第39話 ひざまくら
「ごちそうさま」
「お粗末でした」
とてつもなく美味しいお昼ご飯を堪能しました。そして今の時間は昼休みの半分くらいが経ったところ。
うちの学校の昼休みの時間は1時間と少し他の学校より長いのでまだまだ時間は結構ある。昼休みが長いのはいいことだ。
今は冬だから見ないけど春先とか秋みたいな気候の時にはグランドで遊んでる奴らまで現れる。
普通の高校では見ないらしいけどスポーツが好きな人が多いせいかよく遊んでる人がいる。自主練してる部まであるくらいだ。
我らがソフトボール部には昼休みに自主練をしてる人なんていないけども。なお、うちの学校そこそこ偏差値は高い。文武両道だね。
ってそんな説明はどうでもよくて。重要なのは今から瑞波とどうしようかということだ。
さっき言った通りまだ30分くらいは時間がある。こっそり俺たちのクラスに戻ってもいいんだけどそれはなんだかもったいない気がする。
「瑞波、このまま教室戻るのもちょっと寂しいしここで一緒にいないか?」
「んー? 大樹くんはこのまま教室に戻ると寂しいの?」
うわぁ。悪い人がいるよ。絶対このまま帰ったらぶーぶ言うくせになんか俺だけが離れたくないみたいな感じになってるじゃん。
「やっぱり戻ろっか。そういえば戻って数学の課題しないといけなかったんだ」
ちょっと悔しかった俺は少し意地悪することにした。ガタッと椅子を引いてそのまま生物講義室を後にしようとする。
もちろん数学の課題なんてない。午後の教科は英語と情報という俺の得意科目2連発だから。
と、そこでクイッと裾を引っ張られた。瑞波かかったなと、してやったりの顔で振り向いたら……
「……」
すごく悲しそうな、なんか泣きそうな顔をして裾を引っ張っていた。そしてそのまま俯く。
「いやだ〜! からかったのは私が悪かったから一緒にいてよ〜」
これには俺もびっくりした。まさかこんな反応するなんて。
「ご、ごめん瑞波。これはちょっとした冗談で。俺だって瑞波ももっと一緒にいたいんだから」
「うんっ! そう言ってくれると思ってた!」
そう言った瞬間瑞波が顔を上げた。そしてその顔はもうやばいほどに笑顔で。
これはやられたと思った。完璧に瑞波にしてやられた。
「瑞波さっきの表情は演技だったのか!」
「演技半分、本気半分かな。大樹くんが私に仕返ししようとして数学の課題があるからとか言ったのはわかったから。だからそこさっきみたいな演技したけど、本当にこのままどこかに行っちゃったらどうしようって思ったのも本当。なんかめんどくさいことしてごめんね?」
「うん。めっちゃめんどくさい」
こんなこと言っちゃダメってわかってるけど今は言わせてもらおう。こういうのも遠慮なく言えるのも結構大事だと思う。
「ひどいっ! でも今回は私が悪かったから。ということで変なことはやめてはい、イチャイチャターイム!」
「うおっと!」
それだけ言うと瑞波が俺に飛びついてきた。すごいテンションが高いな。
あぁ、そんなこと考える暇もなく瑞波の柔らかさがすごく伝わってくる。こうしただけで午後の授業も頑張れ気がする。
「って瑞波眠たいのか?」
俺をぎゅーっとした瑞波の表情はなんだかぽわぽわしててすごく眠そうに見える。
「そ、そんなことないよ。ほら、元気いっぱい!」
うん。嘘だ。絶対眠たいに決まってる。だって早く起きて俺のために弁当作ってくれて。これだけの種類だったんだから相当早起きしたに違いない。
まして食後は眠くなりやすい。ならここは俺が少しでも瑞波のために何かする場面だと思う。
「瑞波、我慢しなくていいからこのまま少し寝たほうがいい。昼休みが終わったら起こすから」
「いや! 私は大樹くんとお話ししたいもん!」
「そこまで言うなら無理にでも瑞波を寝させる!」
両手を瑞波の背中に回す。急なことにびっくりしたのか瑞波の力が抜けた。その瞬間を見逃さずにサッと瑞波の体を傾ける。
頭が倒れるであろう場所に俺の太ももを滑り込ませれば。完成。ひざまくら。
「ちょ、ちょっと大樹くん! こ、これ!」
「急にごめんな。嫌だったら止めるよ」
「嫌なわけない! むしろすごくいい感じ……」
「そっか。良かった。ならこのまま寝ていいよ。今日は俺のために早起きして頑張ってくれたんだから」
「うーん。それはすごくもったいないよ。そのまま大樹くんを堪能したい。でもありがとう。今日
はこのままちょっとだけ寝させてもらうね」
そのまま瑞波はすぅすぅと可愛らしい寝息を立てて寝てしまった。本当に限界だったのかもな。
俺はそのまま瑞波の寝顔を堪能して、瑞波もしっかり睡眠を取ると言うWIN-WINな結果で今回の昼休みは終わった。
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