第25話 捻挫しちゃいました
「痛たたたたっ。まさかこんなことになるなんて」
「怪我は誰にでもあることだしさ、捻挫なんだから大人しくしていよう」
「捻挫したら全治2週間はするよね。それまで部活あんまり出来なくなるか〜」
捻挫をしてしまった……。それも瑞波が!
部活が終わる前に、ランニングとかして荒れたグラウンドを整備するのを手伝ってくれていた時だ。
俺の横でトンボを引いていたら横にいるはずの瑞波が急にいなくなった。びっくりしたよ。振り返るとビターンと転けている瑞波が。
石とかつまずきそうなものは一切ないグランドで転けてしまったのだ。ちょっとおっちょこちょい。
幸いなことにちょっと捻ったくらいで湿布をしておけば3日もすれば治るだろう。修とかが捻挫とかになっていたら笑っていたに違いない。
でも俺の大切な大切な彼女の瑞波が捻挫したのだ。一応冷静に対応しているつもりだが、気が気ではない。
いくら軽傷ですぐに治るといっても俺は心配で心配で仕方ない。捻挫はクセになるというし。
「和泉大丈夫なのか? 保健室に先生いるだろうし一応行くか?」
先生も心配してる。他の部員のみんなも心配してるだろう。
「いえ、大丈夫です。これくらいならゆっくり歩いて帰れますから」
「そうか。でも無理はしなくていいからな。冬の間はマネージャーの仕事もそんなにないしな」
「部活は絶対出ます!」
「そ、そうか。やる気があるのは嬉しいぞ。それじゃあ職員室戻るから」
それだけ言うとスタスタと先生は暖かい職員室へと向かって行った。
他のみんなも帰ってしまって部室には俺と瑞波の2人だけ。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だけど大丈夫じゃない!」
「ど、どう言うこと?」
矛盾なことを言う瑞波。どっちなんだ?
「足の方はね、さっき先生に言った通りそんなに大事じゃないの……でもでもやっぱりさ……あの……その」
もじもじと歯切れの悪い瑞波。ただ、今の感じで俺は瑞波が何を望んでいるのか分かってしまった。
「まだ安静にしておかないといけないし、俺が送っていくよ。荷物貸して。ほら、腕に掴まっていいよ」
「う、うん! ありがとう! えへへ。大樹くんのそういうところ大好きだよ」
ぱぁぁっと満面の笑みで俺に好きだと言ってくれる。そして思いっきり俺の腕に掴まって来た。その俊敏性ときたら怪我なんてしてないんじゃないかと思わせるほどにすごかった。
「それじゃあレッツゴー! 目的地は私の家!」
と思って部室を出ようとしたら……
「ふーう。スパイク持って帰るの忘れた……ってお前ら何してんだ!」
ここで来たのは先輩の前田さん。びっくりしてお互い固まってしまった。
「あ、あのこれはですね」
「2人はそう言う関係だったのか?」
どう答えるのが正解なんだ。もう違うとか言いたくないし。
「私が怪我をしたので家まで送ってもらおうと思ったんです。中学が同じで家が近いので。それで腕に掴ませて貰おうとしたところで先輩が来たんですよ〜」
瑞波がそういうと先輩は「そうか。ならしっかり送り届けろよ」とだけ言ってスパイクを持って部室を出て行った。
瑞波見事だ。俺たちの関係には触れずに、でも俺たちがこうして触れ合っているのを全然不思議がられない。
「大樹くん。私辛かったなぁ〜。本当は付き合ってるっていいたいのになぁ」
ここに可愛い小悪魔がいるぞ。全然そんなこと思ってないっていうのは分かってる。だって神社で沢山想いを言い合ったんだから。
でもこの場面を全力で利用してる。くっつきたいよ〜って瑞波の目が言ってる。
「瑞波……」
「えっ? あっんっ……」
でも俺はくっつく以上のことを。3秒くらい軽くキスした。
「大樹くん。私が思ったこと以上のことをしてくれるから好き……」
「俺もこうして俺の思いを受け止めて返してくれる瑞波が好きだ……」
こうして俺たちは家に帰る前に部室で相当イチャついていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます