第45話 寂しさを埋めるように
「お義母さんどこか行っちゃったね」
「そうだな。瑞波も風邪がうつるといけないから。今日は来てくれてありがとう。会えてすごい嬉しかったよ」
本当はもっと一緒に居たいけど流石にそれは危険だ。でも瑞波が帰ったら母さんに相当いろいろ言われるんだろうな。すごい嫌だ。
「えっ? まだ帰らないよ? せっかく来たんだから看病させて」
ん? 俺はうつるといけないからって言ったのに瑞波はなんて言った? 帰らないって言った?
「ほらほら身体とか拭いてあげる」
「いや、ちょっと! もうほぼ治っててるから自分で出来るよ!」
何故か瑞波の手にはタオルが。さっきまでそんなもの持ってなかったのにどこから取り出したんだ。
ってそんなことは今どうでもよくてタオルを持って近づいて来る瑞波をどうにかしないと。
「汗かいてるかも知れないからね。はい、バンザーイ」
俺の抵抗空しく瑞波に上半身裸にされてしまった。瑞波はご機嫌で俺の背中を拭いてくれている。
「こうするの夢だったんだぁ~。大樹くんってすごい筋肉質だね。背中おっきい」
もはや、俺の背中鑑賞会みたいになっているんだが。でもたぶん瑞波もそのうち満足してくれるだろうししばらくは拭いてもらおう。
別に瑞波にこうされるのがすごい良かったとかそういうのじゃないんだからね!
「こんな感じかな。それじゃあ前も……」
「そこは自分でするから! あ、喉乾いたから飲み物持って来てくれると嬉しいな」
「あ、分かったよ。すぐ準備するね」
ふぅ。なんとか話を逸らすことに成功した。これ以上されるとなんかやばいことが起こりそうだったから間一髪セーフ。
「スポーツドリンクとお茶どっちがいい?」
「スポーツドリンクがいいな。ほんとありがとう瑞波」
「良いって良いって。そんなに何回もお礼言わなくても」
いや、それはノーだ。して貰ったことにはちゃんとお礼を言いたい。親しき中にも礼儀ありって言うし。
「ならお礼は大樹くんからのキスっていうことで。それでいいかな?」
瑞波は何を言っているんだろう。なんかすごい要求をされたような感じがするのだがはたしてこれは俺の聞き間違いか?
「瑞波、なんてい言った?」
「だ~か~ら~大樹くんとキスしたいの!」
聞き間違いじゃなかった……瑞波ガチモードだ。でも俺だってしたい。しかし下に母さん居るし、ほぼ治ったとはいえ今キスするのは移してしまいそうで怖い。
風邪をうつす可能性が一番高いのは飛沫感染でキスもけっこう風邪うつってしまうらしい。ちなみに学校を休んでいる間にそんなことを調べていたかは俺以外分からない。
うつる可能性があると瑞波に伝えると渋々ながら諦めてくれた。
「ならハグしてくれるくらいなら良いよね? 思いっきりぎゅーってして貰っても良いよね?」
でもこれは譲らないと言った感じで瑞波が迫って来る。もうここまでされたら我慢の限界だ。
「もちろんだ。俺だってほんとは凄い瑞波と触れ合いたかった。風邪ひかなければってすごい思ってたよ。ってこれじゃ俺が幸せになって瑞波のお礼にならないな」
「そんなことないよ。大樹くんにぎゅーってされるのすごいいいんだから」
そう言って俺の方に両手を広げてくる。
そしてぎゅっと力強く瑞波を抱きしめた。瑞波から背中に回された腕が俺を離さない。
すごい気持ちよくて良い匂いがしてとっても柔らかい瑞波の身体。心臓がドクドクいっている。これだけ密着してたら絶対心臓音聞かれてるよね。
「ねぇ大樹くん今すっごいドキドキしてる……」
それだけ言うと2人そろって声を発さなくなった。部屋に訪れる静寂。ただお互いの温もりを共有する。3、4日会えなかった寂しさを埋めるように。
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