第40話 購買へ
それからというもの、俺たちは偶に生物講義室を借りてお昼を一緒にすることが増えた。とは言っても週に一回か二回。
今日は別々に食べる日だ。お母さんが朝から用事があって弁当を作れないということで購買に買いに行くことに。
「ちょっと行ってくる。修たちは先に食べてていいぞ」
「おっけー。購買行くならついでにメロンパン一個頼むわ。お金は後払い」
「しょうがないな。他の2人はいい?」
「俺はいいや。純也もいいってさ」
ということで修にお使いを頼まれて往くは学校の戦地購買。ここはお昼になると生徒という名の兵士で溢れかえり、たった5分ほどの間に勝者と敗者が決定する学校でも職員室の次に危ない場所。
敗れたものはお昼ご飯なしという非常に過酷な試練が与えられる。その戦場で勝つには授業が終わった瞬間に教室を飛び出すしかない。
しかし俺は悠長に教室を出てのんびりと購買へ向かう。それは何故か! 俺が使ったのは秘儀「予約」である!!
前日に購買のおばちゃんに注文書を出しておけばいつも入荷する分とは別に予約品として入荷する。予約品なので誰かに取られることなく確実にお昼ご飯をゲットできるのだ。
「あれ大樹くん購買行くの?」
「どうした? 和泉も購買行くのか?」
「うん。ちょっと食べてみたいパンがあってね。それに」
そこまで言うと俺の方に少し寄って俺にだけ聞こえるような小声で
「やっぱり大樹くんと一緒に居たいじゃん。こうして一緒に購買に行くことなんて初めてだし」
「えへへ」と少し照れ笑いする瑞波がすごく可愛い。確かにただ行く方向が同じなら並んで歩いていても変じゃない。
「なら仕方ないな。でももう売り切れてるかも知れないぞ」
「それは大丈夫。大樹くんとこうして居られたらそれだけで価値があるから」
そして軽くスキップする瑞波。ここが人前じゃなかったらこのまま抱きしめたい。
そんなことを思いながら3階から1階にある購買に行くために階段を降りてると前から見たことのある人が。
「あれ、空閑くんじゃん。どうしたの?」
「ちょっと購買にね。お昼ご飯今日は持って来てないからさ」
「なるほどね~。私もそうなんだよ。同じだ。って邪魔しちゃだめだよね。購買行くんだから。じゃあね」
そう言うと白井さんはタタッと階段を駆け足で上って行った。また前みたいにあの教室で1人で食べるのかな。
そんなことを考えていたら俺の横から物凄い圧が。
「大樹く~ん? 今のは何かな? まさか浮気とかじゃないよね?」
「ちょっ! 痛い痛い! つねるなって! 白井さんとはそういう関係じゃないよ。ただ……」
「ただ、どうしたの?」
「なんかキャラ作ってるっていうか。さっき喋ってたのとかも無理してる感じしてさ」
目の奥は笑ってなかった。そんな感じがするんだよな。喋ったのは2回目だし俺の勘違いだといいんだけど。
「なるほどね。私も白井さんとはお話ししたことがないからどんな人かわからないけど。けどね」
人ひとり分あった俺たちの距離を瑞波が詰める。
「大樹くんは私の大樹くんなんだからね! 誰にも渡さないんだから!」
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