。いったい何をするつもりなんだ。ちょっとお泊りは気が早かったのかもしれない。






 いつも読んでくださりありがとうございます。九条けいです。更新全然しなくて申し訳ございません。大学の課題に追われていました。テストも無事終わりこれからまた更新出来るように頑張りますので、これからもよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る