第42話 バレた可能性
「なぁなぁ大樹。最近、なんか和泉さんとめっちゃ仲良くないか?」
部活が終わる直前、グランド整備している時に俺の横で一緒にトンボを引いていた純也がそう聞いて来た。
「えっ? いやいや普通だろ。同じクラスってだからそう見えるだけじゃないか?」
きわめて冷静に答えたつもりだがちゃんと答えられただろうか。
急にびっくり聞いてくるからびっくりした。それと同時に怖くなった。
バレているのではないか、と。もちろん俺が誰と付き合おうとなんの問題もない。
だがご存知の通りこの部の謎の掟により彼女が出来ること=死を意味している。
「本当か? 最近大樹付き合い悪いし、でもなんか和泉さんとは接近してるみたいだからそう思ったんだけど」
純也はまるでニュースでやってた話題を話すくらいの軽い感じで俺にそう言ってくる。
「あのアイドル引退したらしいぞ」「ふーん」たぶんこんなレベルか、
「お前、最近あの女子と仲良くね?」くらいの単純な振りだったんだと思う。
「最近は俺も用事があってな。和泉とだって何もないぞ」
「そっか。まぁ大樹がそこまでモテるわけないもんな! 安心したぞ」
「その安心のされ方もどうかと思うんだが」
そうは言うものの心苦しい。親友の純也に嘘をつくと言うことも瑞波とはそんな関係じゃないということも。
純也はそれ以降何も言うことなく静かにトンボを引いていた。サードベースの後ろくらいまで引き終わってトンボを片付けるその一瞬。確かに純也は俺に向かってこう言った。
「もし、和泉さんと付き合ってても誰もみんなお前を非難したりしないからな」
「え? 純也今なんて言った?」
ちゃんと俺の耳には届いている。ただそれでも聞き返したのは純也がどんな意味でその言葉を発したか分からなかったからだ。
「さあな。もう言ったこと忘れちまったよ。おっと、先生が集合かけてるしさっさと行くぞ」
そう言ってスタスタと先生の方へ走っていく純也を見ながら俺は何も言えず立ち尽くしていた。
「なぁ瑞波、これってどう言う意味なのかな」
「単純に考えると私たちが付き合ってるのバレちゃってるってことじゃない?」
部活から帰ってきてやることやって今俺は瑞波と通話していた。よく何気なく通話してるけど今日はちょっと違った。
「確かに学校でけっこう一緒にいる時間多かったから」
「仕方ないよ! だって目の前に大樹くんいるんだもん! あれでも私は我慢した方なんだよ!?」
スピーカー越しでもわかるくらいに瑞波は荒ぶっていた。
「俺もそうだよ。あれだけ瑞波と距離が近いのに全然話せないから」
「そうそう! 分かるよその気持ち!」
「でも純也のあれはなんだったんだろう」
「まだよくわからないから保留ってことでもいいんじゃない?」
確かに下手にしつこく聞くと冗談だっで言ったのになんでそんなこと言うんだ? まさか本当にお前……ってなる可能性もなきにしもあらずだからな。
「それも気になるけどさ! 早く大樹くんの家行きたいよ!」
もう少しこのことについて話していたかったけど瑞波が話題を変えたのでこの話はされることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます